文学shortコラム (アメリカ文学)


リアリズムからナチュラリズム


 以前紹介したように、エマソンをはじめとする トランセンデンタリズム(transcendentalism / 超絶主義) を主柱にして、ロマンティシズムは文学の中心となり、アメリカ文学はヨーロッパ大陸から独立します。その次ぎに起きた文学潮流が、リアリズムでした。リアリズム文学は、社会問題や政治問題を取り上げ、実際に起きる普通の事柄をありのままに描きましたが、そこには作家の倫理観が反映されていました。前回紹介したマーク・トウェインもリアリズム文学に文体の上で大きく貢献しています。

 19世紀の終わり頃のアメリカは、農業から工業へという社会情勢の変化にともない、農村が衰退し、都市が繁栄していくという激動の時代でした。このような変化に影響され、作家たちは今までは目が向けられなかった題材、つまり、性、売春婦、自由恋愛、貧困などを対象にして作品を書いていくようになります。こうしてナチュラリズムが文学の主流になっていきます。ここには、人間社会の一切の現象は、原因と結果において、必然的な関係があるとする決定論の考え方がありました。

 ナチュラリズムの作家たちは、クロードベルナールの「実験医学論」を元にした、ゾラの「実験小説論」(1880)に大きく影響されています。ゾラはこの本の中で「人間は遺伝により特色づけられ、その運命は個人の能力を越えた自然の掟によって決定されているため、小説家は実験室で実験を観察する医者のように社会現象を観察することだ」と述べています。

 この考えはダーウィンの「種の起源」(1859)に大きな影響を受けています。この時代は、ダーウィンの「活力のあるもの、健康なもの、幸福なものが生き残り、繁栄する」というソーシャル・ダーウィミズムが社会にも適用され、競争を正当化する理論となっていました。こうしてアメリカ社会は激しい競争社会となり、さまざまなひずみが生まれていきます。

 ナチュラリズムの代表的な作家にはドライサー(1871-1945)がいますが、彼については後で触れます。




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