01.12.8
寂しき高架下
六本木一丁目の高架下。
出社前、一服する私のまわりに現れる数人。
俗に言う、浮浪者の面々である。
初めはタバコやら小銭やらをせびってきた。
が、こちらも金が無い事を空気で感じ取ると、
「おしゃべり仲間」として扱いを変えてきた。
皆は私のことをザックちゃんと呼んだ。リュックを背負っているからだろう。
だから私も、見た目で呼んだ。
ハンサムさん、ドテラのおばちゃん、ゲンさん(裸足だから)。
彼らはその名前を気に入ってくれたようで、私がそう呼ぶたびに、
大声で笑った。
が、三週間が過ぎて。早くも幕が下りた。
ポリスがやってきて、怒ったのだ。
「高架下で変な事をすると、このご時世だ、しょっぴかにゃならんぞ」とのこと。
ポリスは浮浪者の面々とも顔なじみのようで、
優しさと恫喝の混じった声で、怒鳴る。
「お前ら、若い子(私のことだろう)をたぶらかすのもいい加減にしろよ!」
そして、私には恫喝のみの声で、
「お前、家出したのか? 住所は? 身分証見せろ」。
次の日から、ポリスが遠巻きに見ているその高架下で、
朝の一服の集いが出来なくなった。
ハンサムさんたちも、私を見ても無反応になった。
私は、会社の喫煙室で、朝の一服をすることにした。
喫煙室には、窓が無い。
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