<”あの時代”のカセットビジョン>

【寺町】 CVは結局40万台でしたっけ?ファミコン以前で一番売れたマシンということですが、大成功ですよね。CVプロジェクトってのは。

【堀江】 そうですね、会社にとっても。

【寺町】 俗にファミコンに競合して負けたとかでひとくくりにされているますけれど。

【堀江】 競合はしていないですね。これはこれで成功した、のと、ファミコンが家庭用テレビにスイッチボックスをつけるんだっという文化を啓蒙したと思うんですよ。こうやってつけるんだっていう(笑)。だから、ファミコン販売の時は、そういう部分は楽だったと思いますよ。

【寺町】 なのに、マスコミはカセットビジョンをほとんど取り上げないんですよね。これは持論なんですが、私は3つの理由があると思うんです。

(1)ファミコンに敗れたマシンなんてメーカー側が語りたいはずがない
(2)今の読者のニーズにあわない
(3)昔のゲームがおもしろくないんで語りたくない。

(1)は偏見です。(2)は実際掲載したが、読者の反応が少なかったって意見もありそうなんですが、先人の書いた記事ってデータの上っ面をなぞっただけのものが多いんですよね。それに「当時にしてはがんばっていた」という視点で見てちゃ、読者だっておもしろくないじゃないですか。
ただ(3)は、私にもわかるんです。つまり、戦後の食料事情と同じなんですよね。オヤジの「ぜいたく言うな。俺が子どもの頃、なんにも食うものがなかったからバッタだって食ったんだぞ」というのと似ているんです。理解はできてもどこか納得できない。「じゃあ、オヤジの時代にピザがあったら、やっぱりオヤジだって食ったじゃねーのか?」って。

クラシックゲームってそれと似ているんですよね。本当は本物のインベーダーがやりたいけど、ガマンしてテレビベーダーやってたって。もう、あんなガマンの時代は嫌だって。実際にカセットビジョンの時代をリアルタイムで経験している人までもが熱中したにも関わらず、いまだ黙殺する根底にはそういうのがあると思うんです。それをかなりやわらげたのがファミコンだったわけです。

で、今回の取材を通して、その当時の事情とかを確認したかったんです。特にどれだけエポック社は切磋琢磨したのかという部分に興味があったんです。

【堀江】 まあ、それほどスゴク気合が入っていたわけでもないんですよ。正直いってね。

【寺町】 そうですね。今回インタビューをさせていただいてそんな印象を受けました。やっぱりカセットビジョンってこの時代のゲーム機なんですよね。持ち上げる必要もないし、だけどネガティブに卑下する必要もない。

【堀江】 僕も前回の取材を受けたりしてからいろいろ考えてみたんですよ。どうして、最近またこれらのマシンが取り上げられるようになってきたのかって。
自分にとっては、手がけたハードではあるけれど、でも引越しの時に捨てちゃうくらいだから(笑)。
今、うちの子どもにやらせてどうかな、とかね。例えば「お父さんがこれつくったんだぞ。すごいだろう」「ああ、そう」なんて話のネタにしかならないのかなって思ったからなんだと(笑)思うんですよね。

でね、そのへん、僕なんか学研の「学習と科学」って好きだったんですよね。ずっと小学生の頃とってて。当時、なかなか豆電球とか薬品とか手に入れ辛いわけですよ。だから、あれがくるとすごくうれしかったんだけど。でも、うちの子どもなんか、小学校の教材の豆電球や電池のセットをもらってきても、捨ててあるんですよ。で「あ〜あ」とか思って拾うわけ。
そういう当時を・・思い出しているんだなと考えたわけ。寺町さんがね、そういう風にCVなどを思うってのは、ある部分でプリンティングというか、小学校の頃ってすごくそういうのがあるんですよね。僕なんか、豆電球見ると「電池入れて点けてああ楽しいな」と思うわけですよ。そういう気持ちがあるのかな・・・と。

そうするとね。今見た場合の性能ってのはね、やっぱりプレステや64と比較するともう全然違うんだけど、当時の楽しかった思い出ってのがね、残っているんだと思うんですよ。 100%そうじゃないとも思うんだけど。

【寺町】 今、おもしろいのは、そういうCVなどをリアルタイムに経験していない若い人からも、オデッセィにアンケートなんかくるんです。隔世遺伝じゃないですけど、昔のものに興味を持つという。

【堀江】 ルーツだね。

【寺町】 ま、日本テレビゲーム史ってのはないですけど、あったとしたら、そこで黙殺されているテレビゲームを出したいわけです。こういう当時のメーカーさんの声を含めて。

長い間おつきあいいただきありがとうございました。ああ、もうとっくに予定時間すぎてますね(苦笑)。すいません。今回は本当にどうもありがとうございました。

(インタビュー・構成:寺町電人)


堀江氏

コーナートップへtop Back to ENTRANCE HALL


<お断り>今回の取材はエポック社のご厚意により、広報活動の一環として実現した特例であり、通常、このような取材に応対されていません。これを無視して行動されることは、エポック社、ならびに筆者に対して多大な迷惑になりますのでお控えください。また、ここに掲載する一切について、エポック社へ問い合わせなさらないでください。