暴力団壊滅?

 以前、『仁義なき戦い』などヤクザ実録映画路線で一世を風靡した東映が再び、暴力団とそれを取り締まる警察官を描いた映画をシリーズ化するようです。
 本年上映された第一作『狐狼の血』は、暴力団対策法制定前、広島県の架空の都市を舞台に、抗争を繰り広げる二つの暴力団、そして、それを取り締まる型破りの刑事の活躍を描いています。原作は、柚月裕子さんの同名の小説で、25万部のベストセラーになっているそうです。
 小説の中で、主人公の大上刑事が新人刑事にこう語ります。「世の中から暴力団はなくなりゃァせんよ」、「わしらの役目はのう、ヤクザが堅気に迷惑かけんよう、目を光らしとることじゃ」。
 私は、現役当時、工藤會を担当していました。15年前までは、大上と同じようなことを考えていました。それは、工藤會は簡単には壊滅しない、工藤會が市民にこれ以上、迷惑を掛けないよう、押さえ込むしかない。平成15年8月、工藤會組員によるクラブ襲撃事件で、女性従業員12人が重軽傷を負う事件が発生しました。以後、考えを改めました。たとえ困難でも、工藤會は壊滅を目指すしかない、でなければ、同じような事件が繰り返される。工藤會を壊滅することは叶いませんでした。その後も、工藤會による市民に対する凶悪事件が繰り返されました。
 イタリアのマフィア対策に貢献し、1992年5月、マフィアに暗殺されたジョヴァンニ・ファルコーネ検事が次のように語っています。「当然ながらわれわれは、今後、長期にわたってマフィアタイプの組織犯罪と対決しなければならない。長期とはいっても、永遠にではない。マフィアは人間の現象であり、人間の現象のつねで、はじまりがあれば、展開があり、したがって終わりもあることになる」(注)。
 暴力団壊滅へは未だ道半ばです。しかし、人間の現象である暴力団にも、必ず終わりがあると確信しています。暴力団の存在しない福岡県を目指し、引き続き、みな様のご支援、ご協力をお願いいたします。


 平成30年6月「県民の絆」第54号(福岡県暴力追放運動推進センター)より

【注】