![]() 好きだよ ![]() |
文 / 立花 コスモ 様 |
妹のように思う時もあった。 思い込もうとしていた事もあった。 君のふわふわの髪が風に揺れてると、「風の守護聖」である事を誇りに思う事さえあった。 たくさん、たくさんの時間が過ぎた。 そして、君は――――――――――――明日、女王になる。 風の守護聖ランディはテラスへと出て、夜風を思いっきり体に浴びる。 目を閉じて想う事はただ1人の女性。 女王候補アンジェリーク・リモージュだった。 ふわふわの金の髪、そそっかしくて廊下でよく転んでいたよね。 太陽みたいな笑顔で、細い腕と小さな体でエリューシオンを大切に育ててきた。 俺を頼ってくれるのがすごく嬉しかった。 笑ってくれると泣きそうになるくらい、嬉しかった。 ランディは1つ1つの思い出を思い出しては微笑み、時には曇らせ、 そしてただ想い続けた――――――愛しい人を。 >「んなもん、かっさらちまえ」 そんな事出来るわけない、俺は守護聖なんだぞ。 >「もたもたしていると俺が奪ってしまうかもしれないぞ、ランディ」 ・・・からかわれることが恥ずかしいわけじゃない。 >「ねぇ、ホントにこのままでいいの?」 ははっ、いつもマルセルを困らせてしまっていたなぁ。 それも・・・それも明日で終わる。 手を引いていくのが怖いわけじゃないんだ。 ただ、君が選ぶ道を、俺が壊すわけにはいかないよ。 「女王様・・・か」 そこへ、バタンと大きな音を立てて部屋へと入ってきたのは、 鋼の守護聖ゼフェルともう1人の女王候補ロザリアだった。 雷のような大きな音に驚き、ランディは慌てて2人の前へと姿を現した。 「どうしたんだよ、こんな遅くに。何かあったのかい?」 ランディの姿をみたゼフェルは鬼のような顔をしてランディに近づく。 「てっめ、なにやってんだよ!こんな所で!!」 殴りかかろうとしているゼフェルの姿を見ながらも、 ロザリアはそれを止める事なく落胆の顔をする。 「・・・ここにはいないのね」 「ど・・・うしたんだ?」 いつもと違うふたりの様子につられて、ランディも真剣な顔で聞き返す。 「いなくなったのよ、あの子」 「えっ?」 「アンジェリークが姿を消したんだよ!だからっ、ここにいるんじゃねーかと・・・」 「・・・それ・・・ほんと・・・う・・・かい?」 「嘘なんて言う訳ないじゃない!ランディ様、あの子に・・・あの子に何をしたの!?」 「ロザリア・・・」 涙目でランディに訴えるロザリアを見たゼフェルは、消えかけていた炎がまた熱くなっていた。 「とにかく!心当たりはねぇのか!?」 「・・・あ」 その一言が2人に聞こえたのが早いか、部屋を飛び出して行ったのが早いか。 ランディは2人を部屋に残し、姿を消した。 「まかせていいのよね・・・」 「まぁ、それしかねぇだろーな」 あそこだ、絶対にあそこだ。 森の湖のもっと奥深くの花畑。 君の好きな花が咲いてるあの場所。 ―――――――初めて、手を握ったあの場所――――――― 息を切らし、突然風のように現れたランディを見たアンジェリークは、 口元に手を置いて少し笑ってしまった。 「どうしたんですか?そんなに慌てて」 「ど、どうしたって、き、君が、いなくなるからっ」 「はい?」 「ゼ、ゼフェルとロザリアがっ、き、君を探して、俺の部屋へ来たんだっ、そっそれで」 「おっかしいなー、部屋のテーブルに書き置きしたメモを残してきたはずなんだけど・・・」 「へっ?」 目を大きくしながら驚くランディに向かって、アンジェリークは白いハンカチを差し出した。 「はい、これ、どうぞ」 「あ、ありがとう」 「ふふ」 2人はそのまま、一面の花畑の中へと座り込んだ。 「宇宙って素敵ですね」 「うん」 「私、すごくすごく皆さんに感謝してます」 「・・・うん」 「ランディ様に会えて良かった」 「・・・っ」 空を見上げるアンジェリークに対し、足元の花を見つめるランディ。 そして―――――――パンドラの箱は開けられた。 「好きだ」 「えっ?」 2人の瞳にはお互いの瞳を映し出している。 「君が好きだよ」 「ランディ様!?」 両手で口元を隠したアンジェリークは、必死で涙をこらえる。 濡れた目は、ランディを幻に見せてしまうから。 溢れだす雫をアンジェリークは慌てて手で拭い続ける。 「君が好きだ、ずっと、ずっと、君が好きだった」 ランディは涙を拭うのに必死になってるアンジェリークへと手を伸ばし、顔を包み込む。 「俺は臆病だったんだ。君の夢を俺が壊す事になってしまうと。けど、そんな事で壊れるばすが ないんだ。なにより、この宇宙の下で黙っているなんて出来なかった。・・・君に、心の中まで 見透かされているようでさ」 「ランディ様・・・」 「君に俺をあげる」 「えっ?」 「誓うよ。俺の心は君だけのものだって」 ランディはアンジェリークの右手を取り、自分の左胸へと当てる。 「この鼓動が続く限り、俺はいつまでも君を愛してる」 「っぅ」 「泣かないで、ずっと、ずっと、言えなくてごめん」 アンジェリークはランディの鼓動を感じながら、ただただ首を左右に振る事しか出来なかった。 「不安になったら、いつでもこの心音を確認しに来ていいから」 「はい」 「って、なんだか今になって恥ずかしくなってきちゃったよ」 「ふふっ」 赤く困り果てたランディに向けられるアンジェリークの微笑みは、 ランディの好きなあの太陽の笑顔だった。 ―――――――――――――――――――――女王即位後。 「あら、陛下。どちらへ行かれますの?そんなお弁当なんて持って」 「・・・ディ様の所よ」 「え、ランディ様!?」 「あわわ、ち、違うの違うのディア様よ!そ、それじゃ急いでいるからまたね!」 「はぁ??またねって、ちょっとアンジェリーク!!?」 「はぁ、もう皆さんご存知だって事にあの2人だけが気付かないんだから・・・ なんていうか・・・平和だわ、全く」 ![]() |
02/06/12up