ありま食堂 '06 2/21



 
〜ありま食堂メール〜

'06 .2/21

まだ一度も会った事がない だから話もした事もない

うわさは聞いていたけど それは風の噂だったよ

古いアパァトの階段登れば いつもの音が聞こえる

誰が弾いているんだろう

モ―ツアルトのフィガロの結婚

ああただ一度だけ会いたいな金子君    

続く


初めて自転車に乗ってあの子が住んでる町まで' 04 .12/18

遠くで手を振る君が見えるのに

タンポポの花の下で

あの子が静かに目を閉じた

赤いサンダルはいていた女の子の帽子と男の子


「女の子のぼうしと男の子」第2話 '04 .11/20

 帰り際に 女の子が言った。

 「お兄ちゃん どこにゆくの」「私おなかがすいたの」

 「夢の街へ行くんだよ」

 「それは三日月の花がさいていて、うさぎがライムのバイオリンを弾いているような街さ」

 熱々のカレーがテーブルの上にはこばれてきた

 具はナスチキンスペシャルだった

 そして

 一杯のカレーをわけあって食べた2人は

 すいこまれるように

 乗り合いバスにとびのってしまった

 夕日が入りこむ店の前には

 女の子のぼうしと男の子のかげが

 いつまでも写し出されていた


「女の子のぼうしと男の子」第1話 '04 .6/27

 僕がキャベツをとんとん切っていると

 玄関の前に女の子と男の子が、まだ開店前なのに

 立っていた。ボクはキャベツを切る手を

 とめて玄関の方へ歩いていった

 僕は「さむいから中に入りなよ」って言った

 女の子と男の子は少し下がりながら下を向いていた

 ボクはどこからきたのっていったら

 女の子はこういった「夢の街からきました」

 男の子はボクにカレーライスを注文してくれた

 彼らはカウンターのはしっこで静かに食べおわると

 風のように秋の夕空の中に入っていった

 僕はどこかでみたことがある彼女のかぶってた

 ぼうしのことが気になっていた

 玄関の外ではちらばってしまった

 おちばがクスクス笑っていた


  '04 .6/4

女の子のぼうしと男の子は

今日も店にやってきた

夏の入り口のせいか汗をハンケチで

ぬぐいながらカウンターにすわり

僕にこう云った コーヒーを下さい

ボクはコーヒーをいれながら

ドアの方に目をやると

あとから女の子がひとりで大きな

カバンをもって少し荒い息をしながら

やってきた

テレビにはニューヨークの夕ぐれの中で カラスが

ないてるをうつしていた

ボクはにがいせん茶をのみながら

のこりの皿を洗っている

ボクは男の子にいった

キミはこれからどこにゆくの

男の子はこういった 方向という名の汽車に

のるっていう

確実にきえてゆくたった今というしゅんかんの

連続があわになってきえていく

男の子は女の子のかげについていきながら

店を出ていった

カウンターには女の子の帽子が

         ひとつのこっていた。


'04 .5.2

 トロロをすりながらキミのコトを考える

 指がカユイのをガマンしなからトロロをすり続ける

 腐りかけたトマトをみながら又トロロをする

 なんにもしないのが一番いいことだと独り言

 お客さんがやって来た

 今日のメニューはトロロご飯です

 永遠の魚は空に消え赤い風船はパチンと割れ

 にんじんの皮をむこうとしています

 又キミと会えるね

 桜散った木の下で待ってます

 トロロのトロロのトロロの

 未来定食 コ―ヒ―に梅干し付き


'03 .12.10

 少年は大人になり女の子は女の人になり僕は鏡の前で僕を見ていた
 すると久しぶりにお客さんが来てくれた
 冬の入り口にさしかかる夜にしめった雪が靴をぬらしてペタンペタンと音たててやってきた
 その男は腹がでていて頭がつるっとしていていつもたいこをたたいていた
 その男と僕は昔どこかですれ違ったような気がする
 その男の見てきた風景のヒトコマに僕がほんの少し映っているのだ
 その男の注文は牡蛎のクリームシチューだった
 僕はありったけの牡蛎を洗ってシチューにした
 シチューのなかには僕の古い時計が煮えていた

ドラマ「早川くん」vol.2『神田荘の住人』'03 .8.17

僕の食堂の2Fには小さなアパートがあるんだ
アパートというより下宿みたいな宿というか
時代を逆さまにしたような つげ義春みたいな
かんじとか水道から水がポタポタおちているような
4じょう半フォークソングの主人公になったようなかんじとか
旅の途中のひとり舞台のオアシスのような
色々なイメージのわき出るトレビの泉のような まあそんな
かんじで 共同トイレ 共同流し、家ちん1万円 4じょう半。

色んな人が住んでいた。記憶の限り 文字にして
みたいと思う。
夜だけ営業なのか古本屋のオヤジ。
働くことを知らないパチプロのオヤジ。
理由もなくギターをしょって自転車にのってどこかへいった
ビートルズ少年。無農薬野菜を売っている大学生。
現役大学生。ベース弾き。
学校がイヤになり、パンクに走ったパンク少年。
自転車を組み立て、インドへいった青年。
なぞの個室喫茶をやっている ぶしょうヒゲの彼。
色んな方向の人々が食堂にやってきては
人間迷路のすべり台をすべり、泣き 笑い 出会い 別れ
生まれ、いき、音の玉ネギをきざんでいた。
そんな中で一番滞留時間のながい人は、
「フーテン」くんかもしれないが もっとながい人がいた
スポーツしんぶんを広げたようなそんな彼の
   名前はもちろん「早川くん」

ドラマ「早川くん」vol.3『人生の決定』'03 .8.17

雨が降るような 降らないようなくもり空が
好きな僕は いつもどうともいえない方向に
向ってくのが好きで フレーズのない音の階段を
登るのでありました。
彼は さだまさし とビルモンローが大好きで
さだまさしのことなら何でも知っている カントリーミュージックなら
何でも知っている そんな彼のフレーズはいつもKey of D。
その小さな部屋で僕と彼はミニコンサートの練習。二人共
無口なので一言も会話もなく 音だけが流れていきます。
小さな部屋には 古いカントリーのレコードたちと
クラレンスホワイトの写真。サルビアの花。そして早川じろう。

クラリネットをこわしちゃうほどおなかがすいてた彼に、僕は
僕のありったけのパスタをつくりました。部屋中が
スパゲッティだらけになってしまい、赤いトマトや青いピーマンや
黒いオリーブやきつね色のにんにくや、先のとがったペペロとか
床中にばらまかれました。
やがて夕暮れがひびわれる頃 彼は僕にいいました
「人生を決める」と
僕が水たまりの中を流れる雲を追いかけてる間に
彼はあっという間に 指定席にのり 大好きだったあの娘
をだきしめて、マンドリンをだきしめて
車に缶々をブラ下げながら、朝そばをたべ、
その小さな部屋を出ていきました。
小さな喫茶店には彼の化石の足あとが
いくつも残っていました。


ドラマ「早川くん」vol.1『Wake up 早川』'03 .7.31

小さな喫茶店にはいつもカウンタ―に彼が独りで座っていました

彼はいつもカレーライスとコーヒーを注文していました
スポーツ新聞を大きく広げて自分の部屋のように
息をしていました。
小さな喫茶店ははアメリカの南部の音楽が静かに流れ
彼はボク以上に無口で、ほとんど話をする機会はありませんでした
彼のやさしさには多くの人は気付いてあげることができず
彼は宇宙の回路の中に足を入れ
さまよっていました。
彼はある日、勇気を出して川の流れに
とびこんでいきました。
片みち切符を手にもって
自由の女神と、握手をするんだと
永遠のキズナを探すために
('03.7.30)

久しぶりにその喫茶店にやってきた彼はマスタ―に注文しました
カレーライスとコ―ヒー 
ゆっくりした川の流れに身を任せ夕日が沈む丘で僕は彼の事を考えたら
自然に僕の目から涙があふれてきました 続く 
(03.7.31)


僕はそんな彼の事を一曲の歌にしたくて何度も何度も叫びました
そのうち風の噂できっと方向がやって来ると信じていつもこの丘で歌っていました
そんな時白いハトが飛んできました僕は思わず叫びました
WAKeUP早川
地下鉄の中で早朝僕は泣きました また来年
(03.7.31)

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ありまじろう参加「じろうず」公式HP「じろうずのじろ渦」

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