5秒間のrepose

文 / 露埼 紗羽 さま









「陛下、ただいま戻りました。」

「ご苦労さまでした、ランディ。」


ランディは女王陛下の執務室に足を運んでいた。
風のサクリアの解放の為に6日間、ユーイの説得に丸1日と、
続けざまに聖地を留守にする事が続いた。
自分たちの宇宙の事ならまだしも、
別の宇宙のために離れ離れで動いていたのだから、
このところ、お互いの顔を見ることはおろか、
2人でゆっくりと過ごす時間など、持てるはずもなかった。
しかし、ユーイが風の守護聖になる事をついに決意したので、
自分に課せられた仕事は果たしたのだ。
これからもますます忙しくなるだろうが、
今しばらくは向こうに煩わされる事もないだろう。

ひととおりの報告を済ませたランディは、
自分の帰るべき場所にやっと戻って来れたという
気持ちでいっぱいになった。
アンジェリークの笑顔を見て心からホッとすると。
畏まった口調も自然にいつもどおりに戻ってしまう。


「俺がいない間、変わったことは何もなかった?」

「ええ、大丈夫よ、ランディさま。」

「疲れていないかい?」


アンジェリークも忙しい日々が続いているはずである。
いつもの執務だけでも大変だろうに、それに加えて、
大きな変化に直面しているあちらの宇宙のために、
心を砕いている事もランディにはよくわかっていた。
今までのように逢えない淋しさを自分以上に感じている事だって、
手に取るようにわかってしまう。
それなのに自分に心配をかけまいと、そんな素振りは見せずに、
今だっていつもどおりの笑顔で迎えてくれたアンジェリークを、
ランディはますます愛しく想う。
今にも抱きしめてしまいたい気持ちをぐっと抑えた。

なのに唐突に。


「ランディさま、そんな事より忘れていない?」

「え?」


目の前のアンジェリークは瞳を閉じて、
さくら色にほんのり色づいたくちびるを、
心持ち上向き加減にしてみせる。


「な、何?」

「ただいまのキ・ス。」

「ええっ!?
だって、ここ・・・執務室だよ?」

「誰も入ってこない奥の部屋じゃない。
それにロザリアだって気を利かせて席をはずしてくれたのよ?」

「そ、そうなのかな?
でもアンジェ、今は執務時間中だし・・・。」


確かに何よりも先にアンジェリークの顔を見たかったのは
本当だけれど、今は報告の為にこちらにやって来たのだ。
奔り出しそうな想いをやっとの事で抑えているのに・・・。
ランディの気持ちはぐらぐらと揺れ動く。

さらに追い討ちをかけるようにアンジェリークの言葉。


「それじゃ執務は・・・ほんのちょっとだけ休憩!」

「アンジェ? 今日はどうしちゃったの?」


アンジェリークにしてみても、ランディを困らせるつもりなど毛頭ない。
どうしたのかと問われても、今は何故か気持ちが先走ってしまう。


「1分だけ・・・30秒でも・・・ううん、10秒、5秒でもいいの。
それならいいでしょう?」

「うーん・・・しょうがないなぁ。じゃ、5秒だけだぞ。」


そんなふうに甘えられてしまったら、ランディに勝ち目はあるはずもない。
ランディの両の手のひらがアンジェリークの薔薇色の頬を包んだ。
その手に、アンジェリークの手が添えられる。
離したくないというように、細い指を重ね合わせる。
自分の姿を映し出すお互いの瞳を、覗き込むように見つめ合う。


「ただいま、アンジェ。」

「ランディさま、お帰りなさい。」


嬉しそうにふんわりと微笑んだ天使は、
ゆっくりと瞳を閉じて愛する人のくちびるを待つ。
顔を近づけるランディを甘い香りが包み込んだ。
触れ合う寸前のくちびるに、かすかな吐息がかかる。
柔らかな髪がそっと震える。
愛する人への想いが溢れ出して止まらない。


・・・・・私だけのランディさま・・・・・


くちびるを合わせた瞬間に、
今までの淋しさや、こうしてやっと逢えた事の嬉しさ、
アンジェリークの中のそうしたすべての想いが
自分に流れ込んで来るのをランディは感じた。
愛しくて、切なくて、アンジェリークのすべてを受け止めてあげたくて。


・・・・・俺のアンジェリーク・・・・・


久しぶりの甘いキスに、2人は夢中になってしまう。
くちびるをほどいた後も、抱き合ってお互いを確かめ合う。



たった5秒で済まなかった事はいうまでもなく・・・。


「時間をオーバーしたのはランディさまよ?」


腕の中にすっぽりと抱きしめられた天使は、
幸せそうな瞳で愛する人を見上げると、
悪戯っぽく微笑んだ。
                          fin.







このお話は アンジェの新作ゲームエトワールが発売になった後に
EDスチルの話題で盛り上がり描いた私のラクガキに露埼さんがつけてくださったものです♪
合言葉は『エトワール・リベンジ!』 でした(笑)

執務に励む2人の 日常の一コマ。
なのに なんて甘々で、こちらまで幸せな気分にさせてくれますよねvvv
出張での疲れを労わりつつ、キスをおねだりするアンジェ、相変わらず可愛い(*^^*)
離れていた時間を埋めるのは『5秒』ではとても足りないのをアンジェは知ってておねだりしていたのか?
きっと、アンジェの方が上手(うわて)ですね(笑)
この、ランディの、アンジェにメロメロで 敵わない様がいつもながら可愛くて可愛くて
まさしくツボをギュギュッとついてくれます。あ〜、気持ちいい(笑)
そしてもちろん、この可愛い2人が可愛く甘々している様が、こちらをメロメロさせてくれますvvv
露埼さん、いつもいつも素敵なお話をありがとう〜!
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04/06/11up