作 品 名
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「山でお泊まり手帳」 (仲川 希良、2018年)
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紹 介 文
(帯、裏表紙等) |
山小屋に泊まったり、テント泊をしたり――日帰りハイキングから一歩ふみだして、山で「お泊まり」する経験は、楽しみの幅をぐっと広げてくれます。このムックは、日本全国、ときには海外の山でも山登りを重ねてきた仲川希良さんが、気負わず自分のペースで「お泊まり」を楽しむために役立つノウハウを紹介する一冊です。体力を補ってくれるウエアや道具の選び方や、女性ならではの悩みを解消するコツを解説。ビギナーにおすすめの山小屋やテント場の数々と、そこへアクセスするためのルートも掲載しています。老若男女問わず、お役立て頂ける一冊です。 | ||||||||||||
感 想 等
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( 評価 : B) ファッションモデル仲川希良さんによる山行ノウハウ本。正直、可愛いモデルさん程度のイメージしか持ってなかったが、読み始めてすぐに、この人は本物だと気付く。山好きが仕事に繋がればいいなぁみたいな邪心は全くなく、純粋に山が好きで、自然に溶け込みたくて山に行っていることがよく分かる。 本書は、山小屋泊・テント泊のノウハウ、服装や道具選び、お勧めの小屋・テント場などについて、エッセイ風に解説する。これはこれで、初心者にも分かりやすく参考になる。特に、服装や道具、お化粧などに関する女性ならではのアドバイスは、役に立つだろう。そして、合間合間に出て来るエッセイ、山行記の部分は、文章も優しく、溢れる山への愛が伝わってきて素敵。共感できるフレーズが随所に散りばめられています。山の初心者に役立つのはもちろん、経験者も楽しめるノウハウ本・エッセイ集です。 |
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名 言 等
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作 品 名
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「ザイルをかついだお巡りさん」
〜アルプスに賭ける警察官 喜びと悲しみのドラマ〜 (長野県警察山岳救助隊 編、1995年) |
紹 介 文
(帯、裏表紙等) |
日本の山岳遭難の約7割を扱う長野警察山岳遭難救助隊。その厳しい救助活動の数々を綴った、山男たちの汗と涙の手記。救助活動の現場の緊張感を通して、山のすばらしさと恐ろしさ、そして、命の尊さを伝える。 |
内容・感想等
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もはや「お馴染み」と言ってもいい山岳警備隊シリーズの第3弾として、長野県警察山岳遭難救助隊の登場である。 北アルプスを始め多くの山々を抱える長野県だけに歴史も古く、実績も素晴らしい。それらを踏まえた数々の遭難事例にまつわるエピソードが紹介されている。前2作同様、救助隊の方々への感謝の思いと、自らの山行に対する戒めを新たにした1冊だった。 山岳警備隊シリーズは全部読む必要はないかもしれないが、1つは読んでおきたいものである。 |
作 品 名
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「「おかえり」と言える、その日まで 山岳遭難捜索の現場から」(中村富士美、2023年)
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紹 介 文
(帯、裏表紙等) |
のこされた家族のために 私が見つけ出す いくら捜索しても見つからない― 「せめてお別れだけでもしたい」 丹念なプロファイリングで消えた登山者の足跡を辿る。 |
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感 想 等
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( 評価 : C) 自ら立ち上げた山岳遭難捜索チームLiSS(リス、Mountain Life Search Support)で活動する、元・救急救命センター看護師で国際山岳看護師の資格を持つ中村さんによる遭難(捜索)事例本。遭難救助の本も色々出ているが、中村さんの活動は遭難者の家族のケアにも心を砕いており、本書の内容も過酷な現場でのハードな救助活動というよりも、家族と密にコミュニケーションを取りながら、遭難者の性格をプロファイリングすることにより遭難者を見つけ出す様子が描かれている。遭難者の家族に寄り添う中村さんの思いは、「遺族」という言葉を使わない所にも表れている。 どの事例も家族の心痛や、生きたいと思う遭難者の願いがひしひしと伝わり、読んでいて心が苦しくなる。以前はこの手の本を読んで自戒し、山への準備・山での行動により慎重になったものだが、今回はちょっと山に行くことが少し怖くなった。自分の年齢のせいと、最近何気ない里山で道迷いを経験したせいかもしれない。 また、遭難捜索の手法も変わってきていることがよく分かる。登山届を基に遭難者をすれ違った人を探す方法は今もやっているのであろうが、ヤマレコやYAMAPなどネットの山行記録から遭難者の情報を探したり、ココヘリと使った捜索なども出てくる。こんな所にも、時代の変化は起きているのだなぁと感心。 |
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名 言 等
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作 品 名 | 「山行記」 (南木 佳士、2010年) |
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紹 介 文 (帯、裏表紙等) |
芥川賞受賞の翌年に心身を病み、山歩きで新境地を得た作家兼医師が、とことん「わたし」にこだわった風変わりな山の紀行文集。 月刊誌「山と渓谷」に掲載され、多くの読者の共感を得た、北アルプス、浅間山、南アルプスの山行記三篇に、書き下ろし作品一篇を加えた、著者はじめての紀行文集。 |
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感 想 等 |
( 評価 : C) ハードなクライミングや高所登山ではない。初老男性が息も絶え絶えに登る縦走登山が描かれているに過ぎない。それを読ませる作品に仕上げるあたり、さすが純文学作家である。とはいえ、山行記でも「わたし」が登場し、人としての赤裸々な思いを吐露されると、エッセイと私小説の境目が微妙に思えてくる。エッセイの方がいくらか茶目っ毛がある気がする。 |
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名 言 等 |
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作 品 名 | 「俺は沢ヤだ!」 (成瀬 陽一、2009年) |
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紹 介 文 (帯、裏表紙等) |
V字渓谷から見上げる狭い空に黒い雲が広がっている。いまここでまとまった雨が降ってきても、増水から逃げる術はない。曲がりくねった谷の先から腹に響く水音。飛沫が宙を漂ってくる。・・・・・大滝の予感。逃げ出したい。 でも猛烈にこの先を覗いてみたい。 21世紀初頭において、人生をかけて沢登りを極めようとする沢ヤの冒険譚。 |
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感 想 等 |
( 評価 : B) 20歳を過ぎてから沢にのめり込み、以来25年、今なお沢三昧の生活を送っているという成瀬氏の山行記であり、半生記である。 ピーターパンシンドロームだろうがなんだろうが、これだけ自分の好きなことに没頭し、自分のしていること、自分の人生を、面白いと言える人間がいるだろうか。それを羨ましいと言ってしまってはあまりに自分がミジメなので、敢えてスゴイ!と評しておこう。成瀬氏は自由に今を生きているのだ。 日々の生活に、目の前のことに汲々としている自分にとっては、少し勇気と元気をもらった一冊だった。 |
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名 言 等 |
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作 品 名 | 「山の博物誌」 (西丸 震哉、1966年) |
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紹 介 文 (帯、裏表紙等) |
山では、花が咲き鳥がいてケモノが歩く・・・・・ 山には、沼があり魚がいて虫がウヨウヨ・・・・・ 突風が吹き、霜柱がたち、雪崩だって起る。 地形・気象など科学的知識に裏付けられ、モロモロの生物界の仲間たちへの愛情にあふれた、軽妙な筆致のホントの自然界入門。 |
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感 想 等 |
( 評価 : D) 動物、鳥、魚、植物、山の気象、自然現象・・・etc. 我々が山で目にするもの全て、山や自然を形作るもの全てに、西丸流の解説を加えていく。 やや堅苦しい、図鑑的な部分がちょっと・・・と思いきや、もともとはブルーガイドブックスで出版されたものとのこと。逆に言えば、本来図鑑であるはずのものをここまでにしてしまう西丸氏の個性が凄いと言うべきか。そんじょそこらの図鑑にはない面白さです。 |
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名 言 等 |
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作 品 名 | 「山歩き山暮し」 (西丸 震哉、1974年) |
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紹 介 文 (帯、裏表紙等) | 大賑わいの登山コースには見向きもせずに、何やら怪し気な山々を探し出しては踏み込んでゆく西丸式登山術。山中滞在のさまざまな創意が人生の知恵にもるながるユニークな山のエッセイ。 | ||||
感 想 等 |
( 評価 : C) 人のいない山。地図で見つけた山、藪こぎ等々、他人とは一風変わった西丸式登山術が詰め込まれた愉快なエッセイ集。人によって好きずきはあるかもしれないが、このハチャメチャぶりがすごい(おそらく本人に言わせれば至極当然のこと、となるのだろうが…)。 登山そのものもさることながら、西丸式の発想転換、柔軟な物の見方・考え方、何事も楽しむ気持ち等々見習いらいものである。 本書自体は、かなり前に書かれ、しかも過去の回想が結構多いが、おもしろさは色褪せるものではない。 |
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名 言 等 |
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作 品 名 | 「郷愁の八ヶ岳」 (新田 次郎、1997年) |
紹 介 文 (帯、裏表紙等) | 信州・八ヶ岳のふもと、「標高千メートルの家」に生まれ育った新田次郎は、中央気象台に職を得、富士山観測所で6年間、山岳気象観測に従事した。 その体験から山岳小説を書き、『強力伝』によって直木賞を受賞した。のちの作品『八甲田山死の彷徨』はドキュメント文学の傑作であり、ミリオンセラーとなった『武田信玄』など、歴史小説にも記念碑的作品を残した。剛直な性格を映した男性的な文体と、科学者の眼による観察に裏うちされた描写が、新田文学の魅力である。 峰をなす山岳小説や歴史小説の谷間に、自分の心情を直接吐露した数多くのエッセイが、高山植物のように色とりどりに咲いている。 このシリーズでは、それらのエッセイを山・旅・歴史という三つの分野に仕分けして編成した。第1冊の『山のエッセイ』では、「郷愁の八ヶ岳」 を巻頭に、「富岳三十六景」など富士山にまつわるエッセイ、奥多摩のこと、なんども登ったヨーロッパ・アルプスのことなど15編を収録した。どの一編も、それぞれの山の姿とともに、生涯山を愛し続けた新田次郎その人の風貌姿勢が、くっきりと現われている作品ばかりである。 |
感 想 等 |
( 評価 : C) 山岳小説家として著名な新田次郎氏のエッセイ集。60年代前半に書かれたものと70年代中頃のものが混在している。気象庁での経験や小説の題材に関するちょっとした裏話、富士さんにまつわる四方山話などが盛り込まれていて楽しめる。 後半1/3強は、新田氏のアルプス体験記(漫遊記?)のようなもので占められている。あの新田氏も初めての地では我々と同じようにドキドキしたり、ソワソワしたりするらしい。新田氏のちょっと子供のような一面を垣間見ることができてとてもほほえましい。でも、やはり新田次郎という作家は、小説という作品を通した形で味わいたい。 |
作 品 名
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「私とクライミング」 (野口 啓代、2021年)
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紹 介 文
(帯、裏表紙等) |
壁に挑み続けた21年、集大成の五輪へ クライミング界の女王、初の自伝 「唯一無二のクライマー 彼女の背中を追いかけて 僕は世界王者になった」(楢崎智亜選手) |
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感 想 等
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( 評価 : C) 日本の、いや世界の女子クライミング界をリードし続けた野口啓代さんの半生記・自伝。32才で自伝とは早すぎる気もするが、東京オリンピックに出場する直前までの、彼女のクライミング人生が全て詰まっている。 ワールドカップ通算21勝、ボルダリングワールドカップ 年間総合1位4回。その凄すぎる戦績に比して、気さくで飾らない人柄から多くの後輩からも慕われている野口さんの競技への思い、苦しみ、葛藤が余すことなく吐露されている。その力強い言葉の中に、優しさと謙虚さが込められている。改めて、野口さんが努力の人なのだということがよく分かる。努力し続け、何かをなし遂げた人だけが語れる言葉、その言葉の重みをヒシヒシと感じます。野口さんの父親が言う「どうしたら上手くなれるのか。それを愚直に追い求め、努力し続けられること。それが啓代の持っている一番の才能」ということが、いかに凄い才能か・・・。 本書が書かれたのは2021年6月、出版は7月9日。色々な大人の事情で東京オリンピック開催前での出版となったことは容易に想像出来る。東京オリンピックで、苦しみながらも銅メダルを獲得した彼女のクライミングは素晴らしかったし、見ていて感動しました。東京オリンピック当日までを記した増補改訂版、是非出して欲しいものです。 |
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名 言 等
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作 品 名
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「落ちこぼれてエベレスト」 (野口 健、1999年)
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紹 介 文
(帯、裏表紙等) |
「いい大学に行って、一流会社に入るだけが人生じゃない!」落ちこぼれだった著者は、植村直己の著書と出会い、人生の目標を見つける。波乱の少年時代から、7大陸最高峰世界最年少登頂記録を樹立した1999年5月のエベレスト登頂までを綴った、若きアルピニストの軌跡。夢を持ち、挑戦することの素晴らしさを伝える熱き自伝。 | ||||
感 想 等
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( 評価 : C) 野口健という登山家は、名の知れた登山家としてはかなり異例の経歴と言えるだろう。少なくてもクライマーではないのかもしれない。七大陸最高峰を登ったとはいえ、それ自体を目標にして登ったのであり、山歴はさほど豊富なわけではない。それゆえに、彼の登山を一種邪道のように言う人もいう。 しかし、それは所詮ひがみだ。人には人それぞれの目標、生き方がある。彼は登山に、いや七大陸最高峰登頂に自分の生き方を見つけ、ひたすらそのために努力してきた。マスコミ等を利用したのも目標達成のための手段に過ぎない。彼の登山を批判することは簡単だが、生き方そのものは立派だと思う。ここまで植村直己に導かれるようにして歩んできた彼がこれからの人生をどう生きていくのか。清掃登山やシェルパ基金といった活動に注目したい。 |
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名 言 等
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作 品 名
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「『幸せ』を背負って」 (野村 良太、2024年)
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紹 介 文
(帯、裏表紙等) |
プロアドベンチャーレーサー 田中陽希さんも感動! 「ロマンを求めて厳しい舞台に挑み、自分の弱さに向き合う彼の姿に、自分の人生を重ねながら一気に読み切ってしまった。 北海道を南北に貫く分水嶺670キロに挑んだひとりの青年の成長を読み解くことができる、壮大で感動的な山岳人間ドラマである。」 |
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感 想 等
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( 評価 : A) 2〜4月、雪の北海道で、宗谷岬から襟裳岬まで分水嶺に沿って縦断した一人の男の山行記である。北海道縦断というと志水哲也氏の「果てしなき山稜」が思い浮かぶ。実際、本書の著者も愛読していたようだが、志水氏が何回かに分けて繋ぐことで縦走を完成させているのに対して、野村氏は一気に縦走しており、その分難易度も高い。とはいえ、このレベルになるともはや難易度が高い・低いで云々ではなく、誰もやらなかったことに、たった一人で挑戦し、自分と向き合いながらやり遂げる強さにこそ真髄があるのだろう。 自分の弱さを見つめ続けた志水氏に対して、野村氏の方が幾分楽観的な所があり、その分本書のトーンも明るく感じられる。象徴的なのは、文章の随所に「幸せ」という言葉出てくることだ。小さなことに対しても、感謝の気持ちを持ち、幸せを感じることが出きることが、この人の強さの源泉なのだろうと思っていたら、「あとがき」に「僕に伝えられることがあるとすれば『幸せ』ではないか」と書かれていた。十分伝わってきました。 冬の北海道を単独で歩いた志水氏と野村氏。2人が共通して伝えてくれたこと、それは「人は独りでは生きていけない」ということ。人の助け、優しさ、温かさがあって初めて、人は生きていける。それは、一般社会でも同じなのだが、厳しい環境に身を置いて、たった独りで挑戦したからこそ、本当の意味で感じ得たことなのだろうと思う。山好きはもちろん、そうでない人にとっても読んで損はない1冊。 |
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名 言 等
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