2025年6月のミステリ
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タイタン・ノワール
TAITANIUM NOIR
2023年 ニック・ハーカウェイ著 酒井昭伸訳 早川書房 488頁
あらすじ
T7療法が発明され、ひとは若返り寿命はのび療法を繰り返すと始皇帝が渇望した不死さえ手に入れられる世になる。
が、巨額の費用がかかり受けられるのはひと握りだけ。ステファン・トンファミスカを頂点とするファミリーとその他ごく一部。数はおよそ二千。
薬剤を投与されると成長期がふたたび訪れ体が1.5倍ほどでかくなりタイタンと呼ばれる。
トンファミスカ・ファミリーのひとりが元カノの偏屈探偵キャル・サウンダー。
その特殊な経歴からタイタンが絡んだもめごとには警察のコンサルタントとなり仕事を丸投げされる。
感想
くだけた訳でユーモアもあり、訳がとってもいい。訳者で本を選ぶのもありかもと思う。
ヤメ刑事ではなく、アルコール依存者でもなく、結構勤勉な探偵さん(でも元カノのことは引きずっている)が相手にするのは、ちまたの権力者セレブを遥かに越えたタイタン。これが特色の王道探偵物語。
これでいいん? という結末であり、マルクス兄弟の謎はううううーんやったけど、探偵がパンくずを拾いながらてくてく歩く道で遭遇する輩が個性的。面白い。
あっちに寄りこっちに寄りと長い旅なもんで「どこで拾ったパンくずだっけ?」と二度読む。読みでがあった。
到底かないそうもない相手との捨て身の格闘も迫力がある。
作者はジョン・ル・カレの息子さんだそうです。
★★★★
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