解説

 現在、日本政府は、北方領土をロシアが実効支配している現実に対して「不法占拠」と言うことがある。ここに掲載する国会答弁で、政府は、不法占拠とは「法的根拠を有するものではないという意味で」あると説明している。
 なお、昭和31年11月29日 、参議院外務委員会において「ソ連の引き続き占拠することが不法なりとは、これまた言えない」と答弁した。この答弁は取り消されていない。


[衆議院外務委員会 - 25号  昭和52年06月06日


○鳩山国務大臣 六月四日当委員会における日ソ漁業協定の質疑の際、渡部一郎委員より北方領土周辺のわが国の領海に関する御質問があり、これに対し政府の考え方を御説明した次第であります。渡部委員よりなお御指摘のあった点をも勘案し、本日は改めて本件に関する考え方を取りまとめ御説明いたします。
 国際法上領海とは領土に付随するものであり、したがってわが国の固有の領土たる北方四島の周辺にも、わが国の領海が存在しているわけであります。ただ、現実の問題として、北方四島周辺のわが国領海に対しては、ソ連が事実上施政を行っており、このことを単なる事実として認識することは、ソ連の施政権を承認することを意味するものではありません。わが国は、わが国固有の領土である北方四島周辺の領海についても他の領海と同様に施政権を有しているのであります。したがって、わが国の領海の中に、その法的性格の上から、わが国が施政権を有する領海とそうでない領海の二種類の領海が存在するというようなことは全くあり得ないのであります。
 また、今次日ソ漁業協定交渉におきましては、ソ連による北方四島及びその周辺の領海における施政の法的根拠を認めるものでは全くないことを協定第八条により明確にした上で、北方四島周辺水域を含むソ連の漁業水域におけるわが方漁船の操業の手続及び条件を定めた次第でございます。したがって、今次協定は、ソ連の北方四島占拠はその法的根拠を有するものではないという意味で不法な占拠であるという政府の従来の見解を何ら変更せしめるものではないのであります。
 以上でございます。



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