八丈小島太平山登頂 |
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by 「ヴァーチャル クライマー」GAMO |
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●八丈小島登頂に向けた選択
考えておくべきことは、船が出るかどうかということと、登山に適しているかどうかの2点。Bのデータからわかるように、12〜3月までの冬期は風の強い日が多く、その分、船が出ない可能性が高くなる。あと台風の多い9月も避けた方がいいかもしれない。また、登山に適しているかという意味では、雨の多い6月や9,10月は避けたいところ。八丈島は意外と10月に雨が多いようだ。さらに6〜9月もパス。暑いからというのもあるが、草木の成長が著しい時期で、自然に任せたままの八丈小島はより険しくなり、それだけ登り難くなる。特に、7,8月はダニが多いとのこと。
B日最大風速10m/s以上の日数の月別平均値、単位:日 (資料)「理科年表 平成22年版」国立天文台編 以上、上表で@〜Bごとに望ましい時期を青くしたが(色が濃いほどより望ましい)、全てを満たすのは4,5,11月といったところか。本当にこれで正しいかは、行く前に現地の方に聞いてみて下さい。
八丈島まで行ったはいいけれど渡船が出ないということにならないように、できるだけ運行可能性の高い船を選びたい。少なくとも、大勢のパーティで行く人以外は、曜日は人数が集まる土日をお勧めする。なお、自分がお世話になった優宝丸は、渡船の行きが6:30なので金曜日夜の東海汽船でも土曜のANA一便でも間に合わない。帰りは八丈小島発16時なのでANA最終便に間に合うかはかなり微妙なところ。金曜日か月曜日の休暇取得は必須だろう。
市販の書籍に乗っていた八丈小島登頂記録は、「秘境ごくらく日記」(敷島悦朗)と「島の山旅」(敷島悦朗)の2冊のみ。実は、両方とも同じ山行をベースに書かれたもので、敷島氏は宇津木から登っている(蛇足ながら、敷島氏が登ったのはヤギが多数生息していた1990年代のことと推測され、現在とは状況が違っていたと考えられる)。一方、ネットで2,3個見かけた登頂記録は、鳥打から登っているようだ。自分が八丈島で泊まった長戸路旅館の主人も、鳥打からの登山を勧めていた。 結局どちらが良いかはわからない。 |
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●八丈小島太平山ルート図
さて、肝心のルートであるが・・・・・。書いてはみたものの、正直全く自信がない(GPS持ってないからなぁ・・・)。イメージだけでも掴んでもらえればと思って作ってみた。 下図の赤線@は「人跡ゾーン」。学校や石垣、あるいはその後訪れた廃村マニアなどによる踏み跡等も含めて、人がいた痕跡が比較的残っているエリア。青線Aは「沢筋ゾーン」。実際、沢は流れていないが恐らく雨が降れば沢になる感じで、ルートファインディングの感じも沢登りと似ている。橙線Bは「篠竹ゾーン」。そんなに距離はないのだが、突然竹藪に行く手を阻まれ、まさに人跡未踏となる。緑線Cは「藪漕ぎゾーン」。藪漕ぎとは言うものの低草で見通しが利くので不安はないが、傾斜がかなり急だ。 ![]() |
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●八丈小島太平山 山行記録
簡単に身支度をして7:15出発。門、石垣、壁・・・かつて人が住んでいた痕跡がはっきり残っており、その合間を縫うようにして登っていく。7:30(標高80m)、右手に小学校の門と、校庭だったらしき野原が見え、その奥に校舎の壁らしきコンクリート片がわずかに残っている。ここを左折し、山に分け入る。タイムスケジュール
2010年11月19日(金)八丈島空港に降り立った。天候は曇り。初日は特に予定なし。翌20日(土)に八丈小島へと向かう予定だったが、天気予報は朝まで雨。仮に明け方に晴れたとしても、八丈小島の草木が相当濡れていることは容易に想像できる。幸い翌々日21日(日)の天気は曇りのようなので、意を決して20日(土)は停滞日とした。代わりに八丈富士に登っても良かったのだが、先の見えない八丈小島を控えていたので、体力温存の意味もあってその日は観光だけに終始した。
ついに、八丈小島上陸である。
水は流れていないが、恐らくは雨が降ったら沢に変わるのだろう。全体的にジメジメした感じだ。この沢筋らしき場所がかつての登山道ではないかと思われる。時々入る登山者のものだろうか、所々に明らかな人間臭が残っていて、道の確からしさを感じることができる。 そのまま進んでいくと、途中3,4箇所ほど登るのに苦労する場所に出くわす。えっ、こんな所が登山道なわけないしなぁと思って見回すと、ちゃんと巻き道らしきものがついている。まさに沢登りの巻き道と同じ感じで、それとなく感じられる程度の踏み跡だが、恐らく正解だろう。ちなみに、巻き道はほとんどが左岸についていた。 沢筋ゾーンは約1時間。8:50(標高340m)、何回目か巻いたあと、突然竹藪に出くわした。
9:05(標高380m)、竹藪を抜けたところで今日初めてのちゃんとした休憩。10分間休みながら行動食を摂った。
所要時間3時間、時間的には思ったよりもだいぶ早く着いた。だが、先の見えない不安感と闘いながら道なき道を辿る山行は、プチ冒険気分と程良い達成感が味わえる。見渡せば八丈富士と三原山が仲良く並んでいる。ひょうたん島の手前、白い波を立てながら東海汽船が通ってゆくのが見える。ちょうど東京へ帰る時間だ。 山頂で30分休憩。一人喜びを噛みしめた v(^^)v
10:45山頂発、帰路に着く。 さて、事件が発生したのはその先のこと。沢筋をひたすら下ること50分。そろそろ人跡と合流するはずと思っていると、気のせいか沢の両岸が深くなってきた。ふと不安に駆られた。もしかして行きすぎてしまったのでは・・・・・。このまま進んで海まで達したら、海岸線が切り立っている八丈小島のことだから、海岸線沿いに鳥打に出ることが出来ないかもしれない・・・・・。そう思って右岸を越えて上に出てみた。すると、青々とした海が広がり、海に突き出した鳥打の海岸線と小学校跡地がよく見えた。目指すはあそこだ! @人跡ゾーン このまま沢を下っても間違っていたら登り返すことになる。だったら、多少強引でもこのまま小学校方面に直登ならぬ直下(?)した方が確実だ。そう思って、藪漕ぎよろしく斜面を強引に下ることにしたのが12:40のこと。しかしこれが大失敗だった。人跡ゾーンの草木は頂上付近とは比べ物にならないくらい逞しく複雑に成長していた。いくつかの草木が、ツタのようなツルのような植物で絡みついていた。強引に下ろうにも前に進めない。乗り越えたり、くぐったりしながら進んでゆく。しかも、既に人跡ゾーンに入っており、下は石垣により2mくらいの段々畑状態になっていた。植物を掻き分け掻き分け進むと、いつの間にか石垣を越え足元に地面がなくなっていた。それでも絡みつく植物のお陰(?)で下に落ちることはなく、空中に浮かんだままもがき続ける。下に行けばどこかで踏み跡にぶつかるはずと思ったが、下るのも容易ではない。それならと石垣に沿って、(海に向かって)右方向に進む。石垣沿いに匍匐前進すると比較的草木の妨害が少ない。掻き分け、這いつくばり、乗り越え・・・・・そんな格闘を続けること50分。小学校の少し上で、ようやく踏み跡に達した。 そこから鳥打港まではわずかに10分。13:50、鳥打港に到着した。結局、下りも登りと同じく3時間を要した。 優宝丸の迎えは16:00ちょうど。それまでグショグショになった服・靴を乾かすとともに、岩場でオカヤドカリと戯れたり、貝殻を拾ったりしてノンビリと過ごした。定刻を少し遅れて迎えに来た優宝丸に乗って離島。沈みゆく夕陽が八丈小島太平山を照らしている。船の上から今日一日お世話になった小島をじっと眺める。消えゆく古の人々の暮らしに想いを馳せながら、遠ざかる島影を見つめていた。 |
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●その他
上記に書き切れなかったいくつかについて、下記に補足しておきます。服装等 藪漕ぎを想定すれば、言うまでもなく長袖・長ズボン、手袋は必須。また、天候にもよるが、上下ともレインウェアを着ておいた方が無難かもしれない。篠竹ゾーンを考えると帽子なども重要。目の悪い人はコンタクトよりも眼鏡の方がいいかもしれない。篠竹が突然目に突き刺さるというアクシデントを防げるからだ。あと、自分は失敗したがスパッツは絶対に必要だ。 携帯電話 八丈島に面している宇津木側の斜面は携帯電話が通じるようだが、太平山の陰となる鳥打側から登ると、携帯電話は全く通じない。唯一通じるのは山頂のみ。 山羊について 以前の八丈小島は、全島民強制離島の際に残されてしまった家畜のヤギが野生化・異常繁殖し問題になっていた。曰く、ヤギのせいで島の環境が悪化し崩落が起き、漁場も荒れてしまったと。その真偽のほどは定かではないが、野ヤギの駆除は2006,2007年頃に完了したそうである。実際、山行中に山羊の姿や痕跡を目にすることはなかった。ちなみに、自分が泊まった宿のご主人曰く、以前は野ヤギのケモノ道や、駆除のために猟師が通った道があったが、現在はそれもなくなってしまったとのこと。ひょっとしたら、今後八丈小島はより登るのが難しくなるのかもしれない。 オカヤドカリ 余談ですが、八丈小島にオカヤドカリがいた(八丈島にもいるそうですが・・・)。我が家でも飼っているが、なかなか愛い奴です。ちなみに、オカヤドカリは天然記念物なので、勝手に採集できません。 ![]() 八丈小島、楽しかった。 |
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