文 / 露埼紗羽 様







「もう、知らない!
ランディ様のわからずや!」

「君こそ!」


きっかけは、ほんの些細な事。
ちょっとした言葉の行き違い。


・・・・・どうしてこんな事になっちゃったんだろう・・・・・

・・・・・こんなはずじゃなかったのに・・・・・


2人はため息をつく。







「お嬢ちゃん、どうしたんだ? 憂いを含んだ表情も一段と綺麗だな。」

「オスカー様、からかわないで下さい。」

「ランディと喧嘩でもしたのか?」

「・・・・・」

「こりゃ図星だったか。ランディのヤツ、女心をわかってないな。
だから坊やだって言うんだ。俺ならお嬢ちゃんを泣かせたりしないぜ。」

「ランディ様は坊やなんかじゃありません!
それに、私泣いたりしてません!」

「これはこれは・・・あはは・・・すまなかった。
どうだ? たまには気分転換に俺がお嬢ちゃんをエスコートしてやるが?」

「けっこうです!」


・・・・・オスカー様ったら、どうしてランディ様の事を子ども扱いするのかしら?
    ランディ様はあんなに素敵で優しいのに・・・って、私たちケンカ中なんだっけ・・・・・






「ランディ、どうしたの?ボーッとして。」

「オリヴィエ様。」

「わかった、アンジェちゃんと喧嘩したんでしょ?」


一気にどんよりと落ち込んだ様子のランディを見て、
オリヴィエは冗談で言った事が、本当だという事に気づく。


「珍しいわね。あんなに仲良しのあんたたちが。
ああ、どおりで・・・」

「え?何かあったんですか?」

「さっきオスカーがアンジェちゃんをつかまえてたわよ。」

「オスカー様が?どこで見かけたんですか?」

「中庭の方にいたわよ。もしかして口説いてたのかしら?
・・・・ってランディ!あらら、行っちゃった。
全く〜、心配なら喧嘩なんかしなけりゃいいのに。」


・・・・・オスカー様がアンジェに?全くもう!
    心配だな、大丈夫かな? ・・・って、俺達ケンカ中なんだよな・・・・・






「ようっ!しけたツラしやがって。」

「ゼフェル様!」

「珍しいな、おめーが1人でいるなんてよ。
いつもはうざってーくらいに、ランディ野郎が隣にいるのによ。」

「そんな事ないわよ。」


そこへランディが姿を見せた。


「アンジェ・・・・ゼフェルも・・・?」

「ゼフェル様、行きましょう!」

「おいっ!何だよ!いいのかよ!」


アンジェリークはゼフェルの腕を無理やり引っ張って、
その場を後にしてしまった。


「何だ?おめーら、ケンカしてんのか?
あっはっは!」

「何よ、笑わなくてもいいじゃない。」

「どうせ痴話ゲンカだろうがよ。
でもな、俺を巻き込むなよ!」

「ごめんなさい、ゼフェル様・・・。」

「お、やけに素直だな。ま、意地張るのもいい加減にしとけよ。
あいつ、実はモテるんだって、おめー知ってたか?」

「え・・・?」

「おめーとケンカした事が知れたら、聖地の女どもはこの時とばかりに
あいつを狙いに来るぜ。あいつだって男だからな。
どう転んでも不思議じゃねーと俺は思う。」

「そ・・・そんな・・・・」

「お、おい、おめー、うわっ、な、泣くなよ!冗談だって!
あのランディ野郎に限って、そんな事あるわけねーだろ。
俺が泣かせたなんて知ったら、あいつに何されるか。
とにかく、とっとと仲直りしちまえ!こっちがいい迷惑だぜ!
じゃあなっ!」


ゼフェルが行ってしまった後で、
アンジェリークはひどく落ち込んでしまう。


・・・・・どうしてあんな態度を取っちゃったのかな・・・私ってばかだ・・・・・
    それにもしゼフェル様の言う事が本当だったら・・・
    ランディ様に限って・・・・でも・・・・・






「あれ、ランディ、どうしたの?
今、アンジェとゼフェルを見かけたような気がしたけど・・・」

「マルセル・・・何でもないよ。」

「あ〜、ランディ、アンジェとケンカしたね?」

「なっ、何でわかるんだ?」

「顔見ればわかるって。ランディ、わかりやすいんだもん。
早く仲直りしなよ。何が原因かわからないけどさ、
どうせたいした理由でもないんなじゃないの?」

「う、うん・・・」

「こじれちゃうと取り返しのつかない事になっちゃうかもしれないよ?
アンジェ、可愛いからさ〜。僕もアンジェの事、だ〜い好きだもんね。
今だって、ゼフェルと2人でどこかへ行っちゃったんじゃない?」

「ええっ?!」

「ふふふ。僕、意地を張るのはよくないと思うな〜。」


・・・・・アンジェ・・・まさか、アンジェに限って・・・・
    いや、アンジェにそんな気がなくても、周りがほっとかないかも・・・・・






2人はそれぞれのもの思いと、沈んだ気持ちを抱えたまま、
次の朝を迎える事になった。

執務前のわずかな時間、ロザリアはアンジェリークに訊ねる。
ちょうど用事があって、来ていたルヴァもその場に加わった。



「で?あんたたち、結局まだ仲直りはしていないわけ?」

「うん・・・」

「アンジェリーク、意地を張るのはいけませんよ。
ずっとこのままでいいのですか?」

「いいえ、ルヴァ様・・・・」

「そうでしょう?その気持ちです。
素直になれば、仲直りなんてたやすい事ですよ。
きっとランディも同じ気持ちでいると思いますね〜。」

「はい・・・」



・・・・・謝ろう・・・私がいけないんだもん・・・・・



「ごめん、ロザリア、ちょっとだけ見逃して!」

「あ!アンジェリーク!ちょっと!
またなの?・・・・やれやれ・・・」

「ま、しょうがないですよね。
いつまでも女王陛下があの様子では、
宇宙に支障を来たす事にもなりかねませんからね。
陛下が幸せなのが一番ですよ〜。
ランディにも今度よ〜く言っておかなくてはね。」

「まぁ、ルヴァ様ったら。」






アンジェリークは、ドレスの裾をひるがえして、
宮殿の廊下を駆け、ランディの執務室に向かった。
扉をノックして、返事を待つのももどかしく中に入る。


「ランディ様・・・・!」

「アンジェ!」

「どうしたの?そんなに息を切らして・・・」

「ランディ様・・・私・・・私・・・・・」

「アンジェ。今、俺もアンジェの所に行こうとしてたんだ。」

「え?」

「はい、これ。」


ランディが差し出したのは、すずらんのブーケ。
甘い香りが、アンジェリークの胸に甘い想いと一緒に広がった。


「すずらん・・・」

「仲直りのしるしだよ。
ごめん。アンジェリーク。」

「ううん・・・私が悪かったの。
つまらない意地を張ったりして。
ランディ様・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・・」


アンジェリークの瞳から、涙が零れ落ちた。


「意地を張ってたのは俺の方だよ。
ああっ、また君を泣かせちゃったね。ダメだなぁ、俺。」

「ううん、ごめんなさい。
・・・やっと仲直り出来て嬉しくて・・・
だって、すごく淋しかったの。
もう・・・2度とケンカなんかしたくない。」

「するもんか・・・」


ランディは優しい笑顔をアンジェリークに向ける。
アンジェリークはプレゼントされたすずらんのブーケを、
大切そうに手の中に包み込んだ。


「ランディ様・・・ありがとう。」

「憶えてる?」

「忘れるわけないわ。森のお花畑で・・・」

「あの頃の気持ちを思い出してた。
あの頃も君が好きだった。
今はあの頃よりも、もっともっと君の事が大好きなのに、
ケンカなんかしてばかだな、って思った。」

「ランディ様、私も、私もよ!
どんなにランディ様が好きなのかって・・・」

「アンジェ・・・俺だってどんなにアンジェが大切か。」

「私たち、どうしてケンカなんかしちゃったのかな?」

「ホントだ・・・どうして・・・だっけ?
でも、そんな事もういいよ。」

「うん。」


2人は顔を見合わせて笑い合う。
ひとしきり笑い合った後で、柔らかな沈黙が2人の間に舞い降りた。
見つめ合った瞳が真顔になる。


「ケンカしていた間の時間を取り戻さなくちゃね。」


ランディはアンジェリークを抱き寄せると、
そっと唇を重ねた。


                                    fin.



露埼さんのサイトの10000HIT記念のフリー創作を 頂いてきましたvvv
ランディ様とアンジェ、聖地の皆さんを巻き込んで(?)『イヌも食わないなんとやら』・・・(笑)
でも、『喧嘩するほど仲がいい』で、最後はすずらんのブーケで以前よりももっともっと深い絆に(*^^*)
ランディ様とアンジェは 皆に大事に見守られ、愛されてますねv
そして2人が幸せになる事で 皆にも幸せをもたらしているのでしょうねvvv
そんな温かくて可愛らしく、すずらんがピッタリな純真な2人が、やっぱり好き〜〜〜vvv
露埼 紗羽 さんのサイトはこちらから >>> 





 



03/04/28up