伊豆シーカヤック三昧の日々
2004/8/8〜8/13
大島横断を無事に完漕した後、下田在住のシーカヤッカー土屋さんの
出迎えを受けた。それが全ての始まり。成り行きで、はくけい堂治療院に
居候し、こんなに長い間、伊豆に滞在することになろうとは…
§
8月8日
カヤックを積んだジムニーで、コインランドリーを目指す。
しばらくの滞在のために、たった3枚しかない着替えを洗濯する必要があるのだ。
洗濯後、カヤッキングポイントを探しながら、伊豆西海岸を走る。
この時期、どの海岸も駐車料金を徴収する。
無料のところはないのかなーと、せこい事を考えながら走ってたら、
今日は漕がなくてもいいか、という気持ちになってくる。
睡魔も襲ってきたので、宿(?)に引き返すことに。
コンビニ昼食後、昼寝。飛ぶように時間が過ぎ、土屋さんが仕事から戻る。
畑仕事に誘われたので、軽い気持ちでついて行く。
共同で畑を借り、野菜を栽培しているらしいのだ。
僕の仕事は、未開墾地の雑草の除去。
鍬をつかって、軽く土を掘り起こしながら、雑草を取り除いてゆく。
炎天下で、滝のように汗が流れる。
正直、きつ過ぎる作業だった。大島横断よりもしんどい。
少し前に見た映画、「深呼吸の必要」を思い出した。
畑から戻って、入田浜で泳ぎ、かき氷を食す。
正しい夏休みの姿。
§
8月9日
はるばる千葉からやって来たチグゾーさんと、床屋の遠藤さん、
土屋さんと一緒に、小浦ツーリングに行く。
絶好のお天気で、遠藤さんお手製の冷製パスタも、めちゃ美味しい。
隣りで、密漁(?)していたカップルからもらったブダイのガーリック焼きも
美味しかった。食後のロール練習では、長年未完成だったロールが
あっさり成功して、僕自身が一番驚いた。
ロール失敗の最大の原因は、カヤックより体が先に上がってしまうこと。
小浦の海は綺麗なので、安心して体を残したまま、カヤックを起こす
ことが出来たのだろう。成功した理由は、そんなところ?
小浦からの帰り道、蓮畑に立ち寄る。
夕刻であり、蓮の花は、その花びらを閉じていたが、蓮畑は壮観だった。
年間2万人もの人が、ここに立ち寄るという話も、なんとなくうなづける。
夜は、チグゾーさんの歓迎会/誕生会に、おまけで僕がついていき、
PBJ(プライベート・ビーチ・ジャッカーズ)の皆さんと飲み会。
昼間の4人に加え、横川さん、のりゆきさん、ひでちかさん(間違って
たらごめんなさい)の7人で飲む。幼なじみとか、同級生って、転校ばかり
だった僕の知らない世界なので、うらやましい限り。
はくけい堂に戻って、少し飲みなおす。
土屋さんから、鋭い一言をもらい、ドキッとする。
いままでサボってきた人生を、考え直さなければいけないと痛感した夜だった。
§
8月10日
今日は、チグゾーさんと、岩地から漕ぎ出すことになっていた。
その前に、昨日見逃した蓮の花を見に行くことに。
蓮の花は、しっかりとその花びらを開いていて、ちょっと感激。
晴れた青い空と、蓮の緑の葉のコントラストも美しい。
岩地に到着したのは、10時をとっくに過ぎた頃だっただろうか?
駐車場は当然のように一杯で、車を止める所もなく、
最奥の駐車場で、カヤックだけでも降ろさせてもらえるように交渉する。
駐車場のおっちゃんは、気の毒に思ったのか、何とか駐車スペースを
見つけてくれた。顔はいかついけど、とってもいい人でした。
無事にカヤックを海に降ろし、チグゾーさんの案内で雲見方面に向けて出艇。
ダイビングスポットにもなっている雲見海岸手前の入り江で、
シュノーケリングを楽しんだ後は、海のすぐそばにある露天風呂で体を暖める。
なにしろ、最高のロケーションなのだ。
今まで、なんで、こんなにいい所を知らなかったのか不思議なくらい。
お昼時になったので、隣りの雲見海岸に移動する。
昼食は、手抜きして海の家。昨日のBBQとは雲泥の差…。
昼食後、くじら館に行ってみる。
売店の1階で入館料300円を払うと、ところ天がサービスで付いてくる。
むせ返りながらところ天を完食し、2階の展示場へ。
そこには、セミクジラの骨格が、どーんと吊り下げてあり、圧倒される。
この骨格標本は、その昔、雲見に迷い込んで命を落としたセミクジラのもの。
そういうことを考えると、なんとなく悲しい気もする。
雲見から、さらに南を目指して出艇するも、うねりの高さにビビリ、
すぐに引き返す。千貫門は、またの機会にお預けとなりました。
毎度のことながら、引き際の難しさ…。
その日は、チグゾーさんお薦めの弓ヶ浜の銭湯で汗を流し、帰路に。
夜は、さんかぶ(?)というお店で、磯料理。
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8月11日
弓ヶ浜カヌースクール(代表、塩島さん)のツアーに急きょ参加することに。
塩島さんとの待ち合わせ場所である小稲の駐車場(無料)へと向かう。
早速、艇を塩島さんの車に載せ換え、他のお客さん3人と一緒に、一路小浦へ。
車中では、島渡りのお話を聞かせてもらう。
取材で大島を往復したり、「式根島まで行っちゃいました」と笑いながら
話す塩島さんに、ただただ感服するばかり。
小浦につくと、今日のメインゲスト白洲さんが現れる。
後で聞いた話では、ツーリングルートは、ベテランコースに設定されていたとか。
今回のルートは、ひとりでは(恐らく複数のパーティーでも)、決して行こうとは
思わない海況であり、そんな海況の中、石廊崎を超えることが出来たのは
非常に貴重な経験だったと思う。一見して、頼りない塩島パドルも、思いのほか
強力な推進力が得られることに驚き、ちょっと欲しくなった。
コースは、さすがにベテランコースらしく、こんなとこ通るのかーとか、
こんなとこに上陸するの?という驚きの連続で、楽しめました。
それでも、何箇所かは、うねりの高さで、上陸を諦めたようです。
ちなみに、この日唯一の沈脱者は、この私です…。
夜、栃木のシーカヤッカー大塚さんがやって来た。
昨年の5月以来の再会だったけど、なんだか成長した様子の大塚さん。
自分もがんばらなきゃなと、痛感した夜でした。
この日、僕は酔いつぶれました。
§
8月12日
早朝、チグゾーさんが帰宅するのを見送り、二度寝。
今日は、小稲から出艇し、大塚さんとツーリング。
まずは、石廊崎方面に時間の許す限り漕ぎ、引き返して、
入田浜方面を目指すが、昨日の寝不足のせいで、漕いでいても眠くて仕方ない。
朝4時まで飲んでいたという大塚さんは、僕よりも、はるかに眠いのだろう。
漕ぎ手が止まって、流されている姿を何度か目撃した。
どうしようもなく眠いので、一旦弓ヶ浜に上陸し、一眠りする。
なんとなく、気力が復活したところで、再び入田を目指す。
途中、サンドスキー場の前を通る。
斜面に砂が舞い上げられて出来たと思われる、不思議な光景に見とれる。
ゴールの入田浜は、サーファーも多くいることから分かるように、
結構波が高く、下手に近づくと、波に乗せられて危険だ。
安全な場所はないかと探していたら、漁港らしき場所があったので上陸。
だがしかし、そこは隣りの多々戸浜で、それを知っていた大塚さんは
海上で待っていてくれる。結局は、波が弱い入田浜の一番西側から
上陸し、艇をはくけい堂まで運ぶことに。
上陸地点では、サウスウィンドのお客さんである真田さんと名乗る方に出会う。
ウィンドスターのお二人とも知り合いだとか。
真田さんの話では、入田浜の西端は、その昔漁船が出ていたところであり、
海底が深く掘り下げられているらしいのだ。だから、波も弱い。
唯一のカヤック上陸ポイントだとか。
夕食は、何度目かの正直で、磯路へ。金目の煮付けは美味かったけど、
大塚さんは、本当は万宝に行きたかったみたいです…。
§
8月13日
小浦から出艇し、単独で雲見方面を目指す。
若干うねりが高いかなと思いつつ、波勝崎に向かって漕ぎ続ける。
約1時間後、波勝を回り込んだところにある、ごろた石の海岸に到着。
サルや、観光客の冷たい視線を浴びつつ、一休み。
ここまで来るのに、思いのほか時間が掛かり、少し焦りを感じていた。
だから、雲見までの片道ツーリングにしようと決めた。
千貫門を目指し、出艇。
さらに、1時間ほど漕いで、ようやく到着した。
予備知識が全くなかったので、その姿に感激し、波が高いのを
少しは気にしつつも、千貫門をくぐって、入り江に入ってしまった。
これが、失敗…
その直後、目の前に壁の様にそそり立つ高波に飲まれて沈脱。
そして、そのまま船もろとも、岩場に叩きつけられた。
何度か、出艇を試みるが、波の高さはカヤック限界を完全に超えており、
出艇しては波に押し戻され、カヤックが「ゴンゴン」と音を立てて石にぶつかる。
陸に引き上げようとするも、バウ側の隔壁がないフリーウォーターは、
完全に水舟となっており、びくともしない。
ビルジポンプで排水している間にも、波は情け容赦なく襲ってくる。
また、そうしてるうちにも、満ちて来る潮で逃げ場所がどんどん狭くなってくる…。
怖い。
このままだと、艇を捨てていくことになってしまう。
思わず天を仰いだ。
そして、出艇を断念した。
何とかカヤックを陸に引き上げた。
そして、カヤックを担いで遊歩道を歩き、約30分の山越えをする。
山を越えたところには、懐かしい日常の姿があった。
道路を通る車の音、民家の姿に、心底ホッとした。
温泉旅館せきさん(千貫門に一番近い宿)にお願いし、カヤックを預かってもらう。
女将さんに聞くと、小浦行きのバスは、今の時間(15時前だった)は
走ってないので、タクシーしかないとのことで、タクシー会社の連絡先を聞く。
連絡してみると、松崎料金とか、回送料金やらで、6千円以上になるとか。
タクシー代をケチった僕は、雲見温泉から、
車を置いてきた小浦まで、徒歩で行ってみることに…。
歩き始めて、すぐに、ランナーの姿に気が付くが、すぐに前方に消えて見えなくなった。
数キロ歩いて、とあるオートキャンプ場に着いたら、先ほどのランナー氏が休憩中だった。
あるマラソン大会(200kmマラソン?)のトレーニングのためだという氏は、
その日の朝、清水からフェリーで土肥に入り、伊豆半島をぐるっと西回りし、
熱海まで走るという。世の中には、すごい人がいるもんだと感心!
走ることが、本当に好きなんだろうと思った。
そして、単純な僕が、触発されたことは言うまでもない。
この人に出会わなければ、小浦までの13kmを、完歩出来なかったかも知れない。
不思議な出会いだった。
結局、小浦には2時間で行ける見込みが、最初の沈脱時に痛めた足のせいか、
3時間も掛かってしまう。その後、小浦から雲見に戻るのには、
車で僅か20分しか掛かりませんでした…。
この一件で、気持ちが折れてしまったことと、
打ち身から来る若干の筋肉痛のせいで、長い伊豆滞在を打ち切り、帰宅することに決めました。
昨年の5月に続き、今回の件は、またもやいい教訓となりました。
長い滞在を支えて(?)下さった土屋さんに感謝しつつ、深夜の伊豆を後にしました…。
了
〜後日談〜
後で、サウスウィンドの石田さんに聞いた話では、西伊豆は上陸ポイントが
非常に少ないので、きっちり海況をつかんで、計画的に漕がないと遭難する
こともあるとのことでした。また、海が荒れて、上陸せざるを得ない状況でも、
上陸したポイントによっては、道路から大きく離れていたりするので、自分
自身の帰還や、その後の艇の回収が非常に困難になることもあるそうです。
気をつけましょう…。