オリンピックと暴力団

 今年2月、毎日新聞に『五輪控え「自重」通達 関東の6団体、摘発強化を警戒か』という記事が掲載されました。「通達」を発出したのは、住吉会、稲川会等、関東主要暴力団6団体で作る「関東親睦会」です。
 その内容は、東京都内をはじめ暴力団による発砲事件が続いたことを受け、来年の東京オリンピック、パラリンピックに向け、銃器の使用を自重し、「今後発砲事件が起こらぬ様」各団体で指導教育を行うというものだそうです。
 福岡県の暴力団ではまず考えられないことですが、過去、山口組と山口組から分裂した一和会の抗争に際しても、昭和60年7月、神戸市でユニバーシアードが開催された際に、一時、休戦が行われたことがあります。また、平成14年にワールドカップが開催された際には、山口組が組員に対し「間違事等の問題を起こさない様」指示しています。
 山口組は、現在、六代目山口組、神戸山口組、任侠山口組の3団体に分裂し、互に「抗争状態」にあります。
 全国的には最近でも、相手側幹部方等に拳銃を撃ち込んだり、拳銃や刃物で襲撃する事件などが散発的に発生しています。ただ、全国で死者25名、負傷者70名に及んだ山口組と一和会との抗争や、無関係の市民1名を含む14名の死者、負傷者13名を出した道仁会と九州政道会(現・浪川会)との抗争に比べると、隔世の感があります。
 この道仁会と浪川会の抗争ですが、平成24年12月、両団体が特定抗争指定暴力団に指定されると、ピタッと止まりました。そして、翌年6月には、両団体が福岡県警に対し「抗争の終結」と「九州政道会の解散」を宣言する文書を提出し、抗争は終結しました。
 これは、もちろん、市民にこれ以上の迷惑をかけないためではありません。特定抗争指定暴力団として指定されると、暴力団事務所の使用が禁止されたり、一定数の暴力団員が集まるだけで検挙されるという大きなデメリットがあったからです。そして、「解散」を宣言した九州政道会は、浪川会と名を変え活動を続けています。
 「仁侠団体」を標榜する暴力団ですが、市民に対し卑劣な暴力を繰り返してきた工藤會と関係を絶とうとする暴力団はどこにもありません。組織的暴力、その威力を背景に存在を続けてきたのが暴力団です。そして、暴力団は自らの存在を賭け常に学んでいます。関東親睦会の通達もその一環にすぎません。
 暴力団壊滅へは未だ道半ばです。暴力団の存在しない福岡県を目指し、引き続き、みな様のご支援、ご協力をお願いいたします。  


 令和元年8月「県民の絆」第54号(福岡県暴力追放運動推進センター)より