真・女神転生2

 前作では、物語は20世紀の東京・吉祥寺からスタートした。主人公も普通の高校生だった。続編たる2において、その舞台は今世紀末に移され、メシア教が支配する都市TOKYOミレニアムとして現れる。

 神の教えを守り、救世主を待ち続けるメシア教徒と、欲望のままに人としてあろうとするガイア教徒の対立は続いており、主人公も何らかの形で巻き込まれることもある。司教や元老たちがいるセンターによって統治され、スラムや娯楽施設なども備えた都市、ミレニアム。しかしその地下には、都市再構築計画の名の下に文字通り日の当たらぬ場所へ追いやられた者たちの住む地下世界が広がっているのだ。

 新宿、赤坂、六本木周辺は、妖精や地霊たちのコミュニティーとして存在している。さらに、ミュータントと呼ばれる異形の者たち。メシア教によって、「世界にふさわしくない」と一方的に蓋をされた者たちだが、彼らこそが主人公に生きることの意味、人として生まれたことの意味を投げつけてくれる。

 LOWとCHAOSの対立はマイケル・ムアコックのサーガを彷彿とさせる。その中で主人公は善でもなければ悪でもなく、むろん勇者などではなく、自らの運命を神の手の中で弄ばれている哀れな弱者にすぎない。時に彼らは、己の魂の救済のために、望まぬ剣を振る。真・女神転生2を進めるにつれ、神に選ばれることがどれだけ迷惑なことなのか、我々は実感できる。

 しかし現実の歴史も、そうではなかったか。ジャンヌ・ダルクも天草四郎も、神の手駒の一つだった。神という概念が捕らえにくければ、もっとわかりやすい例がある。そう、「神イコール国家」として考えるのだ。

 国家(神)のために人が存在するのではなく、人がよりよく生きるために国家(神)がある。だがもしも、国家(神)が自らの意志を持ち、暴走し始めたら?主人公がその事態に対してとる行動、それが彼の立場を浮き彫りにしていく。すなわち、法か混沌か。

 今はすべてを忘れよう。あなたは記憶を失って目覚める。次に目覚めたときは、自分の名前も、生い立ちも、すべて忘れている。ただしこれだけは言っておく。世界は、LOWとCHAOSの二極ではなく「なにものにもたよらぬ」NEUTRALの道もあることを・・・

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