大好き 珊×犬

2003/04/06


 

 


好き≠ニか、嫌い≠ニか。

そんなもん、関係ないと思ってた。

ただ、俺とあいつは仲間なんだって、思ってた。

けどあいつは、違うと言った…。

 

 

 




「………暇…」


寝転がったおれは、だらしなく両手両足を広げたまま呟く。

今、かごめが『てすと』のせいで向こうに帰っちまったから、おれ達は楓ばばあの家にいる。

当然おれはかごめを止めた。けどいつもの『おすわり』攻撃のせいで再起不能なまでに叩き潰されちまった(涙)。おかげでさっきまで

腰が痛かったんだが、おれはそれほどやわじゃねぇ。もうとっくに痛みなんかひいている。

だけど。



暇なもんは暇なんだ。



七宝は雲母と遊びに出ちまったし、弥勒も女どもを引っ掛けに行っちまっていない(怒)。楓ばばあも薬草の世話だとかで畑のほうだし、

珊瑚もそれについてった。

で、おれは今、することが無くて暇を持て余してる。

…かといって、弥勒のとこに行くわけにもいかねぇしな。どーせ女どもと楽しくやってんだろッ!  



 
………………………………

どれぐらいそうしていたかはわからねぇ。どうやら眠っちまってたようだ。

けど陽もあまり動いてねぇし、弥勒たちも帰ってねぇとこを見ると、それほど時間は経ってないらしい。

そのときおれは、頭に違和感を感じた。

なんだか、撫でられてるみてぇなんだ。とっても、優しく。


(…この匂い…?)


ふっ、と寝ぼけ眼のまま顔をあげると、案の定、そこには見知った仲間の顔があった。


「……さん、ご…」


珊瑚はおれが起きたことを知っても、自分の膝に乗せたおれの頭をおろす気は無いみたいだ。

そのまま、頭を撫でている。

時々、犬耳のうしろを掻いたり耳を優しく撫でてくれる…それが何故だか、気持ちよかった。


……珊瑚の膝!?


「わ、わわわっ!!?」


     ガバッ


おれ自身の状況をやっと判断して慌てて起き上がった。すると珊瑚は、驚いて手を引っ込めてしまった。


「さ、珊瑚…?」

「あ、い、犬夜叉…ごめん…なんかあんまり気持ち良さそうに寝てたんで、つい…」


つい、っておい。

おれはお前の飼い犬か?そういえばさっきの扱いもなんか、犬みてぇだった気が…


「おれは犬じゃねぇ!!」


思わず怒鳴っちまった。だって実際、おれは犬じゃねぇもんな。…多分。


「犬じゃないって…耳の裏を掻いてもらったり撫でてもらったり、気持ち良かったんだろ?」

「え…/// お、おう…//////

「じゃ、犬じゃん」


…やっぱり(泣)。自覚はあったんだぜ、こんな事してもらって気持ち良いなんて、おれってば犬…?って。それだけでも傷付いてんのに…

露骨にきっぱりと言ってくれるなよ、珊瑚ぉ〜〜〜!!(涙)

 


「そ、そういえば楓ばばあはどうしたんだよ?一緒だったんじゃねぇのか?」


話題を変えるべく、慌てて辺りを見回した。

すると珊瑚が、ああそういえば、という顔をして答えた。


「楓様なら、村の人に呼ばれて行っちゃったよ。なんでも子供がけがしたとかで…」

「ふぅ〜〜〜ん…」


 …………


それ以上、会話が続かねぇ。

普段からおれ達が二人っきりになるって、あんまねぇもんな。何話していいか、わかんねぇよ。

珊瑚はおれを見たまんまボーっとしてるし、おれはどこ見ていいかわかんねぇからとりあえず囲炉裏の方を見て…ったく、

どうすりゃいいんだよ!弥勒でも七宝でもいいから、早く戻ってきてくれ〜〜っ!!


「…犬夜叉はさぁ…」

「…?なんだ?」


唐突に話し掛けてきた珊瑚に、おれは首を傾げる。

…って、なに深刻そうな顔してんだよ、珊瑚…?


「あたしの事、どう思ってる?」

「…!…なッ……!!?」


……………………………………………………………………………………絶句。


い、いきなりなに言い出すんだ、このアマはっっ!?

そそそ(汗)、そんなこといきなり訊かれて、答えられるわけ…じゃなくって!どうして急にそんな話になるんだよっ!!!(汗汗)

おれがわけも分からず目を白黒(…白金?)させてると珊瑚が、はっ、とした顔になって慌てて言った。


「ああ!べ、別に今の言葉はその…き、気にしなくっていいと思うよっ!!きっと、あの、その、わ、話題が無いかなぁ〜、と思ってそんなことをっっ!!!」


少し日本語が間違ってる気がしなくも無いが、おれだってそんなこと気にしてれるほど気持ちに余裕があるわけじゃねぇ。

だいいち、話題が無いくらいで、真剣な顔して誰がンなこと訊くかよ!


「きっ、気にしなくっていいっつったって…!そんなこと…わ、忘れたくても忘れられねぇだろうが、んな告白じみたことっ!!……………あ」


言っちまってから気付いた。なんておれってばバカなんだよ(泣)。普段から、皆にバカだバカだって言われてるけど…

ほんとに大バカかも(涙)。


「…あの、さ、珊瑚…?」


急に黙りこくっちまった珊瑚に、恐る恐る声をかける。

もしこれが告白とかじゃなかったら、おれは確実に笑いものになっちまうし…もしこれが告白だとしたら、おれは珊瑚を傷つけちまったかも…。

 


「…………………………………ねぇ、犬夜叉…」

突然、今の今まで黙っていた珊瑚が声を出した。声がいつもより低くなったと思ったのは、おれの気のせいか…?


「冗談じゃなしに…あたしの事、どう思ってる?」


…なんか、真面目に答えなきゃ怒るぞ…っていう殺気のよーなモノを感じるんだけど……?(汗)


「…え…どう…って?」

「つまり、あたしの事を仲間と見てるか女と見てるか…ってことだよ…」

「…な、な、な…っ!?」


…なんでおれにそんなこと…それってつまり、恋愛対象かそうじゃないかってことだろ!?珊瑚が好きだったのって弥勒じゃねぇのかよっ!?

かごめ、それから七宝!どーいうことだよっっ!!!??

……答えられるわけねぇだろ、そんなこと…ただでさえかごめと桔梗と弥勒の事でドタバタしてんのに…


「さ、珊瑚…あの、だな…」


どもりがちになって切り出そうとしたら、珊瑚のやつ…


「…いいよ、言わなくっても。わかってるからさ」


って、思いっきりよくおれの言葉を遮ってくれたよ。せっかくこのおれが、やっと言葉を捻り出したってのにっ!!(号涙)


「わかってる、って、お前…」

「うん、わかってる。かごめちゃんと桔梗が忘れられないって、 法師様を想ってるって、わかってるよ」


…おい、珊瑚…桔梗はわかるが、かごめまでいなくなったような言い方をするなよぉ〜〜(汗) それに、なんで弥勒との事を知ってるような

口きくんだぁっ!!


「だけど、どうしても訊いてみたかったんだ、あんたの気持ちを、さ…」


なんで…なんでそんな悲しそうな顔すんだよ…

なんか、なんかおれが悪いことしたみたいじゃないかっ!なんもしてないのに、なんでおれが罪悪感をたっぷり味わわなきゃ

ならないんだよっっ!!

これだから、女は苦手なんだぁ〜〜〜〜〜〜〜…(涙涙)


「気持ち…って言われても、おれ…どう答えりゃいいか…」

「…あたしは仲間?それとも…女?」

「…………………………………………」


だ、だからぁ…仲間か女かなんてどうでもいいんじゃねぇのか?

そんなおれの心を見透かしたかのように、珊瑚は言葉を続けた。


「男女の関係ってのはね…相手に友達だと見られちまったら、そこまでなんだよ。大好きな男に、お前はいい友達だ、って

 言われてしまったら、その恋心は終わりなんだ」

「…」

「だから、犬夜叉。この場ではっきりして、仲間か女かっ!!」


……あのなぁ、珊瑚…そんなことを前もって言われちまったらおれには、答えの選択肢は一つっきゃないようなもんなんだけど…

このおれにどーしろと言うんだよ、珊瑚…?



おれは、仲間が傷付く顔は見たくない。かといって、仲間が傷付かないように言葉を選ぶなんて芸当は…到底おれにはできそうにない。

けど、ここで珊瑚になんて言えば、この最悪の状況を免れるんだよ…?

そりゃあ、珊瑚はそんじょそこらの武士よりも何倍も役に立つ仲間だし、時には守ってやりたくなる、気丈で健気な女だ。

だけど、恋愛対象として見れるかと訊かれると…ものすっごく複雑だ。

だって、頼りになる友人、という面もあれば、守るべき女という面もあるんだ。両方ともの面を持っている珊瑚のことは、今まで仲間だと

割り切って接してきた。

なのに…せっかくのおれの苦労を水の泡にしてプッチンと割るつもりなのかぁ〜〜〜!?

改めてこうして訊かれると、気持ちがぐらついてきちまう。だって、こんなに真剣に、こんなに一生懸命なんだぜ、珊瑚のやつ。

はっきり言ってこの何十年、何百年と生きてきたなかで、おれにこんなふうに懸命に愛を伝えてきてくれたのなんて、

おふくろとか、桔梗とか かごめとか…あとは弥勒等々の馬鹿野郎どもとか、そのぐらいだった。それに仲がいいやつがいたわけでもない。

そんななかで、愛だの友情だのの感情を知れって方が間違ってる。

だから今、自分の気持ちに戸惑ってるんだよ、おれはっ!!


「なぁ、珊瑚…この場で言わなきゃダメか…?」

「ダメ。早く言って、でないとみんなが帰ってきちゃう」

「うぅぅ…んなこといったって…」


おい珊瑚…これ以上、おれを困らせてくれるなよぉ〜〜〜っ…

なんか情けないけどここだけの話、もう泣きたくなってきた…だってもうどうしようもないぜ、これは。

こうなったら、覚悟を決めるしかない…かな。


「…珊瑚、あのな…おれ、お前のこと…いい仲間だって思ってる…」


そのとたん、珊瑚の肩がビクン、と跳ねた。けど、平常心を保て、おれ!まだ言わなきゃなんねぇことがあるっ!!


「だけどな、珊瑚…お前のことを時々、守りたいって思う…もちろん、女としてだ」

「…時々…?」

「ああ、お前、戦闘能力だけはあるからな。だからつい、女として見れなくなっちまうんだよ…でも時々見せるお前の寂しそうな顔が

 なんかおれを、守ってやらなきゃ、って気にさせるんだ…」


おれが言い終わると、珊瑚はまた黙ってしまった。

おれ、もしかして…またなんかやばいことを言っちまったのか…!?


「…なら、さ…」

「…??…」

「なら…いつも頼りなげにしてれば、あたしを女としてみてくれるってことっ!?」


     ガクッ


な、何を言い出すのかと思えば…珊瑚ぉ〜、なんか間違ってるぞ、それッ!!


「お前なぁ…そういう問題じゃねぇだろ!」

「じゃあどういう問題なのさ。だってそうしないと、本気であたしを見てくれないんだろ?」

「だから、そうじゃなくって…(汗)」


な、なんか疲れる…なんでこんな、自分勝手な解釈ができるんだッ!!これ、奈落と戦った後よりも疲れるかも…(汗汗)。


「よし、じゃあ今日から、あんたの前では女になろう!」

「お、おいおい…!」

「決ーまりっとっ!!…あ、そうだ」


おいおいおいおいぃ〜〜〜〜、勝手に決めるなってばっ!!だいたいおれの前では…ってなんだよ。弥勒やかごめの前では普通に振舞う

つもりか?

…ん?なんで珊瑚の顔がこんな近くに…


     ちゅっv


 …………………………………ッッ////////////!!!???

ことの次第を把握しちまって、もう顔は真っ赤!耳まで真っ赤だよ、ちくしょうっ!!

珊瑚のやつ、普段は全然大人しい恥ずかしがり屋なのに、なんでこんな時だけ大胆なんだよっ!?しかもしかも…く、唇に、なんてっっ!!!


「なに照れてんのさ。今更だろう?」

「いっ、今更ってあのなぁっ//////!!」

「まあまあ。それより、もうすぐみんな帰ってくるから、顔を冷やしてきた方がいいんじゃない?」


な、こ、こいつ…自分が原因のくせしていけしゃあしゃあとっ!

ふんっ、いいさ、いいさ。どーせおれはからかいのネタなんだからこのままだってっ!!


「そうだ」

「なんだよ?」


急の珊瑚の声に、思わず反応しちゃったよ、おれ…あのまま聞き流せばよかったかも(涙)。


「かごめちゃんにも桔梗にも、法師様にだって絶対に負けないんだからっ!!!」


 

 

 

 


END

 

 

 

あとがき


でました、私の好きなカプのひとつ、珊×犬=I!

本当に好きなんですよ、この二人。なんか、恥かしがりや同士の友達…だったはずが、珊瑚が想いを募らせて…みたいな?<訊くな

そういうわけで、これを書けたことはほんと感激。

そして文章!なんか今回、私じゃないみたい。

実を言えばこれを書く寸前まで成田○子先生の「新・無敵な○ら」を読んでいたんです(笑)。それも、ノーマル(?)話を書こうというその

直前まで<ぇ

というわけでこの文章。おかげで積極的な珊瑚ちゃんと、ちょいと素直でお馬鹿な犬(失礼)出現(笑)

それでは、この辺でv