文 ・ 露埼 紗羽 さま






さらさらと
優しくそよぐ風

きらきらと
零れ落ちる木漏れ日

ゆるゆると
柔らかな時間が流れる

静かな森の湖





ねえ、見て また、あの子がやって来た

この場所が余程気に入ってるみたいだね
でも、今日は今にも泣きそうな瞳をしている

また何か失敗でもしちゃったのかしら?

大丈夫 すぐに笑顔を取り戻せるはずさ

どうして?

すぐに待ち人が来るから

滝にお祈りをする?
あの子が思い浮かべる相手は・・・

決まってるじゃないか ほら

お祈りなんかしなくても
ここはもう 2人の約束の場所みたい






「アンジェリーク!」

「ランディさま。」

「またここに来ていたのかい?」

「ええ。」





あの笑顔 見てご覧よ

本当に嬉しそう ね 彼の方も見て!

ああ 照れくさそうだけど やっぱり嬉しそうだ
でもじれったいな 早く気持ちを伝えればいいのに

自分たちでも気がつかないうちに
どんどん気持ちは惹かれ合っているのにね

でもさ、人の事は言えないよ
憶えてるかい?

ええ・・・忘れるわけないじゃない
あなたと私も・・・・

想いを伝えるまで
ずいぶん時間がかかったような気がする

恥ずかしくてお互いになかなか言えなくて

でも、どんどん綺麗になる君を
誰にも取られたくなくて

私の心は 最初からあなたにしか向いていなかったのに
あの時 本当に嬉しかった

意を決して言ったんだぞ



   えっと・・・・俺、君のことが
・・・・その・・・好きなんだ



「よかった。やっと言えた。」

「私も・・・私も好きです。ランディさま・・・」

「アンジェ・・・ずっと一緒にいたい。
君の笑顔を誰よりもそばで見ていたい。」

「はい・・・。」





ふふ・・・あの2人 また一緒に来たわ
見て! 手を繋いでる!
あんなに緊張して

2人とも真っ赤だね
まるで昔の俺たちを見ているみたいだ

私 あなたの一言一言に 悩んだり 喜んだり

俺だって
そういえば喧嘩した事もあったよね

そう 泣いたり 笑ったり

君のくるくる変わる表情が可愛くて

今でも?





もちろん 今でも

あの子たちも これから・・・

ああ やっと想いを通じ合えたんだから
もっともっと幸せになってもらわないとね

ねえ あの2人のために

そうだね ささやかな贈りものをしようか

2人の笑顔が輝くように




「ランディさま、見て!
滝の水しぶきに虹が!」

「アンジェ、そんなにはしゃいじゃ危ないよ!」

「だってこんなに綺麗!
ランディさまも来て! ほら!」

「ああっ、そんなに近づいて。服が濡れても知らないぞ。」

「大丈夫よ。こんなに近くで見たのは初めて!」

「うん。俺も。アンジェと一緒に見ることが出来てよかったよ。」

「ねえ、ここに来るととても落ち着くのは何故かしら。
初めてここに来た時からそうなの。」

「アンジェもそう感じていたのかい?」

「ええ。とても温かくて、懐かしいような。」

「この場所には不思議な力があるのかもしれないね。」





あの子たち 感じてくれているのかな?

ああ 意識はしていなくても
多分 記憶の底で
それに あの2人はここで出逢ったんだ
惹かれ合い愛し合って結ばれる運命なんだよ
だからこれから先も何があっても大丈夫

そうね 必ず幸せになれるわ

そうさ だってあの2人は
俺と君との分身なんだから


その声は湖に柔らかく溶け込んでいく




「アンジェ・・・」

「なあに、ランディさま?」

「もし、君が女王になったとしても・・・」


聴こえるのはかすかな小鳥のさえずりと、滝の水音。
森の湖は見つめ合う2人を見守るように包み込む。
優しく、そして穏やかに。


fin.


露埼さんの新刊の表紙を描いたら、そのイラストに
素敵なSSを書いてくださいました〜〜!(なんて役得!)
出会う前からきっと結ばれる運命のふたり…
そして森の湖で結ばれたふたりの魂はそこに宿っているのでしょうか(*^^*)
はう〜、神秘的で素敵です♪
いつもの可愛いさと、神秘的な空気と…私の拙い挿絵から
こんな広がりを生み出せるなんて流石ですー!どうもありがとうございました!
露埼さんのサイトはこちらv→











04/03/28up