X線写真と口腔内写真
X線写真
臨床診査と並行して、X線写真も撮影します。これは歯槽骨の吸収がどの程度であるのか判断するのみならず、う蝕(虫歯)や根尖病巣(虫歯から進んで根の先に膿がたまる病気)など、歯周病以外にも歯に関係する疾患をみつける手助けになります。
歯肉縁下プラークから歯槽骨までの距離は約2mmです。したがって、歯肉縁下の処置を行うときに、どの程度の深さまで器具を挿入するかの目安にもなります。スケーリング・ルートプレーニングや歯周外科治療を行うときは、プロービングのデータと共にX線を参考にします。
根と根の間の距離が狭い場合や、隣合った根に沿って同程度に歯肉縁下プラークが入り込んでいる場合、水平型の骨吸収になります。歯肉縁下プラークを取り除きやすいため、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)で治癒しやすいといえます。
根と根の間が広く、片方にだけ歯肉縁下プラークが深く入り込んでいる場合、垂直型の骨吸収になります。3次元的には複雑な形態であることが多く、歯肉縁下プラークをきちんと除去できないことが多くなります。SRPで治癒しない場合は、歯周外科治療により、明視下で歯肉縁下プラークを除去します。
水平型の骨吸収 垂直型の骨吸収
エックス線写真は標準型(デンタル)(小型のフィルムで何枚か撮影する)またはオルソパントモ型(パントモ; 回転式パノラマ撮影法の一種)(1枚ですべての歯を撮影する)を選択します。パントモは簡単かつ短時間で済みますが、歯や歯槽骨の詳しい像は得られにくいという欠点があります。ちなみに、歯周病学会の認定医を取得するためには、デンタルで撮影していなければいけません。
(デンタルの10枚法)
(パントモ)
上のふたつは同一の患者さんですが、デンタルの方がパントモと比べて、細部がよく分かります。
臨床診査の数値のみでは、歯肉の色や形態を表すことが難しい場合があります。口腔内(=こうくうない)写真を撮影することにより、数値化しずらいデータを残すことができます。
上記のX線写真と同じ患者さんです。歯周基本治療まで終了したところです。
治療の経過を追うことにより、患者さんも視覚的にどのように治っていったかを把握することができます。
左が初診時、右が歯周基本治療終了時です。正面観では乳頭部歯肉の炎症が消退しています。上顎咬合面観では口蓋側の炎症の消退に伴って、前歯部にみられた空隙が閉鎖してきています(矯正や咬合治療は行っていません)。今後、歯周外科手術を行う予定です。
口腔内写真の撮影には、口角鉤(=こうかくこう; 下の写真で半透明の器具。唇の両角に当てて、歯がみえるようにする)やワイドミラーを用います。
最終更新2013.1.3