長谷川バラ園の観覧車は もういない・・・。 R50を猛スピードで駆け抜ける死体は もういない。 人間に絶対服従する犬どもは もういない。 一年に一回だけ接近する真っ赤な火星は もう来ない。 セブンイレブンのT字路で78rpmで回転する 名も無き踊り子は もういない。 ひたすら逃げ続けるラム・カツレツと調理師は もういない。 絶望の蟻地獄から這い上がろうとする蟻は もういない。 我が心の三色アイスは もう売っていない。 過去にしか飛ばない微弱な電波は もう来ない。 そして・・・ 観覧車の上死点でのみ 至上の愛に包まれた二人は もういない・・・。 長谷川バラ園の観覧車は もういない。 見守るべき街が無くなったのだ。 見守るべきものがなくなったのだ。 街の観覧車。 ザ・センチネル。 モーターのノイズとゴンドラのきしむ音。 物悲しくて鼻がつーんとした。 鼻水がでた。 鼻水は美しい光を放ちながら 歩道に落ちた。 俺はピース・ライトに火を付けて 坂道を降りて行った。