TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

私は二歳

1962年、大映東京、松田道雄原作、和田夏十脚本、市川崑監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

団地住まいのしがないサラリーマン五郎(船越英二)と、その愛妻、千代(山本富士子)、そして2人の一粒種のたぁちゃんこと、もうすぐ2歳になる太郎(鈴木博雄、声-中村メイコ)を中心に繰り広げられる、さりげないながらどこかリアルで微笑ましい日々のドラマを綴った作品。

両親とも、たぁちゃんの日々の変化に戸惑い気味。
何かにつけて互いの意見がぶつかる。

しかし、当のたぁちゃんは、独自の考えでそんな両親を観察している。

やがて、家族は、五郎の実家で母親(浦辺粂子)と同居生活を始める事に…。
今度は、たぁちゃんを甘やかし過ぎる祖母と千代との間に軋轢が…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

赤ん坊を持つ若夫婦、ならびにその周辺の人たちの行動がどこかユーモラスに描かれており、さほど大きな事件が起こる訳ではないのだが、最後まで、たぁちゃんの可愛さにつられて観てしまう。

技法的にも、たぁちゃんの願望を、たぁちゃんそっくりの実物大人形を使ったアニメや、セルアニメなどを使って表現している所など、見所も多い。(アニメ担当-横山隆一)

この作品を観ていて一番印象に残るのは時代背景。
夏のシーン、室内にいる全員が顔に汗をかいているのだ。
この時代は、まだエアコン(クーラー)などは贅沢品で、一般の家庭にはなかったのである。

特に、生まれたばかりの長女に湯あみをさせている五郎の姉(渡辺美佐子)が、全身、珠のような汗をかいているシーンは感動的ですらある。

さらに、実家で生活をはじめた千代が、たぁちゃんにかまい過ぎる祖母の気を逸らせる為にと、テレビを買うように五郎に進言する所も興味深い。

テレビも又贅沢品で、庶民はなかなか観る事ができなかった時代。
このため、買った五郎自身がテレビに夢中になり、とんでもない失態を演ずるというシーンが成立するようになる。

心配性でありながら、いざという時は気丈な母親役を演ずる山本富士子、母親と妻との板挟みになり、何とも頼り無い父親役を演ずる船越英二のキャラクターが、各々妙にリアルでおかしい。

団地時代に、同じ小さな子供を持つ母親役として岸田今日子、千代の姉として京塚昌子などが登場する。

市川崑監督の多才さの一環を知る事ができる楽しい秀作である。