Evolve power amplifiers 
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TOKIN

TKS45F323

 

S I T P-P

60W+60W

Power

Amplifier

 

 

SITはドレイン内部抵抗が低い3極真空管型特性の素子であるため、パワーアンプの出力段に用いるとNFBに頼らなくても低い出力インピーダンスが得られます。その上、入力抵抗が高くドライブにパワーを要さないので極めてシンプルな回路でパワーアンプを構築できます。

SITは1950年に東北大学西澤教授らによって提案されました。通常接合型電界効果トランジスタ(JFET)は、空乏層によってチャネルに流れる電流を制御してトランジスタ特性を得ていますが、チャネルが長いため、チャネル抵抗(ソース抵抗)が高く、オン抵抗が大きく、動作速度も遅くなります。またドレイン電圧が空乏層に作用する負帰還効果により電流が飽和します。そこで、チャネルを短くし、チャネル抵抗を極限まで減少させると、負帰還効果が起きず、電流が飽和しない”3極真空管型特性”を得ることができます。この効果が静電誘導効果で、これを利用したトランジスタを静電誘導型トランジスタ(Static Induction Transistor SIT)といいます。SITは低損失、高速動作、低歪み等の特徴を持っています。

 

トーキンのSIT  形名TKS45F323

(株)ヒノ・オーディオhinoudio@crocus.ocn.ne.jpより 、ペア選別特性データ―付き1ペア¥60,000のものを、2ペア購入しました。
1個が¥30,000、1ペアで¥60,000、2ペア買うと¥120,000もする高額パーツです。
これはパイロット生産ゆえ需要が増えて本格量産となれば価格も下がるだろうと期待しましたが、残念なことにトーキン既にSITの生産から撤退してい ます。

SITのデータ

1, SITの特徴

2. アンプ回路例

3. ロードライン例

4. 最大定格

5. 電気的特性

6. VD-ID特性1

7. VD-ID特性2

8. VD-ID特性3

9. トーキンのカタログ

TKS45F323 の外形


フランジは電極と非導通

おまけ:廃案回路


SITの出力段

SITの最大ドレイン電流が4Aと小さいために、OTLでローインピーダンスのスピーカーを負荷とする場合には大出力は無理ですが、最大ドレイン電圧が450Vもある ため、負荷インピーダンスを高くして高電圧動作させることが可能です。
そこでマッチングトランスを使うSEPP回路も検討しましたが、信号過程が複雑になるし、 何より高価で貴重なSITを壊すことがないように、冒険を避け、できるだけ無難な道を選び、シンプルに出力トランスを使う普通のプッシュプル回路としました。
負荷インピーダンスの変動を考慮して標準負荷時の最大ドレイン電流は最大定格の1/4以下とすることにして、500Ω位の出力トランスを使い、およそ電源電圧150Vで60Wの出力 を目標としました。

出力トランス

出力トランスは市販の50〜100Wクラスの中から、1次側インピーダンスが500Ω前後で使用可能な、スウェーデンのトランスメーカーLUNDAHL社の LL1627 P-Pが、アムトランスから入手できるためこれに決定しました。

LUNDAHLのホームページ http://www.lundahl.se/index.html
LL1627 P-Pのデータシート http://www.lundahl.se/pdfs/datash/1620_3_7.pdf
アムトランスのホームページ http://www.amtrans.co.jp/index.shtml

このトランスは1次側が4個、2次側が8個の独立した巻線で端子に引き出されているので、端子の接続の仕方で1次側と2次側の巻数比を様々に設定できるため、1次側巻線 を2個づつ並列接続し、2次側巻線は4個づつ並列接続して用いました。

端子接続を下図に示します。1次側の接続はデータシートに在りませんが、2次側はBの接続です。
端子番号は取付枠を基準に定めてあり、巻線構成など詳細はデータシートを参照願います。
巻線の直流抵抗は1次側P1-B間とP2-B間が共に7Ω、2次側OUT-GND間が0.2Ωです。

巻数比を調べるために無負荷で電圧比の測定を行いました。
それによると、2次側に1V発生する時の1次側の電圧が8.2Vだったので、1次側対2次側の巻数比は8.2対1であり、2次側に8Ω負荷した時の1次側インピーダンスは538Ωとなります。

合わせて実測した周波数特性を下図に示します。

LUNDAHL LL1627 P-P

 

端子の接続

 

周波数特性(1次側電圧2.72V 一定、2次側8Ω負荷)

 
SITの動作点

電源電圧160V、SIT1個当たりのアイドリング電流50mAと定め、B級PP動作であるため出力トランス1次側のインピーダンス538Ωの1/4の134.5Ωのロードラインを 、下図のようにSITの特性図上に引いてみました。

TKS45F323のB級PP動作特性

動作点は VDS=160V  ID=50mA 特性図から動作点のバイアス電圧は VGS= -7.6V である。
信号電圧によってVGS= 0Vまでスイングした場合、RL=134.5Ω のロードラインとVGS= 0V ラインとの交点はVDS=25V  ID=1050mA であるから、最大出力は概算で PO=(160-25)2/134.5/2=68 [W] となる。
動作点における3定数を特性図から求めると μ=24  rd=133Ω  gm=0.18S 位。


SIT使用上の主な問題点と対策

問題点

対策

μが高いため僅かなバイアス電圧の変化でアイドリング電流が大きく変動する 温度係数の小さい金属箔抵抗を部分的に使用
ドレイン内部抵抗が低いために電源電圧の変化でドレイン電流が大きく変動する PSDC(電源ドリフトキャンセル回路)を採用
電極間の静電容量が大きいために高い周波数では大きなドライブパワーを要する エミッタフォロワでドライブする
ドレイン電流0.2A以下では正の温度係数となる トランジスタのVBEの温度特性で補償する
異常発振の可能性 特に認められなっかった
電極が薄板状で機械的強度がない 基板に電極を固定する

PSDC回路

PSDCはPower supply drift cancellation circuit の略であり、ドレイン内部抵抗の低いSITのために考案した電源のドリフト電圧に対してドレイン電流の変化をなくす回路です。

SITのドレイン・ソース間は等価的に見ると、ゲート・ソース間電圧vgsのμ倍の電圧源とドレイン内部抵抗rdの直列回路であるから、そこに電源ドリフト電圧vdが加わると、ドレイン電流idがvdによって変化し、負荷抵抗RLに生じる出力電圧voに影響を与える。
下図のように、RLとrdでvdを分圧しているのだから、RLに比べてrdが小さいほどvoになるvdの割合が大きくなる。

vo=(vd-(-vgsμ))RL/(rd+RL)であるから、-vgsμ=vdであれば vo=0 となり、voはvdの影響をまったく受け ない。
下図で一目瞭然、vdが在っても同じvdでバランスしていればidはなくvoは生じない。

-vgsμ=vdとするにはvgs=-vd/μにする。
即ちSITのゲート・ソース間に電源ドリフト電圧の1/μを位相反転して加えればよい。

外乱要素であるvdを制御信号とするこのような制御方法を フィードフォワード制御という。
もしフィードバック制御で同様の事を行うには、ドレイン電流から信号成分を引き算してドリフト成分のみを検出し、それが0になるように制御する。この場合、外乱要因を問わずあらゆるドリフトに有効に作用する。しかしドリフト成分を検出することが容易ではない。
この目的にフィードバック制御はフィードフォワード制御ほど簡単ではない。
フィードフォワード制御は予め想定した条件に沿って制御を行うため、想定した条件が狂うと正確な制御結果とならないから、条件が安定であることが重要である。

電源のドリフト電圧とは直流電圧変動やリップル電圧などです。
直流電圧の変動はアイドリング電流に変化を与え、アイドリング電流が減少した場合には歪の増大があり、増加した場合には電力損失が増大して熱破壊に到る危険を生じます。またリップルのような交流電圧 成分は出力にハムノイズとなって現れます。
別の対処方法として電源を定電圧化してvdを減らす手段もありますが、PSDCはアンプ側でvdの影響を消してしまう方式です。
定電圧電源を使う場合と比較すると、”電源利用効率が高い”、”回路が簡単”、”広い電源電圧範囲で安定”といった長所があります。


アンプ回路

回路図を下図に示します。2チャンネルのステレオアンプなので同様の回路がもう1つ使われています。
信号経路は初段デュアルJFETQ1Q2の差動回路と出力段SITQ7,Q8のソース接地PP回路による2段増幅構成です。

初段で直接SITをドライブすることも可能ですが、SITの電極間静電容量が大きいために、できるだけ低いインピーダンスの電圧源でドライブした方が高域特性が向上するので、PchエミッタフォロワQ3,Q4とNchソースフォロワQ5,Q6のコンプリメンタリーバッファでドライブ しました。
Q5,Q6
はVGS=-0.6VでID=3mA程度となるものを使いました。
Q3,Q4
Q7,Q8に熱結合することで、Q3,Q4のVBEがQ7,Q8のバイアス電圧を温度補償します。

出力トランス1次側のアンバランス電流を小さくするために、バランスサーボ回路を装備しました。
Q7,Q8のソース電流を電流検出抵抗R7,R8で検出して、差動回路Q9,Q10とカレントミラーQ11,Q12でアンバランス成分を 抽出増幅し、C6,R5,R6で積分した信号で初段差動回路のDCバランスを制御するフィードバックループです。

PSDCの電源ドリフト電圧検出をQ13が行い、初段差動回路のソース側定電流回路Q15に制御信号を与えます。
JFETQ14による定電流回路はQ5,Q6のバイアス電圧を設定するためのものです。
バランス条件は(R11+R12)/(VR3+R9)=μR2R3/R10(R2+R3)ですが、R11+R12とR10の発熱量が大きいためにその温度変化が大きく、更にそれらの抵抗の温度係数が大きいと抵抗値が大幅に変化するためにアイドリング電流が安定しません。
そこで、R11とR12それからR10に温度係数の小さいアルファの金属箔抵抗を採用し、電源投入から定常状態になる間のアイドリング電流の変化幅を±10%以内にすることができました。

アルファ金属箔抵抗の資料 http://www.alpha-elec.co.jp/pdf-j/register-m/jfl.pdf

出力トランスの高域特性に暴れがないようなので、出力トランス2次側からの6dB未満の軽いオーバーオールNFBで諸特性の改善を図りました。

アンプ回路のパーツリスト

参照名 部品名 型番 仕様 メーカー 形式 入手先 備考
C1 コンデンサー 300V 15pF デップマイカ NTK 若松通商  
C2 コンデンサー 300V 15pF デップマイカ NTK 若松通商  
C3 コンデンサー 400V 0.047μF ポリプロピレン  指月シヅキASC363 若松通商  
C4 コンデンサー 300V 150pF デップマイカ NTK 若松通商  
C5 コンデンサー 50V 100μF アルミ電解デンカイ ELNA ARE  DUOREX U 若松通商  
C6 コンデンサー 6.3V 470μF 無極性アルミ電解 BlackGateNX 若松通商  
C7 コンデンサー 250V 1μF ポリエステルMP 日通工 MMD アルプス無線パーツ  
C8 コンデンサー 50V 1μF 積層セラミック 不明 アルプス無線パーツ  
C9 コンデンサー 50V 1μF 積層セラミック 不明 アルプス無線パーツ  
Q1 FET 2SK389 Q2とデュアル TOSHIBA サトー電気  
Q2 FET 2SK389 Q1とデュアル TOSHIBA サトー電気  
Q3 トランジスター 2SA1191   HITICHI 若松通商  
Q4 トランジスター 2SA1191   HITICHI 若松通商  
Q5 FET 2SK246 BL   TOSHIBA 若松通商 ランク BL
Q6 FET 2SK246 BL   TOSHIBA 若松通商 ランク BL
Q7 SIT TKS45F323 Q8とマッチドペア TOKIN ヒノオーディオ  
Q8 SIT TKS45F323 Q7とマッチドペア TOKIN ヒノオーディオ  
Q9 トランジスター 2SA1349 Q10とデュアル TOSHIBA サトー電気  
Q10 トランジスター 2SA1349 Q9とデュアル TOSHIBA サトー電気  
Q11 トランジスター 2SC3381 Q12とデュアル TOSHIBA サトー電気  
Q12 トランジスター 2SC3381 Q11とデュアル TOSHIBA サトー電気  
Q13 トランジスター 2SA1191   HITICHI 若松通商  
Q14 FET 2SK30ATM GR   TOSHIBA 若松通商 ランク GR
Q15 トランジスター 2SC2856   HITICHI 若松通商  
R1 抵抗 1/4W 100kΩ 金属皮膜   アルプス無線パーツ  
R2 抵抗 1/4W 3.6kΩ 金属皮膜   アルプス無線パーツ ランク X,B
R3 抵抗 1/4W 3.6kΩ 金属皮膜   アルプス無線パーツ ランク X,B
R4 抵抗 3W 22Ω 酸化金属皮膜   アルプス無線パーツ ランク X,B
R5 抵抗 1/2W 2.2kΩ カーボン   アルプス無線パーツ  
R6 抵抗 1/4W 100Ω 金属皮膜   アルプス無線パーツ  
R7 抵抗 1/4W 2kΩ 金属皮膜   アルプス無線パーツ  
R8 抵抗 1/4W 2kΩ 金属皮膜   アルプス無線パーツ  
R9 抵抗 1/4W 11kΩ 金属皮膜   アルプス無線パーツ  
R10 抵抗 1/4W 2.7kΩ 金属箔 アルファ FLC 若松通商 ランク X,B
R11 抵抗 1/4W 82kΩ 金属箔 アルファ FLC 若松通商 ランク X,B
R12 抵抗 1/4W 100kΩ 金属箔 アルファ FLC 若松通商 ランク X,B
R13 抵抗 1/4W5.6kΩ 金属皮膜   アルプス無線パーツ  
VR1 半固定抵抗 20Ω CT-6P 20 コパル電子 エリスショップ  
VR2 半固定抵抗 50Ω CT-6P 50 コパル電子 エリスショップ  
VR3 半固定抵抗 2kΩ 6φサーメット   アルプス無線パーツ  
VR4 半固定抵抗 5kΩ 6φサーメット   アルプス無線パーツ  
T1 出力トランス LL1627/P-P カットコアトランス LUNDAHL アムトランス  

電源回路

回路図を下図に示します。これで2つのアンプ回路の電源を賄います。

電源回路のパーツリスト

参照名 部品名 型番 仕様 メーカー 形式 入手先 備考
C10 コンデンサー 200V 1400μF アルミ電解 日本ケミコン 藤商電子  
C11 コンデンサー 200V 1400μF アルミ電解 日本ケミコン 藤商電子  
C12 コンデンサー 50V 1000μF アルミ電解 ELNA ARE  DUOREX U 若松通商  
C13 コンデンサー 50V 1000μF アルミ電解 ELNA ARE  DUOREX U 若松通商  
C14 コンデンサー 50V 1000μF アルミ電解 ELNA ARE  DUOREX U 若松通商  
D1 ダイオード FMG34S D2とカソードコモン サンケン 若松通商  
D2 ダイオード FMG34S D1とカソードコモン サンケン 若松通商  
D3 ダイオード 2B4B41 ブリッジ D3〜6 TOSHIBA アルプス無線パーツ  
D4 ダイオード 2B4B41 ブリッジ D3〜6 TOSHIBA アルプス無線パーツ  
D5 ダイオード 2B4B41 ブリッジ D3〜6 TOSHIBA アルプス無線パーツ  
D6 ダイオード 2B4B41 ブリッジ D3〜6 TOSHIBA アルプス無線パーツ  
D7 ダイオード 10DF2   日本インター 若松通商  
D8 ダイオード 10DF2   日本インター 若松通商  
F 電源ヒューズ 4A     アルプス無線パーツ  
PL パイロットランプ 110V 抵抗付ネオン サトーパーツ アルプス無線パーツ  
PS 電源スイッチ   S-2A 日本開閉器 アルプス無線パーツ  
T2 電源トランス RA300-016 Rコアトランス フェニックス フェニックス 特注

SITの取り付け方

基板とSITとヒートシンクの三位一体とし、基板にSITの電極を固定した。

SITは熱を拡散するためのデフューザに直付けし、デフューザとヒートシンクの間に絶縁シートを入れて、SITからヒートシンクまでの熱抵抗が小さくなるように工夫した。

基板の製作

SITの取付位置を正確にするため、配線する前に基板とSITと放熱器をネジで共締めし位置合わせした状態で、SITを基板にホットボンドで仮止めしました。

ドライブ段のトランジスタはSITと熱結合するために、基板の裏に取り付けてデフューザに押し付けます。

シリコンゴムシートを挟んでデフューザをヒートシンクに取り付けた様子。
この上にシリコンコンパウンドを塗布したSITを取り付けます。
デフューザは厚さ5mm、幅50mmのアルミ引き抜き材を長さ50mmに切ったものですが、SITと密着するように表面を油砥石で平らに研磨しました。
放熱器は、B級動作の場合大出力時の一時的な大きい発熱が吸収できるように、表面積が広くて熱抵抗が低いことよりも、肉が厚くて重量のある熱容量が大きなものを選択 しました。


ケースの製作

事前の実験で電源トランスと出力トランスをどれくらい離せば、電源トランスから出る磁力線を出力トランスが拾わないようにできるか試して、 トランスの向きにもよるが、10cm以上ならばほとんど影響ないと分かったので、電源トランスと出力トランスの間にその大きさのヒートシンクを配置することにしました。
ヒートシンクはジャンク品に適当なものがあったのでそれを使いました。
ヒートシンクのフィンを内側に向けて取り付けることで、回路基板を両サイドに持って行き、基板上のトリマーの調整がやり易くなるように配慮しました。

3mm厚アルミアングルでフレームを作り、その前後に3mm厚、上と左右サイドに2mm厚のアルミ板を取り付ける構造です。

ケースのサイドパネルを取りはずすと基板が顔を出すので、トリマーを容易に調整できます。

ヒートシンクを中央に配置して電源トランスと出力トランスの距離を離す配置です。

電源トランスへの配線は、ヒートシンクを向かい合わせた部分の5mm程の隙間に通しました。

両サイドに跨る補強アングルの穴は軽量化のためではなく通気のためです。

ヒートシンクを内向きに取り付けたため、側面への輻射による放熱は望めません。頼るのは煙突効果だけですが、発熱量が少ないためか僅かしか温まらないので 、夏場に様子を見てアイドリング電流を増やすことを検討します。

ケースの高さをヒートシンクに合わせることも考えましたが、ケースの内部がスカスカになるのは面白くないので、トランスの高さで誂えました。
造りはタカチのOSケースの真似です。 ケースから突き出すヒートシンクをデザインのアクセントにしたかったけれど、ヒートシンクがジャンク品であるため傷やら不要な穴が見っとも無くてボロ隠しにカバーを付け ました。

 

 

調整方法

最初はVR1中央、VR2中央、VR3最大、VR4最小として、入力に発信器からサイン波1kHz100mV程度を与え、出力端子に8Ωダミーロードを接続して、出力電圧をオシロスコープとミリボルトメーターで観測する準備をする。
SITのアイドリング電流は、出力トランス1次巻線直流抵抗の7Ωによる電圧降下を測定して求めるので、出力トランスP1端子またはP2端子とB端子間に電圧計を接続、またDCバランスをチェックするための電圧計をP1端子とP2端子に接続、それと各電源電圧が監視できるように電圧計を接続する。

AC電源をスライダックを使って徐々に電圧を上げながら、各電圧計の様子を見る。
AC電源電圧が極低い状態ではSITのバイアス電圧が加わらないためにドレイン電流が最大0.5A程度になりますが、AC電源電圧数V以上になればドレイン電流は減少する。

各電源電圧を確認したら、VR3を徐々に回して、出力トランスのP1端子またはP2端子とB端子間に電圧計の電圧を350mV程度にする。
この時、オシロスコープに出力波形が確認できたら入力信号を0にする。

また、P1端子とP2端子間の電圧が大きい場合には、VR2で0にする。
これでアイドリング電流は50mAとなる。

スライダックでAC電源を10V位下げてアイドリング電流が増えれば、VR3を少し戻してアイドリング電流を減らしVR4アイドリング電流50mAにする。このVR3VR4の操作を繰り返して、AC電源を上げ下げしてもアイドリング電流が変化しないように調整する。

次にVR1で出力のノイズ電圧を最小にする。
この際に、オシロスコープでミリボルトメーターの出力をAC電源周波数をトリガーにして見ながら行うと調整し易い。

最後に再度VR2P1端子とP2端子間の電圧を0Vにする。

最終チェック

電源を一端切り再投入して、設定道理の状態に落ち着くか確認、通電状態のまま、30分置きに2時間ほど様子を見て大きな変化がないことを確認。
ケースや基板などを軽く叩いてノイズが出ないか確認。


SITが高価なために4個しか買えず、スペアを持たず壊したら中止覚悟の綱渡りの製作だったが、一つも壊すことなく無事に完成できたことが何よりでした。


測定データ

入出力特性 (測定周波数 1kHz)

測定数値では50W位から直線から外れ出していますが、波形がソフトにクリップするためにその始まりが分かり難いです。
一応60W位から明らかに波形の頭が丸くなるので60Wをクリップポイントとしておきます。
2.5Vrmsの入力で100Wの出力となりましたが波形は方形波です。

 

周波数特性 0dB=1.25W (1kHz)

ピーク・デップのない素直な特性に仕上がりました。
低域はバランスサーボによって制限され、-3dBポイントは2.2Hz、高域の-3dBポイントは280kHzと広帯域です。

 

歪率特性

残留ノイズ

入力ショート、出力8Ω負荷で、24μV Aフィルター有で、4.5μV


測定中の不手際で貴重なSIT一個(ロットNo.0010)を飛ばしてしまいました。
誤って15Hz 2Vを入力したため、出力トランスが飽和してインダクタンスが低下し負荷インピーダンスが減ったことで、ドレイン電流が異常に増加して1個のSITが破壊しました。

基板からSITを取り外して調べたら、壊れ方はゲート電流がやたら流れるモードです。
ドレイン電流はゲート電圧に反応して変化しますがgmはかなり低下しています。

それと今までフランジはソースにつながっているとばかり思っていましたが、フランジとSIT本体とは絶縁されていて、どの電極とも導通のないことが分かりました。

そんなわけでこのアンプは壊れたSITの交換に止まらず、万全な保護回路を備えると共にアンプ回路に至るまでの全面改修に踏み切ります。


新しいページで再スタートします。

SITさんよ!飛んだ相手がこの私であったことをきっと後悔する時が来るから覚悟しておけ。(意味わかんねえ)