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光る海

1963年、日活、石坂洋次郎原作、中平康監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

女子学生が多い城南大学の卒業式、特に英文学部にはわずか7人の男子学生しかおらず、彼らは「七人の侍」と呼ばれていた。

物語は卒業後の彼ら、彼女らを中心に展開して行く。

主だった登場人物は3人。
父親(宮口精二)との離婚後、一人、バー経営で娘を育ててきた母、雪子(高峰三枝子)と暮す、作家志望の石田美枝子(吉永小百合)。

裕福な産婦人科医の息子で、大学卒業後、放送局の営業部に就職した野坂孝雄(浜田光夫)。

石田雪子と大人の付き合いをしている矢崎正二郎(森雅之)の経営する会社に就職した、その姪の葉山和子(十朱幸代)である。

それに、「七人の侍」の仲間で、出版者に就職した向井達夫(山内賢)、同棲相手(松尾嘉代)を妊らせて、かつての仲間に相談を持ちかける淺沼一郎(和田浩治)らが絡む。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

全体的に屈託がなく、青春を謳歌する若者像が描かれているが、そんな中で、少し複雑な内面描写をされているのが、吉永小百合演ずる石田恵美子である。

彼女は、離婚後も、父親とはフランクに付き合っているし、同級生の男の子たちを子供扱いしているような、勝ち気で才気溢れる女性として描かれているのだが、矢崎の妻(田中絹代)が、親族を集めて、実は自分は胃ガンで余命幾許もなく、自分の死後は石田雪子と夫が再婚してくれるよう願っていると告白した事がきっかけとなり、母親と矢崎が再婚する事。

さらに、同級生、野坂と葉山が互いの兄弟のおせっかいをきっかけに、これまた結ばれた事実を前にして、表面上は彼らを祝福しながらも、自分一人が取り残された寂しさには打ち勝てず、一人、自宅で泣き崩れる描写が、本編のクライマックスになっている。

しかし、そんな彼女も、向井の紹介で応募した小説が評価され、作家の卵として歩み始める…という、いささか御都合主義的な展開になっている点が、今観ると、作られた時代を感じさせないでもない。

古き良き時代の懐かしき青春群像…といった趣のお話ではあるが、登場人物たちの明るく生き生きしたキャラクターには、今でも好感が持てる。

中でも、劇中、ちょっと異質感のあるシリアスなパーツの芝居を支える、田中絹代の存在感と、葉山和子の妹で、おませでおきゃんな高校生、久美子を演ずる和泉雅子が出色。

他にも、太田博之、飯田蝶子、ミヤコ蝶々、下条正己、佐野浅夫、奈良岡萌子ら、渋い脇役陣が随所で光る演技を見せてくれるのも楽しい。

シーンにより、顔のにきびもはっきり分かるくらいに若い吉永小百合の、教育ママ風の気取った三角眼鏡姿にも注目!

特に、田中絹代、高峰三枝子、吉永小百合の三人が一室に揃って会話するシーンは、今考えると、日本を代表する大女優の揃い踏み…という感じの、豪華で貴重な映像だと思われる。