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帰って来たヨッパライ

1968年、創造社、大島渚監督作品。

ラジオ番組から火が付き、大ヒットした曲、「帰って来たヨッパライ」を歌った、当時の学生グループ、フォーク・クルセダースの面々を起用した作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「帰って来たヨッパライ」の曲が流れる中、玄界灘を臨む、福岡らしき海岸の砂浜に現れた3人の大学生。
チビの端田宣彦を、他のノッポ二人(加藤和彦と北山修)が銃殺するような仕種でふざけあっている。

やがて、海水パンツ姿になり海へ泳ぎに入った3人。

その隙に、砂浜に脱ぎ捨てられた彼らの衣服が、突如、砂の中から現れた手によって、穴の中に引き込まれ、かつ、2人分だけ別の服が戻される。

海から上がって来た3人が見たものは、500円册2枚と見なれぬ2着の服だった。

所持金は千円だけとなり、学生証などもなくしてしまった彼らは、近くのタバコ屋で値上げになったばかりの「しんせい」を値上げ前の金額40円で買おうとする。

店の老婆(殿山泰司)はその行為に怪しみ、警察に電話をかける。

あわてて逃げ出した彼らは、さらに不思議な漁師(小松方正)にバスの停留所の場所を尋ねた事から怪しまれ、警察に連れて行かれそうになる。

かろうじて逃げ出した彼らは銭湯で、女湯に入っていた見知らぬ女(緑魔子)から「他人の服を盗めば良い」と、突然教えられる。
訳も分からぬまま、服を着替えた3人は、銭湯を出て、それまで着ていた服を道ばたに捨てたところで、突如出現した怪し気な男二人に拳銃を突き付けられる。

銃を持った男(佐藤慶)は捨てた服に着替えろという。

怪し気な彼ら二人は、韓国から密入国して来たらしかった…。

やがて、銭湯で出会った女を追う、傷痍軍人らしき謎の中年男(渡辺文雄)らも加わって、3人の学生は夢とも現実ともつかぬ、不可思議な体験をして行く事になる。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ベトナム戦争の時代 、日本人、朝鮮人のアイデンティティを問いかけるかのような、実験的かつ不条理なドラマ展開になっている。

本編途中で、冒頭の砂浜のシーンが再び繰り返され、最初とは微妙に異なった展開が始まったりする。
SFでいう、パラレルワールドのようなものか?

韓国人に扮した佐藤慶、緑魔子らが、平和ボケで、何も考えていないような学生3人に、「お前らは何人だ?」と、執拗に問いかけて行く。

街頭インタビューの形で、フォークルの3人が、都会の道行く人たち(大島渚自身も登場!)に、同様の質問を問いかけて行くシーンも興味深い。

一見、日本人としか見えない人たち全員が「韓国人」と答えるので、観ている方もだんだん、自分の国籍認識が怪しく思えて来たりする。

不思議な体験を繰り返す内に、3人も、自分達の国籍意識が曖昧になって行く。

劇中で、フォーククルセダースが劇中で歌う「イムジン河」が美しい。