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 高性能電源トランス の必需品
   突入電流防止機能付

  DC成分サプレッサの製作

 

DC成分サプレッサ

アンプの造りが優秀でスピーカーからはノイズが出ないにもかかわらず、電源トランスから発生するウナリ音が大きくて 耳障な時があります。その原因としてAC電源の汚れにDC成分が含まれている場合があります。
特にトロイダルやRコアのように継ぎ目の無いコアはDC成分によって磁気飽和し易いためにその影響が大きく、高性能が故の泣き所となっていました。
そんな折、MJ2003年12月号の『AC電源のDC成分サプレッサーで電源トランスのウナリ防止』 は、 Fig.1のようなブリッジダイオード一個の簡単な回路ですが、確かに効果があり、面白いやり方があるものだと思いました。

[Fig.1] DC成分サプレッサの回路

DC成分を含んだAC電源をダイオードに通して電源トランスに与えると、ダイオードの順方向電圧の作用でダイオードの導通する期間がDC成分の電圧によって変わり、それによって電源トランスに流れるDC成分の電流が減るという理屈です。
電源トランスのDC成分の電流が少なくなる条件は、AC電源に含まれるDC成分が小さい、電源トランスに流れる電流が小さい、、ダイオードの順方向電圧が大きいことです。

突入電流防止機能付

電源トランスの電源投入時 にコアの磁気飽和が原因で発生する突入電流は、理論的に電圧波形の位相角0°の時に電源投入した場合が最大で、90°で電源投入した場合に突入電流はありません。
実際にはコア材の特性や、電源を切ったタイミングによる残留磁束の方向、あるいは電源側のインピーダンスによって突入電流は異なります。
突入電流の最大値は一次巻線の抵抗値によるため、巻線抵抗の少ないトロイダルやRコアのトランスの突入電流は大きく、AC電源を共有する他の機器に与える影響を無くすためにも突入電流を制限する回路が必要とされます。
また通常の電源投入以外にも電源が瞬断した時に突入電流が発生する可能性があります。
そこでDC成分サプレッサと、瞬断に対応した突入電流防止の機能を併せ持つ装置があれば便利だろうと考えました。

突入電流防止は、位相角90°で電源投入する方法は残留磁束があると逆効果になる場合もあるのでやめて、電源と直列の電流制限抵抗で突入電流を抑制し、突入電流が収まるだろう頃合の一定時間後に電流制限抵抗をACスイッチでショートパスするという無難な方法を採用します。これだと電球などにも使うことが可能です。

DC成分サプレッサのブリッジダイオードを、ACスイッチに使うMOS-FETを1個で済ますことと、負荷電流の有無の検出に利用 することで、一粒のブリッジダイオードで3度おいしさを味わえる回路になりました。

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[Fig.2] 突入電流防止機能付きDC成分サプレッサの回路図

電源周波数が60Hzで動作確認できてますが、50Hzによる確認をしてませんので、もし電流制限が解除しない場合は180kΩを220kΩに交換してみてください。
負荷電流が少ないと電流制限抵抗10W47Ωに発生する電圧が小さくて電流制限が解除されません。
実験では負荷電流が正弦波の0.1Apeak未満で 解除しなくなったので、消費電力10W以下の機器に使う場合は電流制限抵抗をより大きな抵抗値に変更する必要があります。
逆に消費電力の大きい機器では電流制限が解除した時に突入電流が発生する可能性があるので、電流制限時の最大電流と定常時の電流がほぼ等しくなるように電流制限抵抗の抵抗値を設定するのが適当と思います。

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[Fig.3] 基板の加工

穴あきプリント基板Sanhayato 288GをFig.3のように切断して穴あけします。大穴は3mm、小穴は2mmです。
銅箔はエッチング液に浸けて除去しましたので実物にはありません。

[Fig.4] 部品の取付


部品をFig.4のような配置で取付ます。
MOS-FETとブリッジダイオードは裏側から放熱面の高さをそろえて取付ます。
ダイオード、フォトカプラの方向を間違えないこと。

 

[Fig.5] 配線


部品のリード線どうしを半田付けしてFig.5のように配線します。
回路図と何度も照らし合わせて間違いのないようにすること。
配線の出っ張りを小さくするためにフォトカプラの足も折り曲げます。

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以下の図は電流制限の動作を確認するために、IN-OUT間とOUT-COM間の電圧波形を見た時のDSO(デジタル・ストレージ・オシロスコープ)の液晶画面を撮影したものです。
垂直軸 上の波形:IN-OUT間の電圧 50V/div
下の波形:OUT-COM間の電圧 100V/div
水平軸 :100ms

[Fig.6] 60W電球

[Fig.7] Rコア電源トランス使用アンプ

振幅の変化を見ると電流制限している時間は300〜400msです。

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瞬断に対する応答を見るためFig.8のように、負荷として22Aの容量の スライダック(トロイダルコア)に60W電球をつないで用い、 瞬断の発生はACプラグをテーブルタップに挿す手加減で行いました。

[Fig.8] 瞬断時の波形観測

[Fig.9] 瞬断時の波形


負荷側電圧波形の左端から100msのところに負側半波分の瞬断状態があることが分かるでしょうか。
その直後に電流制限がかかり突入電流が見事に抑えられています。

[Fig.10]  瞬断時の波形の部分拡大
水平軸0.0E+0がFig.9の100msのところです。3〜4ms持続した 瞬断に反応しています。

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2005/01/28

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