#496 敢えて時計を合わせない

2025/10/16

<前目次|次>


 リスボン訪問記の続きになるのであるが、渡航前から悩んでいたことの一つに、時計を現地時刻に合わせるかどうかという問題があった。

 世界各地では、それぞれの国や地域で使われる地方標準時があり、場所によっては夏季の日が長い時期に時計を1時間進める夏時間(Daylight Saving Time)を採用しているところもある。交通機関をはじめ、時間をもとに動いているものはすべてこの地方標準時をもとに動いているのだから、それに時計を合わせるのは当然のことであると通常は思われるだろう。

 腕時計などの場合は、飛行機に乗っている時や到着地に着いた時に、出発地との時差を考慮して時計を合わせることになるだろう。一方でスマートフォンの場合は、電源を入れたり機内モードを解除したりするだけで、どこからか時刻情報を入手して勝手に現地の標準時に合わせてくれたりするので便利である。私が身に着けているスマートウォッチの場合は、時刻情報をスマートフォンから得ているので、スマートフォンが現地標準時となれば自動的にそれに合わせることになる。何も悩むところなどなさそうではあるが、実はそうではないのである。

 私が毎日欠かさず行っていることが2つあり、一つはスマートウォッチが計測している一日の運動量のノルマ達成(8000歩以上、300kcal以上、60分以上の中高強度の身体運動)、もう一つが語学学習ソフトのduolingoである。これらは午前0時を期限として、毎日の記録を集計している。海外に行って標準時が変更になった場合に、それらがどう記録されるのかが判然としない部分がある。

 仮に集計の基準となる午前0時が、その土地での標準時を使う場合、その日の運動量の記録はどうなるのだろうか。西回りで移動する場合は、同じ時間を繰り返すことになり、記録が重複してしまって、過去の記録が上書きされる可能性がある。逆に東回りで移動する場合は、時間が早く進むことになり、一日の長さが極端に短くなってしまってノルマの達成が難しくなる。

 duolingoの場合は、6時から12時(午前・午後とも)までの間にレッスンをした場合に、翌日の同じ時間帯にXPが15分間倍増したり、一日にある基準の学習目標を達成した場合に、翌日の学習開始から一定の時間XPが3倍増となったりするなど、学習した時刻に応じたボーナスがつく場合がある。また、日曜日の19時を期限として、一週間のXP獲得数を競い合うリーグ戦が毎週行われている。これらが現地時間基準になるのかそうでないのか、判然としないと効率よくXPを獲得するための作戦が取りづらい。

 つまりこうした24時間単位で行っている習慣が、渡航することにより一日が長くなったり短くなったり、基準が変わったりすることの方が自分にとっては問題なのである。渡航したとしても、スマートフォンの時刻を敢えて現地時間に合わせず、ずっと日本にいる体にしておけば、それらの問題は解決する。

 スマートフォンの時刻を現地時間に合わせないためは、Androidの場合、システム>日付と時刻でタイムゾーンの自動設定をOFFにすれば良い。こうすることで、スマートフォンは日本時間基準で動き続けることになる。ただ副作用として、これに同期するスマートウォッチの時刻も日本時間のままになってしまい、現地の時刻は世界時計の機能を使って確認することになる。まあ、時差が頭に入っていれば、単に時の部分を加減算すればいいだけのことだ。飛行機の時刻や会議の時刻など、遅れるわけにはいかない予定については、その時刻を日本時間に直してからアラームをセットしておけば良い。

 特段困るところはないかと思っていたのだが、唯一困ったのが、DND(Do not disturb)モードという、就寝中などに通知をオフにしてくれる機能が、日本時間基準のままになってしまっていたことにより、現地の夜中にどうでもいい通知で起こされてしまったことである。やはり郷に入れば郷に従い、現地の時間に合わせて生活するのが自然ということなのだろう。


<前目次|次>