本を出します

 来月、暴力団に関する本を出します。
 自分の本の宣伝をすることには迷いもありましたが、アマゾンで暴力団関係の本を検索していたところ、私の本が「予約受付中」ということで既に掲載されていました。紀伊國屋のウェブストアも同様でした。
 あまり、こそこそするのは嫌いなので、ここで触れておきたいと思います。
 本の題名は「県警VS暴力団~刑事がみたヤクザの真実」です。
 元々は「ヤクザ・暴力団の真実」という表題を考えておりました。今回はプロの意見に従いました。
 構成も、第一部で暴力団(ヤクザ)と警察の暴力団対策の歴史を、第二部で暴力団の現状と課題とに触れ、個人的なことはあまり書かないつもりでした。最終的には編集者、出版社のご意見を汲んで第一部で暴力団、特に工藤會との個人的な関わりを中心に福岡県警の暴力団対策を、第二部で暴力団の現状と課題を書きました。
 暴力団に関する本については以前から是非書きたいと思っていました。その理由は、本ネットの「暴追ネット福岡について」に書いたとおりです。暴力団に関しては暴力団の内部闘争や抗争事件は描かれても、 彼らの資金源の実態、そして暴力団の卑劣な暴力事件の被害者、組織のために心ならずもそれら暴力事件を敢行した暴力団員らについて触れられることはほとんどないからです。
 もちろん「刑事がみたヤクザの真実」とあるように、あくまでも暴力団対策に関わってきた一警察官の視点から見た「ヤクザ」「暴力団」です。
 暴力団は確実にその勢力を減らしています。しかし今のままなら、今後もしぶとく生き続けるだろうと思っています。
 その理由は、社会に根強く「ヤクザ」を容認する意識が残っていること、そして警察による取締りの武器が依然として限られていることです。
 定年退職後、地元の出版社から声を掛けていただきました。ありがたいことですが、著名人ならともかく、福岡県警の元警察官が福岡で本を出しても、あまり読んでは貰えないでしょう。折角の声かけでしたがお断りしました。
 今回、何人もの方々にご協力をいただき、文藝春秋から出版することとなりました。
 元警察官が本を出すとことについては、色々の受け取り方、考え方があるでしょう。
 本書にも書いていますが、私が担当していた当時、何十件もの襲撃事件が発生しました。私が担当を外れた後、平成26年9月以降の工藤會集中取締りにより、工藤會トップ以下の主要幹部が検挙、起訴され、一部の実行犯らは既に有罪が確定しています。
 私が直接担当していた当時は多くの事件が未検挙でした。まさしく「やられっぱなし」といってもよい状況でした。
 「敗軍の将は兵を語らず」という言葉があります。偉そうに暴力団を語る資格はない、と言われても仕方ないかもしれません。
 もちろん、私は工藤會に「勝った」などとは思っていません。ただ「負けた」とも思っていません。それは、現場で戦ってきた捜査幹部、捜査員、警察官、そして何よりも市民、行政の地道な努力を知っているからです。
 弁解がましいことを書きましたが、5月20日、文藝春秋の文春新書として出版予定です。

     令和2年4月19日(土)