アルエット

 わずか5歳(2006年)にして猿頭寺をも上回る驚異のIQを誇る天才児。新型ガオーマシンの管制システムおよび、ガオファイガーファイナルフュージョン・プログラムを殆ど独力で開発した。2007年現在は、GGGを退きGアイランドシティで母親と共に暮らしている。
 彼女が誕生する以前、母親が入院した病院では秘密結社・バイオネットの手によって極秘裏にとある実験が行なわれていた。それは胎児に遺伝子レベルでの操作を加えることで、人為的に知能、体力を強化した「新人類」を生み出すというものであった。アルエットの母親は何一つ知らされないままにこの実験の被験者にされてしまっていたのだ。この結果、アルエットは生まれながらに高すぎる知能を持った超天才児としてこの世に生を受けたのである。バイオネットは母親には「死産であった」と告げ、母子は引き裂かれた。
 バイオネットによって次世代の兵器開発者として英才養育を受けたアルエットは生後4ヶ月で言葉を理解し、話をすることができていたという。一歳をすぎる頃には既に数ヵ国語をマスターし、難解な学術書の多くを読破していた。が、彼女が4歳になる頃、養育施設はGGGの手によって壊滅し、アルエットは獅子王凱によって保護された。その後間もなく彼女は自らの意志でGGGに加わり、その卓抜した頭脳によってわずか5歳にしてガオファイガー・プロジェクトの中枢を担うようになる。
 5歳児ながら、合理主義者でプライドが高く、孤立を好む。というのも、バイオネットによって英才教育を受ける間にアルエットは自らの生い立ちと、その理由をも正確に理解していた。それゆえか、彼女は知能面のみならず、情緒面においても一般的な5歳児のレベルと明らかに一線を画していた。自らの頭脳に対する絶対的な自信とそれに裏打ちされている責任感とプライド、抜群の論理的思考とそれに基づいた洞察力、判断力、それと同時に5歳児ゆえの自らの肉体的、あるいは社会的限界を悟りきったニヒリズムやシニシズム、周囲の人間と馴れ合うことをしない孤立主義、まだ写真でしか知らない母親への抑圧された思慕、「こどもらしくない自分」、「家族」や「友人」を知らないことへのコンプレックス。そういった感情を複雑に、微妙なバランスで持ち合わせた彼女は、傍目には「生意気な小娘」としか写らない。彼女自身もまたそれでいい、と思う。
 「私は、私の頭脳を使って知恵比べをしているだけ・・・。ゲームみたいなものね。」
 だが、ガオファイガー・プロジェクトに参画し、ガイやミコトらと接するうちにアルエットの気持ちのバランスはわずかに崩れる。ガイやミコトは、彼女を”仲間”や”友達”として接する。アルエットは自分でも気付かないうちに彼らを慕う自分に気付き、戸惑う。天才の自分にも分からない気持ち。ひとの心は不可解だ。
 バイオネットによって新ガオーマシンが奪取され、ガイと共にそれを追ううち、アルエットは衝撃的な出来事に出会う。完璧と信じていた自らのプロテクトが解除されたのである。アルエットのプライドは深く傷ついた。アルエットは自らの「ミス」を償うべく奔走するが、それを嘲笑うかのようにガオーマシンのプロテクトは次々と解除されていく。アルエットは自らを許せなくなっていた。だが、獅子王凱が言う。
 「足りない力をみんなで補い合うのが人間ってもんだろ?」
 その言葉に、おそらくアルエットは生まれてはじめて、知ってはいたけれど使うことなどないと思っていた言葉を口にする。感謝のことば。それはひとが支え合うことの証明なのだと、彼女は知る。
 「絶対見つけてみせるわ。ガオーマシンと命さんを・・・。」
 戦う理由は変わり始める。
 だが、ひとつの戦いが終った時、彼女は戦う力も理由も失う。優れすぎた知能もガイ達と共有した記憶も、アルエットは失ってしまった。それは悲しいことではあるが、彼女にとっては必要なことだったのかもしれない。アルエットは長すぎる5年間を経てようやく本当の望むもの、母親と「そのこどもである自分」を取り戻すことができたのだから。