「たまご 」

「たまご 」 大杉 涼


	今日はお買物。
	下館市街へたまごを買いに行く。
 
	いつ来るのかわからない行商よりも
	飯島たまご店の方が確実だと思ってしまった
	俺って本当にバカ。
 
	案の定店先にはもみがらに埋まったたまごの山。
	すすけた天井裏から店主がニヤリと笑った。
	笑ったんだぜ全くもって死んでくれよの世界。
	あああ身体がtrap0F
	でもここは耐えよう。たまごに罪はないのだから。
 
	そうハンプティ
	  ダンプティ もみがらのなか。
 
	生みたてホクホクのおいしいたまごを食べたら
	ヤツの思うツボなのはそう、初めから知ってたはず。
	今日は俺の負け。とりあえず帰ろう。
	こんどきたらムリヤリ
	身体障害者売りつけてやる。
	
	帰り道、ピース・ライトを吸うつもりで
	ポケットに手を入れると
	たまご。
	あのとき学校に置き忘れてきたたまご。
	畜生。やっぱり俺は俺のままか。
	武装解除されても。
 
	猫の死体はいくつもあったけど
	塩は一粒もありゃしなかった。
 

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