TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

男はつらいよ 寅次郎物語

1987年、松竹映像、朝間義隆脚本、山田洋次原作+脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

冒頭の夢のシーンは、寅次郎が子供だった頃、盗みがばれて、父親に折檻され、始めて家出をするまでを、雪のシーンを背景に感傷的に描いている。
「嫌いだった父親との決別」…、これが本編への伏線となる。

大学への進学をためらっている満男(吉岡秀隆)は、駅前でリュックを背負った小学生と出会う。
驚いた事に、その子供は一人で寅次郎を訪ねてきたらしいのだ。

さっそく、虎屋に連れて行き、さくら(倍賞千恵子)が、秀吉と名乗るその子に事情を聞くと、母親ふで(五月みどり)が家を飛び出し、その後、一人で子供の面倒を観ていた香具師の父親が亡くなる際、俺が死んだら寅次郎の所へ行けと言い残したらしい。

その後、帰ってきた寅次郎(渥美清)は、自分がその子の名付け親であった事を告白し、さっそく秀吉を連れ、母親探しの旅に出る。

少ない手がかりを元に和歌山へ到着したものの、行く先々で、母親は他の場所へ移動している事を知らされる。

そうした中、強行軍の無理が祟り、宿泊した旅館で秀吉が発熱、慌てふためく寅次郎をサポートしてくれたのが、たまたま隣室に泊まっていた化粧品販売員の隆子(秋吉久美子)であった。

真夜中に呼出された老医者(松村達雄)が、そんな二人を子供の両親と勘違いした事と、翌朝、秀吉の熱が下がった安心感が手伝い、寅次郎と隆子は心を打ち解けあうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

チャップリンの「キッド」や、「シェーン」などを連想させる、アウトロー的存在と少年の心の触れ合いの物語になっている。

シリーズ当初の頃は、乱暴者でどうしようもなかった寅次郎が、人気を得、シリーズを重ねるごとに、段々温和な良い人になって行くのは仕方ない所だろうが、この作品の寅次郎は特に心根の熱い人情家として描かれているため、笑いの要素は少なくなっている。

後日、さくらから、事の一切を聞かされた御前様(笠智衆)が、寅次郎に仏が乗り移ったのだろうと賞賛するくらいの美談仕立てなのである。

子供を中心とした話なので、全体的に心暖まる話にはなっているのだが、「母を訪ねて…」的な基本発想に加え、随所に、どこかからか借りてきたようなイメージが多いように感じられ、素直に感動…とまではいかないのが残念。

島から船で帰る寅次郎を秀吉が追い掛けて来るシーンは「伊豆の踊子」だろうか?

秀吉の母、おふでさんが、最後にやっかいになっている店の女主人に河内桃子、船の船長にすまけい、大阪駅の警官にイッセー尾形、また、和歌山へタクシーで旅立つ寅次郎達を見送る商店街の一員の中に、若き出川哲郎が寿司職人の扮装で出ているのが見所。