1969年、大映東京、江戸川乱歩原作、白坂依志夫脚色、増村保造監督作品。
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売れっ子モデルのアキ(緑魔子)は、自分の写真が展示してある会場に、一人早朝から訪れ、肝心の写真作品には目もくれず、自分の裸体をかたどった彫像を、舐めるように撫で回している異様な男(船越英二)を見つける。
後日、仕事疲れから、自室にマッサージを依頼したアキは、来訪したマッサージ師から、突如麻酔を嗅がされ、そのまま、人里離れた倉庫のような建物に幽閉されてしまう。
暗闇で目覚めたアキは、誘拐したマッサージ師の声に気付く。
それは、展覧会場で見かけたあの男であった。
アキは、自分が閉じ込められている大きな部屋が、異様なオブジェでうめ尽くされている事にも気付いて行く。
壁面を被っているのは、いくつもの巨大な目、鼻、口、耳、手足、乳房等々…。
部屋の中央には、巨大な女体の仰向けとうつ伏せの二体のオブジェ。
男は、生来の盲目である事を逆に生かし「触覚の芸術」を生み出しため、理想の身体を持つマキに彫塑のモデルになって欲しいという。
幾度か、男をだまし、何とか、その倉庫から逃げ出そうと企てるアキであったが、男の母親(千石規子)の妨害もあって、だんだん逃げられない状況である事に気付いていく。
やがて、表面上、モデルになる事を承知したアキだったが、今度は男をろう絡しようと彼に愛情を打ち明ける。
最初は警戒をしていた男だったが、徐々にアキにのめり込んでゆく。
しかし、男の母親は、そんなアキの策略を見抜き、息子を説得できない事を知ると、その目を覚まさせるため、ついにアキを逃がそうとする。
アキの愛情を信じ込んでいた男は、母親と対立、揉み合っている内に、とうとう母親を過って殺害してしまう。
さらに、逃げ出そうとしたアキの態度から、又しても騙されていた事に気付いた男は、母親を倉庫内に埋葬した後、アキを再び幽閉し、初めて、その身体を抱くのだった。
やがて、アキの方も、男に愛情を感じはじめるようになり、暗闇の中で暮し続ける内に、自分も視力も失いはじめる。
そして、二人は、錯綜的な愛欲に溺れて行く…。
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基本的に、全編中、三人しか登場しない異色ドラマ。
異常な情熱を持つ盲目の男役、船越英二の熱演が印象的。
当時の売れっ子だった緑魔子と、母親役の千石規子、各々が存在感を発揮している。
倉庫をうめ尽くすオブジェ類の異様さも見事で、限られた登場人物だけの芝居でありながら、決して、単調な舞台劇のようにはなっておらず、あくまでも映像は映画的である。
シュールな前衛ファンタジーのようでもある。
二人が迎えるラストシーンは強烈!