文 / 露埼 紗羽さま
永遠の愛を誓い合った2人。
2人の誓いを見届けて祝福してくれた仲間たち。
生涯にたった1度のその日までの、幸せな2人の軌跡は、
いつまでも色褪せる事なく・・・・・。
「2人の肖像画は描いてもらえる事になっているけど、
何か別の形でも記念に残してあげたいわね」
「そうですねえ。
肖像画・・・というのはとても時間がかかる上に、
たった1枚ですからね。
多分それは宮殿に飾る事になるでしょうし」
ランディとアンジェリークの結婚が決まり、
聖地では、着々と準備が進められている。
出来うる限り自分たちの手をかけて、
最高の結婚式にしてあげたいとの思いから、
この日もまた、守護聖たちによる秘密の作戦会議が開かれていた。
「ルヴァさま、何かいい考えはありませんか?」
「何か・・・ああ! たとえば写真とか?」
「そうそう、それよ!
絵とは違って実際の私達が、そのまま残るんでしょう?
持ち歩けるし、それに同じものが何枚も出来るっていうわ」
「という事は・・・僕達の分も出来るって事?」
「そうなのよ〜。肖像画じゃそうはいかないものね。
写真といえば・・・やっぱり得意分野はゼフェルよね」
「げっ!」
「こらっ!逃げるんじゃないわよ!
出来るでしょ? 出来るわよねえ?
まさか出来ないとは言わせないわよ」
オリヴィエは逃げ出そうとしたゼフェルの腕を間一髪で掴んだ。
その迫力にさすがのゼフェルも降参を余儀なくされる。
「わかったから離せって!
そんなの、オレさまの腕にかかったら朝飯前だぜ。
写真だけでなく、映像だって残せるはずだ」
「まあっ! そうなのっ?
ゼフェル、あんたっていい子〜!
結婚式の記録は任せたわ!」
「って、何でそうなる!」
「だってあんたしかいないじゃない。
ねっ、ゼフェルちゃ〜ん、お願い!」
「うわ〜、やめてくれ! 鳥肌が立つじゃねえか」
「んまっ、失礼ね。
あんたも仲良しのランディと可愛いアンジェちゃんのために
協力しなさいよ!」
「誰が仲良しだ!」
「ねえねえ、ランディとアンジェに子どもが出来たら、
その子たちも写真とか見る事になるんだよね。
パパとママの結婚式はこうだったのって、
お話して聞かせてあげるんだね。いいな〜」
「そうよ。それに私達にとっても同じ。
いつか離れ離れになっても、それは手元に残るんだわ。
こんな素敵な事ってある? というわけで、決まりねっ!」
「ゼフェル、責任重大ですねー」
「おい! まだやるって返事してねえぞ!」
「やるに決まってるじゃないの。親友のためなんだから」
「だから違うって!」
「2人の一生に一度の記念すべき幸せな日が、
宇宙で一番腕のいいカメラマンによって残されるのよ」
「宇宙で一番・・・」
その言葉が功を奏したのか、メカ好きの血が騒いだのかは謎だが、
ゼフェルはその数日後には、高性能に改造した、
自作のムービーカメラを手にしていた。
「オレさまの自信作、ムービーはもちろん、
後で好きなシーンを切り取って、写真にも出来る代物だ」
「すごーい! ちゃんと左利き仕様になってるんだね。
ゼフェル、何だかんだ言って張り切ってるじゃない」
「やるからには徹底しないと気が済まねーんだよ!
だいたい、考えてみろよ、あの2人だぜ!
絶対面白い絵が山ほど撮れるぞ」
「うふふっ、そうかも。
結婚式が終わるまで、密着ドキュメントってやつだね。
そうだ! 僕、助手になる!」
「よし、あいつらから目を離すなよ」
「うん!」
その日から、ランディとアンジェリークは有無を言わさず、
カメラに追われる身となったが、
当惑したのは最初だけで、一緒に楽しんでいる様子が伺えた。
こうして迎えた晴れの一日。
結婚式が終わった後の記念撮影の為に、
ゼフェルはもう一台のとっておきのカメラを据えていた。
「ゼフェル、今度はこっちのカメラなの?」
「記念写真は専用のカメラの方がいいだろう。
ムービーは回しっぱなしにしとけば映像も残るしな」
「さすがだね」
「まあな。ああ、やっと来たぜ。遅ーぞ」
式を終えたばかりの2人がようやく部屋に入って来る。
ランディに手を取られて、頬を紅潮させている、
ドレス姿のアンジェリークがとても初々しい。
「だって、花びらとお米がいっぱいで。
髪の毛やドレスを直すのが大変だったのよ。
ねえ、ランディさま」
「たくさん祝福してもらったからね。
ゼフェル、待たせて悪かったよ。よろしく頼むよ」
「わかったから、さっさと、そこに立て!」
「このへんでいいのかな?」
ランディは花嫁をエスコートして、
立ち位置を確認する。
「ああ。オレさまに撮ってもらえるのをありがたく思えよ!
本人よりもよく撮ってやる・・・って聞いてやしねえし」
気がつくと2人は見つめ合っていて、
その回りには甘い空気が漂っている。
すっかり2人だけの世界が出来上がっている様子に、
ゼフェルが呆れて毒づいた。
「何だか改まると緊張しちゃうな」
「そうね。あっ、ランディさま、襟が曲がっているわ。
直してあげる」
「ありがとう、アンジェ」
「・・・・・・」
「ん、どうかした?」
「素敵だなって思って・・・」
「アンジェだって、すごく可愛いよ」
「ランディさま・・・」
「こら、そこっ! いい加減にしろ!
ったく宇宙一のバカっぷるだぜ」
「アンジェリーク、ブーケを忘れちゃダメじゃない」
「ああっ、いけない! ごめんなさい、ロザリア」
「ランディさまに見とれているからよ」
「うふふっ」
幸せのオーラがいっぱいの2人の写真を撮り終えた後は、
全員揃っての集合写真となる。
「待ってました〜!
ゼフェル、私のコト、美しく撮ってちょーだいねっ!」
「オリヴィエ、花嫁より目立ってどうする」
「あら、オスカー、いいじゃない。
あんたはどさくさに紛れてアンジェちゃんにくっつかないの!
ランディ、花嫁さんをちゃんとガードするのよ」
「ねえ、ゼフェルはどうするの?」
「別にオレは入らなくたっていんだけどよ、
あいつらが絶対にダメだって言うから、
ちゃんとセルフタイマーを準備したさ。
ったくめんどくせえよな」
「当然でしょう。1人だけパスするなんて許されないわ。
ましてランディとは仲良しのあんたなんだから」
「だから違うって! ほら、ごちゃごちゃ言ってねえで並べ。
ああ、もう、ちゃんとバランスよく並んでくれよ」
「ロザリア、今日は一段と美しいな」
「オスカーさま、いつの間にロザリアの隣に!?」
「美しい女性に惹きつけられるのは当然の事さ」
「オスカー、どさくさに紛れて何を言ってるんですか?」
「大丈夫ですわ、ルヴァさま。
わたくし、相手にはしておりませんから」
「さすがロザリアですね。
オスカーの扱い方を心得ていて」
「リュミエール、俺を何だと思ってるんだ」
「さあ、あなたはこちらにいらして下さいな」
「何で俺がこんな端っこに!」
周りの喧騒に呆れたゼフェルはため息をつきながら、
目に映るシーンを収めてしまえとばかりに、
手当たり次第にシャッターを押し始めたが、
アンジェリークにピントが合った所でギョッとする。
「おいっ、こらっ、泣くな!
ランディ、おめーのだろ! 何とかしろ!」
「えっ! あ、アンジェ、いつの間に!?」
「だって、だって、こうしてみんな一緒に・・・って思ったら、
嬉しくて、いつの間にか涙が・・・」
「泣かないで。ほら、涙を拭いて」
「うっ、うっ・・・ランディさま・・・」
「わーん、よかったね、ランディ、アンジェ」
「わっ、マルセルまで、何泣いてんだよ!」
「僕、僕、アンジェを見てたら僕まで嬉しくなって、
もらい泣きしちゃったよぅ」
「おやおや、大変ですねぇ」
「だーっ、これじゃ、いつになったら撮れるかわかりゃしねえ!」
「ああ〜、アンジェちゃん、それじゃダメよ!
そんなに思いきり泣いたら目が腫れちゃうじゃないのっ!
とにかくメイクをやり直さなくちゃ! 一時中断よ、中断〜!」
しばらくして、落ち着きを取り戻したアンジェリークと、
花嫁を気遣うランディを中心に、全員がようやく揃った。
「今度こそ一発で決めろよ!
オレにも限界ってもんがあるからな」
「ねえ、写真を撮る時に言う言葉があったよね。
えっと何だっけ?」
「確かチーズとかバターとかショートケーキとか?」
「何で食いもんばっか」
「あら、今はこの言葉しかないじゃない。
ハッピーって」
「そっか〜! じゃ、オリヴィエさま、掛け声をかけてね」
「げ、マジかよ」
「了解〜! ゼフェルもちゃんとこっちに来るのよっ!」
ゼフェルがファインダーを覗くと、今までに見たことのない、
幸せそうな笑顔のアンジェリークがそこにいた。
その幸せな花嫁の視線の先をレンズで追うと、
アンジェリークを包み込むような優しい笑顔のランディがいる。
「・・・ったく相変わらずな2人だな。
でも、まあ、よくここまで頑張ったよな。
今日はおめーらが主役だから、
とびっきりの記念写真を撮ってやるぜ」
ゼフェルは心の中でそう呟いた。
「ゼフェル、本当にご苦労さまでしたねー。
いい記録が残せたじゃないですか。
さすがですねえ」
出来上がった映像と写真を持参したゼフェルは、
ルヴァにそう言われて、まんざらでもない様子だった。
「まあな。最高傑作が完成したんじゃねーか?
何たって、このオレさまの撮影と編集の腕前だからな」
「私とマルセルも頑張ったのよね」
「オリヴィエはああしろ、こーしろって騒いでただけじゃねーか。
聖地の風景を入れるのだって、
あそこへ行け、ここへ行けってうるさいのなんの」
「あら、2人が愛を育んだ思い出いっぱいの場所を、
代わりに辿ってあげただけじゃない」
「オレは丸一日引きずりまわされて、疲れ果てたぞ」
「ゼフェル、あの日はぐったりしてたよね」
「編集だって、どこをチョイスするかはセンスの問題よ。
でも、どれもこれも残しておきたいシーンばかりだったわね。
お式だって、期待を裏切らずって感じだったものね〜。
ホント、アンジェちゃんたら可愛いんだから」
「笑いあり、涙ありの本当にいいお式でしたね」
「それに、結婚式までもいろいろあったよね。
アンジェがケーキの練習をしている所なんか、
クリームだらけになったりして、大変だったんだよね」
「ロザリアのスパルタっぷりもバッチリだぜ。
ランディは見てねーから、後で目を回すんじゃねーか?」
「まあ、スパルタだなんて人聞きが悪い。
愛情を込めた指導と言って欲しいですわ。
でも、そんな所まで入っているなんて思いませんでしたわ」
「いいじゃないですか。貴重な想い出になりますよ」
「アンジェもランディだけの所は見てないんだよね。
オスカーさまににわけのわからない新郎の心得なんて
諭されたりしてたよね。今思い出しても吹き出しちゃう」
「目を白黒してたよな。衣装を試着した時も、
あいつ、慣れないタイを結ぶのに四苦八苦してたぜ」
「私達が一人一人コメントしたのも知らないのよ。
あの2人、見たら驚くわよ」
「もしかしたら泣くかもしんねーぞ」
「うんうん。こっそり見てみたいね」
「写真もこんなにたくさんあるんですねぇ」
「ええ。これからアルバムを作りますわ。
メディアと一緒に綺麗にラッピングをして、
2人に贈りましょうね」
「ロザリア、僕も手伝うよ!」
「私も。写真にはコメントとかいっぱいつけて、
楽しいアルバムにしてあげましょうよ」
「賛成〜!」
「きっと、2人は喜んでくれますよ」
こうして、一生に一度の想い出が2人に届けられた。
結婚式までのはちゃめちゃぶりが余すところなく納められた映像と、
幸せの瞬間が凝縮されたたくさんの写真に彩られたアルバムは、
2人にとってかけがえのない宝物となった事は言うまでもない。
聖地を去った後のランディとアンジェリークの住まいにも、
記念の写真はいつまでも大切に飾られていて、
毎年の結婚記念日には、アルバムと映像を見ながら、
その日を懐かしく思い返していたとか。
fin.
'06年秋に発行された露崎さんの本の、表紙絵のご褒美&私のBDにと またしてもおねだりして書いていただいた あまーいあまーーーいラブラブな2人の結婚の日の1コマのお話です(*^^*) 本の内容はランディ様とアンジェの在位中の結婚式のお話で、 聖地での 守護聖の仲間達に見守られながらの温か〜いウエディングに アンジェならずともランリモファンは感激ですねv そして、永遠の『ばかップル』である 甘々なふたりの記録… ゼフェル様の撮った写真とムービーを 私も是非拝見したいものです(笑) 紗羽りん、幸せ満開のお話をどうもありがとうー! 同じ表紙絵の全体はこちらから |
露埼さんのサイトはこちらv(本の通販情報もあります)→![]() |
07/03/30up