DR250R('96モデル)

羊の皮を被った山羊(ォイ

2002年11月 S&S伊豆ツーリングにて


自己採点表(5段階)
高速
ポジション 4 3 4
エンジン性能 5 2 4
ハンドリング 3 3 4
ブレーキ性能 2 1 2
メカ&装備 3 2 3
総合評価 4 2 4

掲載日現在までの走行距離
約 3,460km

購入動機
 学生時代のサークルの先輩でペットショップ南大沢のマスターであるエリック熊氏が、結婚を機にバイクを降りる事になり、氏の愛車であったDRを譲り受けた。丁度オイラとしても林道ツーリング用マシンが欲しかったところであり、DR、DJEBEL、KLX辺りを候補に考えていたので非常に良い引き合わせだったと言える。エリ熊氏には感謝感謝。
 因みに、車両を受け取ってエリ熊氏宅をお暇する際の御礼の言葉は、
「娘は貰って行くぜ!」(爆

よいところ
高回転型のエンジン
 クラス(4スト250デュアルパーパス)トップのパワーを持ち、高回転の伸びが気持ちイイ。高回転の伸びの良さでは、同じ単コロ250ならGB250 Clubmanがピカイチだが、DRはGBに次ぐ伸びの良さを持っていると思う。
 しかし、同じ様に高回転の伸びを特徴とするエンジンでも、その味付けは全く異なる。Clubmanの場合、80km〜100km/h以上の中高速域でエンジンの伸びが体感できるのに対し、DRでは 80km/hに達するまでの低速域で高回転のパワーが発揮されるようにギア比が設定されている。
 信号待ちからのスタートでクラッチをつないだら思いっきりアクセルを全開にし、ショートなギア比を利用して一気に高回転域まで引っぱる事で、比較的速度が遅いところでも高回転のパワーを楽しむ事ができる。低回転域のトルクは余り無いのでクラッチをつないだ瞬間に加速するようなパンチ力は無いのだが、前述のようにギア比がショートなお陰でスタート直後でも高回転域を利用して結構な加速力を得る事ができる。街中や峠では車体の軽さも活かして、オーバーリッターマシンに喰らいつく事も可能。また、低速トルクが細い(と言っても、4スト単気筒にしては比較的細いというだけで、オンロードスポーツの2ストや4ストマルチよりは太い)という事は、逆に低回転でのトラクションが良いという事になり、結果的にこれも良好な加速力を得る助けになっている。
 それから、キャブのセッティングが意外に良い。DRのキャブは強制開閉型のVM28キャブが装着されている。普通、単気筒に強制開閉のキャブを装着するとエンジンのレスポンスは良いが、低回転でギクシャクしアクセルワークに気を使う。しかしDRの場合、かなり薄めにセッティングされている為、低回転のトルクが無くてギクシャクする事なく何も考えずにガバッとアクセルを開けられる。また、負圧サーボのキャブだと単気筒の場合低回転時のレスポンスが悪くて、一気にアクセルを開けるとストールするという事もあるのだが(GB250はそうだった)、DRはVMキャブ(+加速ポンプ)のお陰でそれも無く、アクセルを一気に開けられる助けとなっている。DRのこの特性はTT−R250と全く正反対(TT−Rは低回転のトルク重視で、低速からドカドカ加速できる)で、ビギナーにはとっつき易いと思う。良い意味で低回転がダルなお陰で、気楽にアクセルを全開に出来、誰でも高回転のパワーを楽しめるようになっている。この辺のセッティングは絶妙だと思う。
 なんだかベタ誉めだが、当然の如くこれらの利点の代償として高速域が犠牲にされている。高回転型のエンジンにもかかわらず、120km/hも出したらスピードは頭打ちで、高速走行は結構辛い。また街中でも高回転を多用する事で、必然的に燃費が悪くなる。しかしながら、それらを差し引いても十分に楽しめるほど強力な加速力と扱い易さが同居している。
ロングホイールベースな車体
 ホイールベースが長い為に、250のオフ車にしてはクイックさが感じられないダルなハンドリングなのだが、これが意外に良い。特にワインディングでは安定したハンドリングの為に、思い切ってコーナーに侵入できる。これと、前述の高回転型エンジンの組合わせを利用し、アクセル全開のままコーナーをクリアしたりすると非常に気持ちイイのである。DRは、オフ車でありながらオンロード性能が非常に高い。日本のタイトなワインディングなら、間違いなくオンロードスポーツよりもDRの方が速く、そして気持ちよく走れる。
 伊豆スカイラインのような、高速コーナーが連続して所々に比較的長いストレートがあるようなところだと、大排気量スーパースポーツにパワーで差をつけられたりしてしまうのだが、逆にパワーが無い為にエンジン性能を100%使い切りながら思い切った走りが出来る。ブッちぎりで抜く事は出来なくても、コーナーで大排気量車を突っつきまわす事が可能でこれも楽しかったりする。DRに乗ると、モタードマシンが流行る理由が判るような気がする。

悪いところ
始動性が悪い
 冷間時は、まず一発で掛かる事はあり得ない。
 DRの場合、キャブセッティングが薄めなのでどうしても冷間時の始動性が悪くなってしまうらしい。つまり持病……。
 但し、キャブに加速ポンプが備わっているので、セルを回す前にアクセルを2、3回煽ると始動しやすくなる……ハズ。だが、オイラのDRはそんなもんじゃエンジン掛かりません。
 エリ熊氏から譲ってもらう前は、1年程不動で放ったらかしにされていた為、キャプが完全に腐っていた。また、放置期間が長かったせいか、タンク内が錆々なのでフューエルラインもちょっと詰まり気味らしい。そのせいで、始動時は燃料移送が上手くいかずにエンジンが掛かり難い。車体を前後左右に揺すってからセルを回すと掛かり易い事からも、燃料系の問題がありそう。
 まぁ、これは個体特有の問題だから置いておくとして、プラグをイリジウムに交換してみてもあまり始動性は改善されなかった。プラグ交換時にプラグホールが汚れていたので圧縮抜けの可能性も疑ったが、プラグホールを綿棒で丹念に掃除してからプラグを装着しても変わらず。圧縮抜けでもなかったようだ。
 以上から、やはり始動性の悪さはDR250R特有の問題と思われる。
 デジタルメーターのモデル以降は多少改善されたと聞く。キャブの流用とか出来ないかなぁ。

タンク容量が小さい
 タンク容量は10リットル。エンデューロレーサーDR250からの派生という事を考えれば、容量はある方。
 でも燃費と併せて考えると、満タンで200kmちょいしか走れないので、ツーリングメインに考えているオイラにとってはちょっと辛い。満タンで最低でも300kmは走って欲しいので、ビッグタンクの装着は必須か。
 しかし、DR250SH用のビッグタンクはIMSやアチェルビスから出ているのだが、DR250R用の物はどこからも出ていない。DR250Rの派生型であるジェベルXCがある為だと思われるが、ジェベルのタンクは13リットルしかないし、流用するとシートもジェベル用に換えなければならないのでコストパフォーマンス的にちょっと食指が動かない。
 やっぱり樹脂製で容量が20リットルぐらいあるラリー用のビッグタンクが欲しい。DR−Z用のIMSのタンクが付かないだろうか?

ブレーキが効かない
 フロントブレーキが効かない。
 オンロードスポーツモデルの強力なブレーキに慣れてしまったせいもあるかもしれないが、峠の舗装路でオンロードレプリカを煽りながらカッ飛ばす時にちょっと制動力不足を感じる。
 ダートを走る分には丁度良い程度だと思うので、パッドの種類を換える事で改善されるかもしれない。

社外品パーツが少ない
 DR250Rは国内のみのラインナップで、輸出仕様が存在しません。よって、IMSやアチェルビスなどのオフ車用パーツを沢山出している海外のパーツメーカーから、DR250R用のパーツが出ていない。SHC以前の型は輸出用のDR350があってそれが海外では人気があったので社外品パーツが沢山出ているのだが、SHCとRSでは殆どパーツの互換性が無いので流用がきかない。残念。
 しかし、最近ではプレイバイクとしてRTLとほぼ同仕様(つーかRSをベースにしてある)のDR−Z250が北米向けで発売されているので、DR−Z250用のパーツが出ないかなぁと期待している。

顔が不細工
 これはみんな口を揃えて言いますね〜。DRのライトカウルは、はっきり言ってカッコ悪いです。
 スズキのバイクのデザインは、個人的には物凄くカッコイイと思う物が多い(古くは、名機GSX1100S刀に始まり、90年型のGSX−R400、RGV250Γ。最近ではTL1000Rとか’03型のGSX−R1000がスゲーカッチョエエと思う)。しかし稀に、何をトチ狂ったのかと思うほど不細工なバイクもあったりする。その内の一台が95年型のDR250R。
 あんまりにもブスなんで、引き取ってきた翌日にはとっとと整形手術しちゃいました(爆
 新しいライトカウルは、UFOのGIBLIヘッドライト。コレ、オフ車の中では最高の美人さんであるKDX250のコピーだったりする。よってスズキ車のDRに装着するのは邪道と言う人もいるのだが、オイラはそんな事気にしません。カッコ良きゃイイのよ!
コレ付けただけで、DRは100倍美人になりました。


 しかし、こうしてみると不満の多いバイクだな(^^;

燃費
 20キロ/リッターくらい。ツーリング時は23キロ/リッター。
 単気筒250にしては良くない方かもしれないが、ショートなギア比でついつい高回転を多用してしまう事と、エンデューロレプリカ的な位置付けを考慮するならば、燃費は良い方かもしれない。
 いずれにしろ、満タンでの航続距離が200キロちょいというのはロングツーリングでは厳しいかも。樹脂製の軽量ビッグタンクが欲しいところ。

主なトラブル
 特になし。
 前述のエンジンが掛かりにくいというのがトラブルと言えるかもしれないが、それでバッテリが上がってしまったとか、完全に始動出来なくなった事は無いので問題なし。
 ま、タフで信頼性が高く、これと言ったトラブルが起きないと言うのがこのクラスのオフ車の最大の長所だと思うので、前述の多くの”悪い点”にも目をつぶれる。

総合評価
 クラストップのパワーを誇るエンジンを持ちながら、ビギナーにも扱い易く、それでいて結構速い。それがDRの特徴と言える。
 エンジンは高回転型でパワーはクラストップ。でもレスポンスはモッサリ。ハンドリングはダル。
 ホンダのような精緻さや、ヤマハのような計算され尽くしたハンドリングとは程遠い、どこか野暮ったさ(もしかして計算して野暮ったさを出しているのかもしれないが)を感じさせるバイクである。でもそれがネガにならない。
 むしろその大雑把なところが、誰にでもクラストップのパワーを楽しめる要因になっている。大雑把だから何も考えずにアクセルが開けられるし、大雑把だから何も考えずにコーナーを思い切り攻められる。細かいことは考えない大雑把故の間口の広さこそが、DRの魅力ではないかと思う。ある意味、非常にスズキらしいバイクかもしれない。