上顎の骨は複数の骨で構成されていますが、その中には鼻腔(びくう=鼻の穴)と交通しているいくつかの空洞があります。この空洞は副鼻腔(ふくびくう)と呼ばれており、骨の重さを軽くしたり、声が響くようにしたりといった目的のためにできたと考えられています。
副鼻腔のうち最も大きなものは上顎洞(じょうがくどう)と呼ばれており、上の奥歯に近いところに存在しています。
通常、上の奥歯と上顎洞の間には骨が介在していますが、骨が薄くなっていたり、根の先端が上顎洞に突き出ていることがあります。
このような状態で、根の治療をした際に、根の中を掃除する器具が上顎洞に突き出てしまったり、抜歯した際に上顎洞まで穴が交通したり、抜歯時に根を折ってしまい、残った根を取り出そうとして逆に上顎洞に押し出してしまうことがあります。
そうすると上顎洞の中で膿が溜まり、歯が原因で蓄膿症になります。専門的には歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)と呼ばれます。
レントゲン写真では、症状のある側の上顎洞が白っぽくみえます。
健康な側 |
上顎洞炎の側 |
鼻が直接蓄膿症であるときには、左右両方の鼻がつまったり膿が出たりしますが、歯が原因のときには、必ず片側(原因のある側)だけに症状が現れます。
鼻の詰まりや膿以外にも、いくつかの症状がみられることがあります。これらは症状によって異なるため、必ずしもみられないこともあります。
部位 | 症状 |
歯 |
原因になっている歯を叩くと痛みが出たり、何もしない状態で痛みがあったりする。 |
頭 |
重い感じや、偏頭痛がみられることがある。 |
頬 |
頬が腫れてきて、押すと痛いことがある。あまり赤くならないことが多い。 |
眼 |
ものが二重に見えたり、眼にも痛みがあったり、眼球が出た感じになったりする。 |
治療法としては、保存的(非外科的)には抗生物質(化膿止め)の薬を飲んだり、抗生物質を溶かした溶液で洗浄したりします。原因となった歯は抜かれることが多いといえます。抜歯した穴と上顎洞が交通している場合、上顎洞内をきれいにしてから、穴を塞ぐ処置をします。
外科的には歯ぐきの上側部分をメスで切って骨から穴を開け、上顎洞の部分をきれいにすることもあります。