03.06.30
金券ショック
恵比寿のミスタークラフト(おもちゃや)にて。
食品玩具の「ワールドタンクミュージアム4」が売っていた。
店頭に並んでいるのを見たのは初めてなので、買ってみっかと二箱を手に取る。
ひと箱250円。二つで500円。
貧乏人の私にとっては、十分高価である。
で、それを持って店内を物色中、「ちょっとすみません」と声をかけられた。
振り向けば、気の弱そうな二十代半ばくらいの青年。
「それ買うんですか?」
「ええ、そうですよ」
私はそう答えながら、ああ、このお兄ちゃんもワールドタンクのファンなのかな、と思った。
トレードなど申し込まれたら、ちょっと困っちゃうなと思った。なにせこちらの持ち玉は二箱だけだから。
が、彼はこんなことを言い出した。
「あの、よろしければコレ、買って頂けませんか?」
そう言って差し出したのは、数枚のチケット。
「これ、ここの金券です。2300円分あります。使用期限が今日までなんですけど、僕はここに欲しいもの無くて。あの、1300円でいいです。買って頂けませんか?」
彼は口早にそう言った。
怪しい、という気分が、心の9割を占める。断ってしまうほうが賢明である、と。
が、残りの1割が猛反撃をかけ、私の体を支配し、勝手に行動に移す。
「じゃ、1000円なら買う」
「えっ、それは困るんですけど……」
「ともあれ、ちょっと貸してその券」
「えっ?」
彼から券を奪うと、レジに持って行って店員に訪ねる。
「この券、こちらで確かに使えますね?」
店員は、にっこり笑顔で、「はい使えます」と答えた。
陳列棚の影から心配そうに見ていたお兄ちゃんの元に戻り、私は言った。
「じゃ、買う。1100円だっけ?」
「いや、1300円で……」
「そっか、じゃ、ちょっと待ってね」
財布を取り出し、中を探る。
「あちゃー、1100円しかないわ。それでいいね?」
「え、は、はい……」
商談成立。お兄ちゃんには申し訳ないけれど、こっちだってそれなりのリスクを負っているわけだし。
罪悪感はゼロ。
で、ワールドタンクをごっそり買って帰ってきました。
うーん。……この世に、神様はいるな。
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