永遠のイスラエル〜エズレル平原
 
Emek of Jezreel
 
 
エズレル平原
 

 
メギド
 


  「全能なる神の大いなる日に戦いをするために、これらの霊はヘブライ語でハルマゲドンという所に王たちを招集した」……ヨハネ黙示録。  

   
ハルマゲドン
聖書が書かれた頃、遺跡の丘ハル・メギドはすでに名高い古戦場でした。メソポタミアやアナトリアからの勢力とエジプトやアラビア半島からの勢力が、ちょうど対峙する地点だったのです。伝記作者たちによって世界最終戦争の舞台として選ばれたのには、そんな歴史的背景があるようです。
   

 
カルメル山
 


  イスラエル第3の都市ハイファを抱くカルメル山は、地中海に面した標高500mあまりの山脈。「神のブドウ園」を意味する名の通りブドウ栽培が盛んで、これを原料としたカルメルワインは隠れた銘品です。日本では手に入れにくいのですが、もし見つけたらぜひ試してみて下さい。  

 
預言者エリヤ
旧約聖書に登場する預言者エリヤは、当時この地方の支配的な宗教であったバアル神の祭司450人と戦い、たったひとりでこれを打ち破りました。持っていた杖をひと振りすると、敵の頭上に雷が降り注いだとのことです。さて、ここで少し考えてみましょう。今でこそ勝ったから何とでも言えますが、もし彼が敗れていたらどうだったでしょう。ガイドさんいわく「誕生間もない新興宗教ユダヤはここで潰えていたでしょうね」。世界の歴史もよっぽど変わっていたはずです。
     
ドゥルーズの街
このあたり一帯には、ユダヤ教徒でもキリスト教徒でもないイスラエル人が住んでいます。その名はドゥルーズ。彼らほど悲惨な民族もまた少ないでしょう。イスラムでありながら異端ゆえに同じアラブの同胞に迫害され、イスラエル市民権を得るも、兵士として対パレスチナの最前線に立つのです。実際、彼らはユダヤ人以上に「イスラエル国民であろう」と努力しているという話をよく聞きます。民族と国家の関係を考えさせられる、貴重な事例です。
 

       
 
カルメル会修道院
エリヤの像があるのはここ。山の頂上に建っているので、展望台からの眺めも最高です。聖書時代から植わっていそうなほど年季の入ったレンズ豆の樹も見どころです。
 
エズレル平原
見渡すかぎり小麦畑や綿花畑が拡がるのどかな田園地帯ですが、世界最終戦争が本当に行われるとすれば、ハル・メギドよりもこの平野においてだろうと言われています。
 
土産物屋
看板娘のお姉さんはドゥルーズ。東洋からの珍客にも親切に応対してくれました。お勧めは民族伝統の織物とのこと。エスニックな小物もなかなか良さげでしたよ。
 

 
ナザレ
 


  世界で最も有名な大工(正確には石大工)の故郷として有名なこの街は、世界中から巡礼の人々がやってくる門前町でもあります。住民の多くがアラブ人キリスト教徒で、しばしば政府との間で緊張関係を生じることもあり、中東和平の現実を肌で知ることができます。  

       
 
受胎告知教会
坂道を登っていくと次第に教会の黒い三角屋根が見えてきます。クリスマスでもないのに通りには星型の豆電球が飾り付けられ、雰囲気を盛り上げていました。
 
福音書の作者
受胎告知教会の建物正面には福音書の作者とされるマタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの4人のレリーフが彫られています。本当にこんな姿をしていたかどうかは怪しいですが。
 
礼拝堂
木造のベンチ、美しくも素朴な絵画など、教会内部は意外なほど落ち着いた空間でした。信仰の深さは豪華さには比例しない、などと言ったらバチカンに怒られるかな。
 

 
裏庭
受胎告知教会と一口に言いますが、敷地全体で見ると一大宗教コンプレックスになっています。聖堂は20世紀に造られた新しい建物ですが、その奥にはビザンチン時代や十字軍時代の教会も残されています。道路に面した聖堂の前庭は狭く圧迫感がありましたが、裏に回るとこの通り、ゆとりのある空間が拡がっていました。どこか寺社の境内に通じる感じがして、朝からの観光で疲れた身には落ち着ける雰囲気です。やっぱり宗教施設はこうでなくちゃ。癒しがないとね。
     
婚礼教会
ナザレの隣村であるカナには、婚礼に招かれたイエスが、祝福のために水をブドウ酒に変える奇跡を行ったとされる場所があります。宗教家イエスの伝道人生において記念すべき最初の奇跡です。このように聖書上有名な事跡が刻まれた地では、その後の常として教会が建てられました。とは言うものの、最初からキリスト教会だったわけではなく、元はユダヤ教のシナゴーグだったようです。建築様式もどことなくカペナウムのユダヤ教会堂に似ています。
 

       
 
ブドウ酒の奇跡
婚礼教会の地下には、イエスがブドウ酒の奇跡を行ったとされる壷があります。ご丁寧に柵で囲って近寄れないようにしています。が、どう見ても新しい最近の壷です。
 
アラブ人の少年
受胎告知教会へと向かう上り坂には、参道らしく商店が軒を連ねていました。その店先で遊んでいた少年。「穢れなき」という表現がぴったりの澄んだ瞳が印象的でした。
 
夕映え
西陽を受け茜色に染まる壁と、ベンガラの朱に塗られた屋根。セピアでなくとも、どこか懐かしさを感じさせます。カナの街並には郷愁を呼び起こす風情があります。
 


   

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