
クラプトン発掘調査隊 No.4
No.4 エリック・クラプトン インタヴュー
[ドイツ雑誌、STERN] 2,19,1998]
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意地悪なインタビューに次第にナーバスになってキレてゆく行くエリックの様子が
よくわかる最近にしては珍しいインタヴューです。
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STERN: 5年前、「ニューヨーク・タイムス」があなたのことを、死を静かに、せっ
かちに歌う年長者と書いていました。今度のニューアルバムでも、死と喪失をとり
あげていますね。まだ、コナーちゃんのことを悲しんでいますか?
CLAPTON: そうだね。少しずつショックから立ち直ってきたんだけど。でも、いま、
癒しの最後の段階を通りすぎようとしている。
S: 何が一番助けになりましたか?
C: 見ず知らずの人達からの慰めの手紙、何か月も、目覚めると、一日2百通の手紙
が届いた。それと、ギター。眠るとき以外は手放さなかった。そのとき作った2、
3曲がニューアルバムに入っているよ。
S:「ピルグリム」はほぼ全曲あなたのご自身の作だから、いかにもあなたらしいと
言えますね。
C: ぼくの最初の自伝的アルバムだよ。息子の死と失恋[クラプトンはシェリル・ク
ロウとの恋愛(affir)のことえを言っている]の歌。
S: だから、そんなに辛辣なんですか。以前、あなたは「ばかげたラブ・ソング」し
か書けないと言っていましたが。
C: ぼくは何度も人間関係に失敗してきた。どうも、女性を捕まえておくことができ
ないようだ。
S: 何故ですか。
C: 母や祖母やぼくの最初の性体験との関わり不運だったから。ぼくは孤独に慣れて
いるけれど、いつまでも女性を求め続けているんだ。
S: あなたは父親を知らないし、ずっと祖父母を両親だと思っていたんですね。
C: ええ。今だに、そこから抜け出せない。暖かい家庭で育った人たちがうらやまし
いんだ。たとえ、いつも喧嘩してても、夕方家に帰れば、彼等には待っている人が
いるからね。
S: あなたのドラッグ中毒とアル中は伝説になっています。「いつもぎりぎりのとこ
ろまで自分を追い詰めるんだ」と言っていましたね。
C: いま、自分の払わなければならなかった代償に驚いている。10年間、ドラッグ
はやってないし、酒も煙草もやめたんだ。
S:でも、いまだにヒット曲「コケイン」をプレイしていますよね。
C: 本当は、あれは反ドラッグ・ソングなんだ。ファンの人達は「She
don't
lie......, cocaine」のリフだけを聞いているよ。でも、こう言ってる「if
you
anna get down,down on the ground cocaine」 若者達がドラッグで身を滅ぼして
ゆくのは、とても惨めだよ。ぼくは自分がドラッグ漬けのときや、酔っ払っていた
ときの昔のレコードを聞くのがきらいなんだ。
S: 60年代の中頃、ジョン・メイオールはブルース・ブレイカーズにあなたを迎え
ました。コマーシャル的でないブルース・ギタリストを求めていたからです。いま、
あなたは大衆向けのポップをやっていますね。
C: ポピュラー・ミュージックをやっているって、どういう意味かよくわからないな。
たぶん、ニュー・アルバムは大失敗するだろう。ぼくが一番恐れているのは、若
いリスナーにアピールしないことなんだ。ぼくの年代の人達は、ぼくがドラム・コ
ンピューターやストリングスを用いたから、気に入らないだろうけどね。
S: 最近のポップ・ミュージックに興味がありますか?
C: ポップ・ミュージック・シーン全体が危機を迎えてる、主にイギリスでは。ナイキの
トレーニング・スーツを着れば、プロデイジーを聞かなきゃいけないし。ハートで話す
アーテイストなんかいないだろう。悲しいよ。オアシスみたいなバンドの見解なんか
「ファック ユー」だ。
S: 60年代は、あなたも紳士だとは思われてなかったですね。
C: ぼくたちはナイーブで、ばかだったんだ。大きな革命の一端を担っているとおも
っていた。自分がアーテイストとして、社会に責任があると気付くまでに、30年
以上かかったし、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョップリンのような多くの
死を経験した。オアシスのような若いバンドの子たちは、ぼくたちの間違いから学
ぶべきだと思うよ。それどころか、彼等は無責任で傲慢だし、ごろつきみたいにふ
るまっている。くだらない奴らだ。
S: オアシスのレコードで好きなものは?
C: ない。彼等の音楽には、ぼくに吐き気をもよおさせるような独善的で軽蔑的なと
ころがあるから。ラデイオヘッドやトリッキーみたいなバンドが好きだね。でも、
気分良くしたい時やくつろぎたい時は、たいてい一人で、パフ・ダデイーやベビー
フェイスのモダン・リズム.ブルースを聞いている。
S: あなたは、とても美しい曲「レイラ」から、オペルのコマーシャル用にギターの
リフを売りましたよね。ヤードバーズのミュージシャンとして、そのようなことは?
C: 60年代初期、ヤードバーズで最初に撮った写真に一枚はコマーシャルだった。
ぼくたちは下品なシャツを着せられ、ぼくはとても惨めな気持ちだった。そのとき
は、アーテイストとしての純粋さを失っていたんだ。
S: 音楽産業は反逆者、クラプトンを呑みこみましたか。
C: 反逆者(rebel)って、どういう意味?ロックンロールは常に反逆のレッテル(lebel)
を貼られてきたからね。やりたいことを先がけてやれば反逆者だし、後になって、
それが成功すればエスタブリッシュメント(体制)なんだ。
このインタヴューの後、彼の写真を撮る予定だったが、礼儀正しくインタヴューを
受けていた彼が、突然、ナーバスなプリマドンナに変わった。「魂を盗まれるみた
いで、写真は嫌いなんだ」と言ったミスタ-・スローハンドは腕を組み、とても不機
嫌だったので、彼の年月と傷が思いやられた。「幸福はとても大切なものだ」彼は
きっぱりと言った「ぼくにはあまり縁がないけどね」
訳 P・ターミン