06.05.03
チップスター
チップスター喰ってたら、幼少時代の記憶がバビーンと蘇った。
幼稚園上がるか上がらないかの頃。
火が好きだった。メラメラ燃えるのが堪らなかった。
理屈ではなく、本能が「火、スゲー!」と歓喜していたのだと思われる。
で、家族に隠れて、コソコソと色んなもの燃やしてた。
ティッシュとか、木片とか、布切れとか。
幼いなりに、安全には充分に気を付けて、庭とか畑とか、なるべく屋外で実行していた。
色々燃やしているうちに、特に好きな火が出来た。
厚紙が燃える様である。燃えるスピード、火の高さ、火の色、ニオイなど、ステキ極まる。
厚紙の中でも、チップスターの筒の燃え様は、もう最高(なんで最高だったか思い出せないけど。たしか色が良かったような…)。
その事実を知ってから、おやつにはチップスターをねだり、密かに筒を集めていった。
ある程度いい量のチップスター筒が集まった、秋の夜(鈴虫が鳴いていたのを覚えている)。
家族は夕ご飯を終えて、テレビ(たしか、刑事コロンボ)を見ながら団らん中。
その場をコッソリと抜けて、隠していた筒の束を抱えて庭に出る。
植木の影に隠れる。筒を重ねて、やぐらを作り、準備完了。
ジッ、ジッ! ライターに火をともし、
ジワーと火をチップスターに移していく。
一呼吸置いて、
ワッ
燃えあがった。
うっとりとながめ……ていたその時。
背後に恐ろしい気配。
振り返ると、親父様が!!
今までに見たことも無いような恐ろしい顔、と認識するかしないかのタイミングで、
バァーン!
と横面をひっぱたかれた。体ごと吹っ飛ばされた。
直後、燃えさかるチップスターを、裸足のままゲシゲシと踏み消す親父様の姿が目に映る。
火遊びが見つかったことの恐ろしさ、説教の恐ろしさよりもむしろ、
美しい火を堪能できなかった悲しさ、今後火を愛でられなくなるだろうことの悲しさが、
強烈に心に焼きついた。
で、今思い出した。
火遊びの罪悪はおいといて、
そういう本能的「美」みたいなものを自分も持ち合わせていた
ということが、なんか嬉しくも切なくも。
あと、家が火事にならなくて良かった。
あの時点で火遊びを止めてくれてありがとう親父様。
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