静寂のカンボジア〜プリア・ヴィヒア
 
Preah Vihear(Khao Phra Vihan)
 
 
プリア・ヴィヒア(カオ・プラ・ヴィハーン)
 

  タイ東南部のウボンラチャタニから車で約1時間。長い間ポル・ポト派の拠点だったため立ち入りが許可されず、「幻の遺跡」と呼ばれていましたが、ようやく外国人観光客にも解放されました。11世紀、スルーヤヴァルマン一世により改修されたクメール寺院です。  

 
入口
 


       
 
国境
ジャングルへと降りていく階段の先に、木で枠取っただけのちっぽけな門があります。向こうはカンボジア。そう、ここは紛れもない国境なのです。
 
国籍不明
カンボジア領内に入ったところで子供たちが遊んでいました。土産物屋を営むいくつかの民家もあります。タイ側にしか行けないはずだけど、彼らの国籍はいったいどっち?
 
入山
広場の外れにチケットオフィスがあり、その横には石造りの階段が。プリア・ヴィヒアは山上の遺跡。日本で言うなら香川の金毘羅さんみたいです。
 

 
参道
 


   
ナーガ
遺跡は一本道。南に向かう参道をひたすら登ります。この階段が急なこと。年寄りには辛いだろうな。若者にも辛いけど。で、登りつめたところには巨大なナーガ。首や頭に比べて胴が太く寸詰まりのツチノコみたいです。この辺の蛇はみんなこんな形なんでしょうかね。
   
崩落の美学
第二塔門へ至る階段は崩壊し、大きな石がごろごろ転がっていました。地震のせいか、戦争が原因なのかはわかりませんが、崩れ方が美しく、いかにも「遺跡」という感じでなかなか壮観です。登るのはさすがに危ないので、脇に造られた土の道を迂回して行きます。
   

   
クメール様式
第一塔門。半ば崩れているとはいえ、それでも美しいシルエットに、往年のクメール王朝の栄華がそこはかとなく伝わってきます。ところどころにしか残っていないものの、刻まれた彫刻はやはり優美で繊細。当時の底力を感じさせます。カンボジア国旗がはためいているのも趣がありますね。
   

   
振り返ればそこに
ここらでちょっとひと休み。息も上がってきました。振り返ると入場口ははるか彼方。やっぱりけっこう登ってたんですね。第二塔門からは勾配も緩やかになり、ハイキング気分で気軽に歩いて行けます。でも陽射しが強いので水分はこまめに補給しましょう。特有の嵌め殺し窓を鑑賞する余裕も出てきたぞ。
   

   
横に長い
第三塔門はこの遺跡で唯一、横に拡がった造りをしています。長屋のようですが、実際侍女や官吏の住居として使われていたようです。表からは城壁にも見える外観ですが、裏に回ってみると内部がいくつもの小部屋に分かれている様子がよくわかります。現代で言うと大規模マンションみたいなものか。
 

   
石組みの技術
石組みといえばインカ文明が有名ですが、こちらも負けてはいません。大きさの異なる巨石が、カミソリの刃すら入らないほど精巧に組み合わされていました。接合面を丁寧に研磨しない限り、こんな芸当は無理ですが、それには多大な時間と人手がかかったはず。昔の人ってすごかったんですね。
   

 
中央祠堂
 


       
 
第四塔門より
登りつめると平らな丘が拡がっていました。土台だけが残る第四塔門の先には中央祠堂が。回廊に囲まれたその姿はまるでアンコール・ワットのミニチュアでした。
 
少年僧
祠堂の中央では少年僧がずっと香を炊いていました。ここは今でも現役の寺院なのです。せっかくなので祈祷(?)をしてもらいました。あなありがたや、ありがたや。
 
クメール彫刻
草むらにごろごろしている石材も考古学的には貴重な遺物。それにしては管理が甘くないか? 誰も見てないので簡単に持ち出せるぞ。ポル・ポト派もだいぶ盗んだらしいし。
 

   
絶壁
中央祠堂を抜けるとそこは……。なるほど、これではカンボジア側から入れないわけだ。眼下には今までに見たこともない緑一面のジャングルが拡がっていました。この密林の中にポル・ポト派が最後まで立てこもっていたのです。天気が良ければ遠くトンレサップ湖も望めるそうな。
   

 
内戦の跡
 


       
 
対戦車砲
1998年に最終的に投降するまで、ポル・ポト派は北部国境地帯を拠点にゲリラ戦を展開していました。遺跡周辺の草むらには、彼らが残した武器がまだ転がったままです。
 
洞窟住居
兵士が暮らしていた洞窟もそちらこちらにありました。何しろゲリラ戦でしたからね。地雷も完全には撤去されていないという噂なので深入りは避けましょうね。
 
ヘリコプター
撃墜されたままの姿で放置されていた軍用ヘリ。映画では見たことがありましたが、まさか本物を目にするとは。きっと今は子供たちの遊具になっているんだろうな。
 


   

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