●立体野郎
 
おもしろ遊び探究人の徳山雅記は、'87年頃より、ミニコミ「地下生活者会議」に遊びについての連載を始めた。「鉛筆の飛ばし方」「ウチワの飛ばし方」「コーラ缶の飛ばし方」「マッチ棒の飛ばし方」「アイス棒の飛ばし方」シリーズに続いて、第60号にて、「立体野郎」の連載を開始した。
 第一回は「3分間立体写真の巻」だ。さて、立体写真とはなんぞや。同じようなAとBの写真。少しだけ角度がずれて撮られている。並べて、二枚が一枚になるように、視点を合わせ見ると、立体になって見えるというものだ。第一回は、3分間写真で、少しだけずれて撮ると立体写真になるというもの。失敗例もあげられていた。
 僕らは、ミニコミを開いては、寄り目になりながら、なんとか一枚になるように挑戦した。僕には、一枚にするコツがよくわからなかった。みんなは言う。「ぼーうと、ながめるんだよー」と。
 第二回は「隠し立体図形の巻」うまく一枚にして眺めると、文字や図形が浮かびあがるというもの。第三回には、「初心者向け交差法立体視のコツ」という親切な説明も載せられた。そして、その後は「駅の切符による立体実験」「立体写真を見ると、イラストの男がハードルを越える。という写真とイラストの実験」「誰にでもできるカガミを使った立体写真」「サングラスを使ったテレビの立体化」のちには、ふたごによる立体写真の撮影と、立体野郎の旅は続いていった。
 その後も、徳山氏はおもしろ遊びの探究を続けており、つい最近では、立体野郎の究極とも言える、絶対に誰にでも見える立体写真のセットを手作りで作りあげ、西荻にある、「アートギャラリー・ニヒル牛」において、発表した。先日、私ものぞいて見たが、もう完璧な立体写真体験であった。(ここまで来たか・・)という感があった。
 立体野郎は、とうとう一枚の写真になった。あの短い二枚の写真の間には、はるばるとした時間と実験の旅が、ついやされていたのだった。('00 青木記)
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