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佐々木小次郎

1950年、村上元三原作、白坂依志夫脚色、稲垣浩監督の「佐々木小次郎」、翌年の「続佐々木小次郎」「完結 佐々木小次郎 巌流島決闘」3編をまとめたもの。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

加賀越前に旅から戻って来た伊之瀬東馬(徳大寺伸)は、馬を急がせる市波兵介(清川荘司)と出会う。
兵介の妹であり、東馬の許嫁であった兎禰(山根嘉子)が佐々木小次郎(大谷友右衛門)と駆け落ちしたというのだった。

孤児であった小次郎は東馬の同門で無二の友人でもあった。

結局、小次郎は身分違いの兎禰を残し、国を出る。

やがて、大阪で仕官した小次郎は、そこで、老いた出雲の阿国(村田嘉久子)とその愛弟子、おまん(宮野由美子)、さらに琉球の王女、奈美(高峰秀子)、宿敵、大場陣内(東野英次郎)、富裕な商人の南谷十兵衛(月形龍之介)らと出会う。

さらにひょんな事から知り合った忍者島兵衛(藤原鎌足)と共に諸国を旅する事になり、波乱万丈の経験を経た末、九州小倉の細川家で「岸流」を名乗るまでに出世し、船嶋での宮本武蔵(三船敏郎)との勝負にいどむ…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一作ごとを別々に観れば、又別の感想を抱くかも知れないが、このダイジェスト版のようなものを観る限り、あまり作品として成功しているとは思えない。

小次郎のキャラクターが主人公にしては軟弱というか、全編に渡り、女性に対して優柔不断で甘えてばかり、とにかく絶えずウジウジしているような印象で、観ていてイライラさせられるのだ。

国を捨て、野心に溢れる天才剣士という雰囲気だったのは最初の内だけで、その人柄に惚れ込んだ島兵衛と共に諸国を観て歩く内に、何時の間にか夢破れ、何かというと、すぐ、手近にいる女性に逃避してしまう駄目な男というイメージになってしまう。
とにかく絶えず、女性との色恋の話ばかりに終止しているような物語になっており、どう観ても、小次郎は嫌な男なのだ。

これでは、今の観客は(おそらく男女を問わず)、主人公としての小次郎に感情移入しようがない。
当時は、これで人気があったというのが、にわかには信じられないくらいである。

登場シーンは多くないが、武蔵役で登場する若々しい三船同様、若き森繁久彌も登場する。

小倉の城下で、武蔵との決闘の知らせを見守る小次郎の宿敵、大場陣内(東野英次郎)に九州弁で話し掛ける、 どじょうひげをはやした 琵琶法師のような扮装の「おしゃべり町人」という役所である。
よほど注意して観ていないと森繁だと分からないくらいだが、こうした意外な顔ぶれを発見できる楽しさはある。

さらに、一見お淑やかな奈美(ナビ)が暴漢に絡まれた時に披露する空手のシーンや、忍者、島兵衛役の藤原鎌足が、でんぐり返ったり、海に飛び込んだりする意外なアクションシーンも今となっては興味深い。

このように、どちらかといえば、ストーリー性よりも、若かった頃の名優たちの異色の役所を楽しむ作品なのかも知れない。