被せ物ができるまで

 この項目では金属の被せ物(専門的には冠(かん)、あるいはクラウン)ができるまでの手順を説明します。金属の詰め物の場合も同様の手順で製作します。

 歯を削った後、型取りをします。既成のトレー(型取りの枠)を使用することもありますが、より精密に型取りするためには、歯を削る前に既成のトレーで型取りをし、カスタムメイドでその人の口にあったトレーを作っておくこともあります。
 また、削った歯と歯ぐきの境目がしっかりとわかるように、歯と歯ぐきの間に糸を入れて、一時的に歯ぐきを歯から少し離した状態にしてから型取りをすることもあります。これは歯肉圧排(しにくあっぱい)と言います。
 型取りの後に、模型がどの位置でかみ合うかわかるように、上下のかみ合わせの型もとります。

 型取りしたものに石膏を流し込みます。固まったらトレーから石膏を外します。被せ物を作る側では、より硬い石膏を用います。

 模型をかみ合わせを再現する器械に取り付けます。専門的には咬合器(こうごうき)と言います。削った歯の部分には事前に細工をしておき、模型から取り外せるようにしておきます。模型の外す予定の部分にピンを埋め込んでおき、石膏で咬合器に固定した後、歯と歯の間部分を小さなノコギリで切って分割します。取り外すことで、歯と歯の間部分の形などをきちんと作ることができます。

 ワックスで歯の形を作ります。ワックスを溶かして模型に盛り、大まかな形にしてから彫刻していきます。終了したらワックスにスプルー線と呼ばれるピンをつけ、模型から外し、円錐台(えんすいだい)と呼ばれるゴム枠に移します。
 円錐台に鋳造リングと呼ばれる金属製の中空リングを取り付けます。金属は溶けたものが固まる際には収縮しますので、その分補償する必要があります。これはリングの中に流し込む石膏系の埋没材(まいぼつざい)が加熱時に膨張することで補われます。しかし、金属製のリング内で膨張したのでは、ワックス部分の形は小さくなってしまいますので、外側に向かって膨張できるように、アスベストリボンと呼ばれる緩衝材をリングの内面に巻いておきます。
 実際に、材料の収縮と膨張を最終的にゼロにするためには様々なことがありますが、一般向けではないのでここでは省略します。

 埋没材が固まったら、円錐台とスプルー線を取り除きます。
 炉の中に鋳造リングを入れ、ゆっくりと700度まで上げていきます。これは歯の形に作ったワックスを溶かすこと、埋没材を膨張させること、金属を流す際に残っている水分で埋没材が壊れてしまうことを防止することなどの目的があります。
 この後、金属を溶かして円錐台のあった部分から金属を流し込みます。固まったら埋没材の中から金属を取り出します。

 スプルー線の部分で金属をカットし、ワックスで作った形通りにスプルー線の余りを削って修正します。模型上で確認してから研磨します。
 できあがった被せ物を口の中で微調整し、セメントでつけます。

 

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