私の予防原則

東 賢一

 

 20027月時点で、4千万以上の化学物質(有機化合物、無機化合物、金属、合金、鉱物、配位化合物、有機金属、元素、同位体、核子、蛋白質及び核酸、高分子化合物、UVCB物質(組成が未知か、または不定な構成要素をもつもの、複雑な反応生成物、生物学的物質))がアメリカ化学会(ACS)Chemical Abstracts Service (CAS)に登録されています。その中で日常的に使用されている化学物質は、約8万種類といわれています。これらの化学物質によって、私たちは優れた科学技術を開発し、私たちの生活は便利で快適になりました。しかしその反面、昭和の高度成長期に発生した公害問題から、最近では、内分泌攪乱化学物質、化学物質過敏症、食品中の残留農薬など、化学物質による新たな生態系汚染、環境保健や公衆衛生の問題が懸念されるようになってきました。これらの化学物質による環境や健康影響の問題に対しては、科学の発達によって多くの化学物質の毒性が明らかとなり、リスクアセスメントとリスクマネイジメントが行われてきました。それでもその中に不確実性が残存するため、危害を生じさせない、あるいは危害を拡大させないためにも、このような不確実性に対するアプローチが政策的に重要となっています。予防原則あるいは予防的措置の考えは、そのアプローチの1つとして欧米諸国で重要視されています。

 我が国では、予防原則に関してほとんど情報提供が行われていないのが現状です。私は、予防原則あるいは予防的措置に関する欧米諸国の取り組みを少しでも知っていただき、化学物質による環境や健康問題に対する日本の取り組みがさらに良くなるようになればと願っています。そしてさらに、化学物質のリスク評価全体のさらなる発展に貢献できればと願っております。

 


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