04.11.02
ある秋の晴れた休日の
銀行の通帳とキャッシュカードが三井のままなので、UFJに書き換えに行こうと思い立つ。
外に出ると、秋晴れ。
空を見上げて大きく息を吸って、ああ気持ちいいなあ、と声に出そうと思ったけど、恥ずかしいからやめた。
駅に着くと、小田急線のダイヤが乱れている。
「人身事故で急行電車が遅れております。新宿へお急ぎの方は普通電車にお乗り下さい」
と、アナウンスが流れている。
指示通り、普通電車に乗り込む。そしてシートに座る。
扉が閉まり、走り出すと同時に、車内アナウンスが流れる。
「新宿へお急ぎの方は、代々木上原にて急行電車にお乗り換え下さい」
なんだよ、だったら普通電車乗った意味ないじゃんか、と思っていると。
「あらやーね。普通電車乗った意味無いじゃないのねえ!」と隣のオバチャンが話しかけてきた。
「えっ、ああ、そうですよねえ」と面食らいつつも答えると、
「まったくほんとよねえ!」と私をはさんだ反対がわのオバチャンが声をはさんできた。
その後代々木上原までの数分間、会話は続く。なぜか双方から「アメちゃん」をもらう。黒飴と甘露アメ。
銀行に着き、通帳とカードを新しくしたいと案内係のおじちゃんに告げる。
「通帳は簡単だけど、カードはいろいろめんどくさいよ。今のままでいいんじゃない? 問題ないでしょ?」
としつこく勧められる。混んでいるため、余計な客は追い返したいようだ。
その助言を無視しつつ、順番待ち番号札をとり、しばし待つ。15分ほどで、私の番が来た。
「通帳とカードの更新ですね」とやや疲れた声を出す行員のお姉ちゃん。
「はい、そうです」と答えつつも、(ああやはり忙しいのだな。仕事増やして申し訳ないな)などとふと思う。
「では更新に際しまして、オールワンの機能をお付け致しましょうか」と、これも疲れ気味かつ機械的に話すお姉ちゃん。
「ほう、それはなんですか」
「はい、時間外の手数料が無料になります」
「なんですと、そんなうまい話があるものですか。うまい話には穴があります」
「穴というわけでは無いのですが、クレジット機能をお付け頂くか、残高10万円を維持して頂ければよろしいのです」
「なるほど、クレジットはいりません(指で×マーク)。けど、残高はいけそうです」
「そうですか、クレジットは×ですか(腕をクロスして×マーク)。では、残高のほうでいきましょう」
「そうしましょう」
「では次に、クレジット機能をお付け致しますか?」
「いえ、だから、クレジットは×です(腕をクロスして×マーク)」
「あっは、そうでしたっ、これでしたね(頭の上で腕をクロスして×マーク)」
その時、私の背後で、案内係のおじちゃんがゴホンと咳払い。
お姉ちゃんはクロスした手をそっと下げつつ「いやホント失礼しました。調子に乗りました」とつぶやいた。
ヨドバシカメラにて。
Win版風来のシレンなるゲームソフトが格安販売されていて、つい購入。
レジに行き、商品とポイントカードを差し出す。
レジ係のめがね兄ちゃんがそれらを受け取りつつ
「お客様、ポイントカードはお持ちですか」と聞いてくる。
「え?」と言って、私はお兄ちゃんの手の中にあるポイントカードを指さす。
「あっ、失礼しました。違います。ええっと、お客様のポイントカードはお持ちですか? って、また違うじゃんオレ!」
お兄ちゃんが大声出すので、ちょっと照れる私。
帰りの小田急。
シートの端に座れた私。その横に、松の枝抱えたおばちゃんが座る。松の葉が私の足に刺さる。
それに気づいたオバチャン、ごめんなさいね、と松を引っ込めつつ、
「この松ね、云々庭園で剪定してたのをね、いただけたの。ホラ、立派でしょ?」
と話しかけられる。その話は、下北沢で私がおりるまで続く。
そんな一日。
なんだろ、みんな。
晴れてるから、ウキウキしていたのかもしれない。
もしくは、私がウキウキ顔していたのかも。
晴れてたから。
秋だし。
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