うるう秒と車線変更

地球は酔っぱらい」でとりあげた前回のうるう秒挿入から3年ぶりの2009年元旦にまたうるう秒が挿入されるというニュース、 賑わっています。

このニュースを聞いて思うことありませんか?
そう、「3年しか経ってないのにまた?」
というのと
「挿入だけで削除はないの?」
という疑問です。

「地球の自転がフラフラしているなら、今回1秒挿入せず何年か待っていれば、わざわざまた1秒削除しなくて済むのでは? それが3年経ってまた挿入ということは、よほど自転は遅くなる一方で, もう我慢できないということなのか?」
と思うわけです。

この状況、何かに似ていませんか?
そう、渋滞時に隣の車線の方が速いとき、いつ車線変更するかという状況と似ています。
「いま焦って車線変更する必要はない。ヘタに乗り換えるとかえってそっちの方が遅くなる」
「しかし、うーん、いつまで待っても隣の方が速いなぁ。もうしびれを切らしそう」
というわけで国際地球回転事業(IERS)はしびれを切らしたのでしょうか?
(株の売り買いのタイミングの方がピンと来る人はそれでもいいでしょう。)

総務省の報道発表には「原子時計に基づく時刻を天文時と0.9秒以上ずれないように調整を行った時刻を世界の標準時として使うことにしています。今回の「うるう秒」の調整も地球の公転・自転に基づく時刻とのずれが0.9秒に近づいたために行われるものです」とあります。しびれを切らしたのでなく機械的に決めているように見える文章ですが、0.9秒に「近づいたために」というところが、「そこでグッと我慢すれば、戻ってくるかもしれないのに。来年は削除ということになるかもしれないよ」と思わせます。

そこでもう少し突っ込んでみると、どうやらそんなことはないようです。 うるう秒実施日一覧というページを見てみましょう。 明らかに地球自転は遅くなる一方です。 これなら、今入れてもすぐ削除ということにはならないことがわかります。 (しかし地球の自転がもっとフラフラして、「今年入れるべきか?」で国際地球回転事業の会議が紛糾すると面白いのに?)

ちなみに車線変更の問題、 隣が速くなったことにハッと気づいてから乗り換えるのでは逆効果で、 むしろ「隣の方が遅い」ときに機をうかがい、 「いま隣の方が速い状態に転じた」瞬間に乗り換える、 ということを繰り返すのが最良でしょう。 ただし株価と同じで、 サインカーブみたいに上下動を繰り返すならこれでもいいのですが、 停留点だらけだとうまく行かないでしょう。
(などということを考えながら運転していますが、理論通りに行動しているわけではなく、おとなしいドライバーです。車線変更ばかりしている落ち着きのない車と私とでそう差はつきません。)

[最終稿:2008年12月14日]


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