01.06.20
泣いた奴が悪い
雨宿りをしようと、スーパーの入り口に駆け込んだ。
すると、私の横に、子供がいた。
兄弟だろう、推定4歳のお兄ちゃんが、推定2歳の弟君を、
ベビーカーの上でだっこしてた。
が、様子がおかしい。
弟君が泣き叫んでいる。
注意して見てみると、
兄ちゃんが弟君の背中をギュムギュムとつねっているではないか。
このクソ兄ちゃんめ、と、私が怒ってやろうと思ったら、
先に、その兄弟の母さんが買い物袋下げて戻ってきた。
母さんは、泣いている弟を見るや否や、
「マコト、またやったね!」
と、弟君を左手で抱きかかえながら、右手で兄ちゃんの頬をバチンとやった。
兄ちゃんは、涙を目に溜め、あごを震わせながらも、
「だって、重かったんだもん」
と、言い訳を始めた。
が、言い切る前に、お母さんが再度、バチンとやった。
母さんは、弟君に「だいじょぶだった? ごめんね〜」
と幼児言葉で優しく声をかける一方で、
兄ちゃんには「マコト、お前今日もおやつ抜きだよ!」と、
冷たく言い放っていた。
私は、それでも泣かない兄ちゃんに、心を打たれた。
さっきまで、ただの「憎きガキ」だったのに、
「理由も聞かないで、そりゃ無いよ母ちゃん」と、思っていた。
すると母さん、私の顔をキッと睨んだ。
睨みながら、子供二人を連れて、雨の中へ消えていった。
雨が止むのを待ちながら、私は考えた。
兄ちゃんは、なぜ弟君を泣かしたのか?
甘やかされる弟君に、嫉妬していたのかもしれない。
もっと複雑な家庭環境があるのかもしれない。
ただの底意地の悪いガキなだけなのかもしれない。
それは、たった今会ったばかりの私には、わからない。
ふと、思い出した。
私が子供の頃、喧嘩の仲裁役が「親父」の時は、
単純明快な裁決が下されたものだ。
「泣いた奴が悪い。泣いた奴は、誰だ!」
そして、目の赤いほうの子供に、拳骨を振り下ろすのである。
さて、自分が親だったら、どうするだろうこういう場合。
両者に話して諭させるか?
いじめていたお兄ちゃんを諌めるか?
泣いていた弟君を諌めるか?
少なくとも、「泣いた奴が悪い」といううちの親父方式は、
子供心にも解りやすい裁決だったことは、確かだ。
お兄ちゃんらしくしなさい、みたいな、
えこひいき的理不尽さが、少なくていい。
意地汚い兄弟喧嘩は、子供の世界で解決すべきなのかも、とも思った。
大人が介入するとしたら、「泣いた奴が悪い」のように、
喧嘩とは別次元なほうがいいのかもしれない。
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