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散歩 | ![]() |
文/アイコン: | ななしま くみ 様 |
イラスト : | 亜 綿 |
女王候補アンジェリ−ク・リモ−ジュは、この日、風の守護聖ランディの執務室を訪れていた… 「ランディ様、育成を少しお願いします。」 「育成を少しだね…わかったよ」 18才の少年守護聖は、風のように爽やかな笑顔で、アンジェリ−クの願いを快く聞き入れた… 「あ、あのっ…ランディ様… 今日は天気もいいですし… これから庭園に行きませんか? お花が今とっても綺麗なんですよ…」 「庭園?いいね。行こう!行こう!」 ランディは、まあ、花には興味がなかったけれど、何しろ、一日執務室に篭もるのは性にあわない…特別に、用事も無かったので、すぐにその提案を受け入れ、ふたり庭園を散歩することにした… 庭園の花壇にはピンクの可愛い花がたくさん咲いていた… 「この花、スイ−トピ−っていうんですよ。」 と、アンジェリ−クが教えてくれた。淡いピンク色で花びらの端がひらひらしていて…ランディはアンジェリ−クに似合いの花だな…と思った… 次の日はまた、午後から、アンジェリ−クはやって来た…育成のお願いと、また、外へ行こうと言う… 午前中ゼフェルと喧嘩して、機嫌があまりよくなかったので、気晴らしに…と、外に付き合うことにした… そのまた次の日も、更に次の日も、お昼を過ぎるとアンジェリ−クは、ランディの執務室を訪れ、育成のお願いをしたあと必ず外へと誘った… ランディは、いい口実ができたとばかり、誘いにのっては外の空気を満喫した… いつしか、アンジェリ−クとの散歩が、ランディの日課と化していた。 アンジェリ−クに会えない土と日の曜日が何だか物足りなく思えて、わざわざいつもの時間にひとり庭園に行ってみたのだが、結局その姿は見付けることができず、がっかりしたランディなのだった… 月の曜日、また、アンジェリ−クは執務室にやってきてくれた。ランディは、ほっとした。 その日アンジェリ−クは、何だかいつもと印象が違って見えた… (あれ、アンジェリ−クって今までこんなに可愛かったっけ?) いつにもまして、笑顔がきらきらと眩しく感じられ、ランディはどきどきした。 いつものように庭園へとふたりは向かった… 「土と日の曜日、君は何してた?俺ってさ、庭園の散歩がすっかり日課になっちゃって、2日間ともここに来てたんだ…はははっ…」 「まあ、そうなんですか、ランディ様…わたしは…土の曜日は大陸へ、日の曜日は用事があって…」 「ふうん、そうなんだ…」 ランディは、今度は日の曜日にも会って欲しいな…と言いかけたが、向こうからやってきた人影に気づき…慌てて、その言葉を飲み込んだ… 「げっ…まずい!」 (よりにもよって、こんな人にここで会うなんて…うわ〜何か色々言われそうだな〜絶対、絶対何か…でもって皆に言いふらされるんだ…) 向こうから歩いてくるのは、夢の守護聖オリヴィエだった… 「こんにちは〜!オリヴィエ様」 アンジェリ−クは、元気よくオリヴィエにあいさつした。絶対絶命だ〜とランディは思った…あの人俺のこといいおもちゃだと思ってる節があるから〜と… 「は〜い。こんにちは☆アンジェリ−クとランディ。」 オリヴィエはにっこり笑って、ただそれだけ言ってふたりとすれ違った… ランディは拍子抜けした…絶対からかいの言葉を浴びせられると思っていたから… どうにも気になって、しばらく歩いてから後を振り返った…もう、2、30メ−トルも離れていただろうか…何と、オリヴィエもこちらを向いていたのだ…ランディの背筋を冷たいものが走った…そして、オリヴィエはランディの視線に気づきさっと向きを変え、そそくさと向こうへと行ってしまった。ランディは、オリヴィエの不自然な態度が気になって仕方なかった… 「ランディ様?どうしたんですか?」 アンジェリ−クの声に、ランディは、はっと我に返った…そして、アンジェリ−クの頬が何だかほんのりピンク色に染まっていたことに気づいた… (…オリヴィエ様に会ってたから…?) ランディは、何だかむっときた…そして、もしかして…と思ったことをそのまま口にした。 「君、もしかして、日の曜日オリヴィエ様に会っていたんじゃないかい?」 そうだとすれば、すべてに説明がつくとランディは思ったのだ… ランディは想像してみる… 何もからかわず通り過ぎたオリヴィエは、自分と散歩しているアンジェを見かけ、実は何も言えないほど怒っていた…とか。 アンジェリ−クが、今日急に綺麗になって見えたのはオリヴィエとデ−トして、恋する乙女は何とやらモ−ドに入っているから…とか。 「え、どうしてばれちゃったんですか〜」 アンジェリ−クはあっさりと認めた… 「やっぱり…」 ランディは、その時初めて自分の気持ちを自覚した…むっときたのは、自分がこの女王候補のことをいつのまにか好きになっていたからだということに… 「アンジェリ−ク、君、オリヴィエ様のことが好きなのなら、もう俺のことは散歩に誘わないでくれ!」 ランディはそう言い捨てると、突然走り出した… アンジェリ−クは、突然の展開に茫然とした。何でこうなってしまったのか理解不可能だった。 「ラ、ランディ様!ご、誤解です〜!待ってください」 必死で後を追いかける…けれども、ランディは足が速くて追い付けない…それでもけなげにアンジェリ−クは追いかけた… ランディは、庭園の奥の芝生の広場の片隅の大きな木の下にいた… 「ちくしょう!」 なんて、木の幹に拳をぶつけちゃたりしてひとりで青春していた…痛かったけど… 「はあ…はあ……ラ、ランディ…さ…ま…はあ…はあ」 アンジェリ−クが、息を切らしてやってきた… …やばい…ランディは、逃げようとした… 「待って…もう…わたし…怒ってるんですからね〜!」 アンジェリ−クは、真っ赤な顔をして、目には涙を浮かべ…必死になってやってきた… その真剣さにランディがひるんだ瞬間…アンジェリ−クは、思いがけない行動に出た! アンジェリ−クがランディに捨身でタックルしたのだった… 「わ〜!」 どしんっ!! ランディが勢いよく芝生の上に倒され、ランディの上にアンジェリ−クが乗っかかった格好になっていた。 そして、そして、アンジェリ−クは次の瞬間ランデイの唇を奪っていた… 「…!」 ![]() ランディの顔が今度は真っ赤に染まった… アンジェリ−クは、はっと、ランディの体から降りると、ランディに背を向けるようにしてその場に座り込んだ… ランディも、その場で身を起こした…ポリポリと頭を掻く…少しずつ何が起きたのかわかってきた…そして、自分の唇を指でそっと触わってみる…アンジェリ−クの柔らかい唇の感覚を思い出すかのように… 「もうっ、ランディ様ったら…」 アンジェリ−クはまだ少し怒っていた… 「好きでもない人のところへ毎日毎日散歩に誘いに行くと思ってるんですか? オリヴィエ様のことは誤解なんです! オリヴィエ様には昨日は、メイクのアドバイスをしていただいたんです。 オリヴィエ様がおっしゃてたわ。ランディ様は自分で押し倒すくらいしなきゃ、女の子の気持ちに気づかないって… …もう、本当だったわ… …ランディ様って…にぶ…うぐっ……」 ランディがアンジェリ−クの口を手で塞いでしまったので、アンジェリ−クはこれ以上言葉を続けることができなかった… 「ごめん…鈍くって……好きだよ、アンジェリ−ク…… お願いだから、もう、オリヴィエ様の名前を言わないでくれ…」 ランディはそう言って、アンジェリ−クを後から抱きしめた… 茂みに隠れてなりゆきを見守っていた先輩の守護聖がほっと安堵のため息をもらしていた… |
以前ななしまさんのアンジェ本『苺食べたい』で、 このお話のランディ×レイチェル版の挿絵を描かせていただいたのですが どうしてもランディにはリモージュがイイとわがまま言ったら ランディ×アンジェ版に書き直して下さいました♪ 私的には やっぱりランディ様はアンジェに押し倒されるのがツボなのです(笑) くみさん、素敵なお話をどうもありがとう〜〜〜! |
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01/03/18up