△ 「パペッツハート」プロローグ4


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病室前。全体灯り。病室(中央上手)から、見舞いを終えた劇団員の音響担当の鹿島雪夫(かしまゆきお)、照明担当の上野明梨(うえのあかり)、人形操作担当の鳴無葵(おとなしあおい)、みき、のぞむ、あき、医師の瀬名周夫(せなちかお)の7人が出て来る。

あき 「先生ありがとうございます。わざわざヘルプで来て頂けるなんて。」写真
瀬名先生 「大丈夫、今日は休診日だし、原家とは長い付き合いだしね。」
鹿島 「あ、ご挨拶遅れました。劇団で音響を担当している鹿島です。」
瀬名先生 「どうも。原家の主治医の瀬名です。確かミュージシャンの…」
鹿島 「いえいえ、そんなんじゃ。駅前の音楽教室で講師やってます。バンドもやってますが。」
あき 「もうすぐライブだよね?仙台だっけ?」
鹿島 「明後日の午後出発です。」
瀬名先生 「凄いよね。僕は楽器とか全然できないから。」
鹿島 「僕も治療とか全然できません。」
瀬名先生 「そりゃそうだ。」
上野 「照明担当の上野です。」
瀬名先生 「あ、聞いてますよ。光夫君と同じ市役所の…」
上野 「はい、以前同じ部署にいた時にお誘い頂きまして。」
瀬名先生 「仕事も照明も優秀なんですってね。」
上野 「とんでもないです。宜しくお願いします。」
瀬名 「よろしく。」

瀬名、鳴無(以下あおい)を見て。

瀬名先生 「で、そちらのお嬢さんは…」

あおい、何か口に出そうとするが上手くしゃべれず、おどおどしながら

あおい 「あっ…あっ…」
みき 「あ、この子は…」
瀬名先生 「ああ、例の新人の!」
鹿島 「入団したのもう1年以上前ですけど。」
瀬名先生 「大丈夫、無理してしゃべらなくでもいいよ。」
上野 「あおいちゃん、ポンピーは?」
瀬名先生 「ポンピー?」

あおい、ハッとしてバッグの中からレッサーパンダのパベットを取り出すが落としてしまい、のぞむが拾って渡す。

のぞむ 「ほい。」写真

あおい、照れながらお辞儀をし、パペットを腕にはめると元気にしゃべり出す。

あおい 「初めまして!ポンピーこと、鳴無葵(おとなしあおい) です!人形がないと上手くしゃべれません!」
瀬名先生 「おお、ほんとなんだ…って言うかキャラまで変わるのね。」
上野 「あおいちゃんはウェブデザイナーやってるんです。」
あおい 「在宅勤務です!コミュ障なので!」
瀬名先生 「あはは。中々良いキャラですよ。」
あおい 「あざす!」
あき 「先生そろそろ本題に。」
瀬名先生 「ああ、そうだね。」
あおい 「本題行ってみよう!本題、しゅっぱ〜つ!!」

みんな黙ってあおいを見る。あおい、空気を読むようにポンピーをきょろきょろさせてから自分に向け

あおい 「…私を外してくれ。」

あおい、ポンちゃんを腕から外し、おどおど頭を下げる。

みき 「先生。ほんとにこれからずっと、父も母もあんな感じで…」
瀬名先生 「それはなんとも…」
あき 「もしこれ以上このままなら、そろそろ覚悟しないとね…」
みき 「でも、何年もしてから目覚める人もいるって…」
のぞむ 「可能性は低いそうだよ。俺も調べたけど、奇跡に近いって。」
みき 「奇跡が起こるかもしれないじゃん!」
のぞむ 「俺だってそうは思いたいけど…」
あき 「目覚めたとしても、もう3ヶ月…。重い後遺症が残る可能性が高い…」
瀬名先生 「ただ、普通の植物状態とちょっと違う事があってね。あれだけの事故だったのに2人とも外傷がほとんどない。脳にも全く損傷がない。」
あき 「ええ、しかもどちらかじゃなく、2人とも全く同じ状態というのも…」
みき 「じゃ、まだ回復する可能性も!」
あき 「症例がないから全くわからない…。」

みんな黙り込む。

上野 「あの…トイボックスの活動はどうします?とりあえず2か月後の児童館公演はキャンセルですかね?」
鹿島 「仕方ないですよ。今、人形操作できるのあおいちゃんだけだし。」写真

あおい、すまなそうに頭を下げる。

上野 「って言うか…劇団自体をどうするかって話にも…私は続けたいですけど。」
鹿島 「決定権がある2人がいないですからね。」
のぞむ 「兄弟3人とも劇団員じゃないし。」
あき 「あんたが継げばいいじゃない。無職だし。」
のぞむ 「無理だよ。姉ちゃんが継ぐべきだろ、長女だし。」
あき 「長女関係ない。病院忙しいし。」
みき 「私が継ぎたい!」
のぞむ 「お前はまだ高校生だろ。」
あき 「そろそろ受験勉強大変になるし。」
みき 「でも…」
上野 「あの、とりあえず場所変えません?私この後、劇団倉庫に行こうと思ってたんですが、どうです?」
あき 「そうだね。私は行けないけど、後で連絡する。」
瀬名先生 「私も今日は。」
鹿島 「なら僕の車で。」
あき 「こっちは任せて。」
みき 「うん。」写真

音楽がかかり。みんな納得して上前に去る。あき、瀬名は中央上手へ戻る。暗転。
オープニング
字幕「不等辺さんかく劇団 プロデュース公演2026」上手奥と下手奥に灯り。人形たちが現れる。
映像。「パペッツハート」の文字が一文字ずつ手持ち看板の様に現れ、可愛く左右に揺れる。
人形たちも音楽に乗る。ゆっくり暗転。

(作:松本じんや/写真:堂園昭人)

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