えせ北方領土返還運動への対応



 北方領土返還運動を標榜して、企業などに関連図書などを売りつける「高額図書販売」が横行している。会社などに電話をかけてきて、5万円くらいで、ろくでもない本をむりやり売りつける手口が使われる。断ると、いろいろなことを言って、おどしをかけるが、一度、おどしに負けて、金を出してしまうと、何度も売りつけにくるので、絶対に金を出さないこと、また、このような被害にあった場合は、警察署または暴力追放運動推進センターに相談すると良い。

 本の購入を断ると、「街宣車で押しかける」「若いもんをやる」などと言って、おどしをかけますが、実際に、街宣車で押しかけたり、若いもんが来たりすることはめったにありません。万一、そのようなことがあったら、すぐに警察に連絡してください。
 


電話がかかってきたら

 いろいろなことを言って、脅しをかけますが、『買いません』『購入しません』とだけ答えましょう。理由を言うとそこに付けこまれる恐れがあるので、買わない理由は言わないほうが良いでしょう。「北方領土問題に関心はないのか!」などと聞いてくると思いますが、答えるとかえって付けこまれるので、何も答えずに、買わないことだけを毅然とした態度で言いましょう。『結構です』『いいです』というと、購入するという意味だといわれる恐れがあるので、このような言葉使いは止めましょう。『買いません』『購入しません』とだけ答えましょう。 

 『ただいま責任者不在ですので、こちらから電話します』と言って、相手の氏名・電話番号を聞くことも効果があることがありますが、全く効果がないこともあるので、この方法はあまりお奨めしません。また、自分のほうから電話を掛けるようなことはしないように。

 相手は、おそらくヤクザ風で、恐ろしいことを言ってくるはずですが、彼等だって商売なのだから、買う見込みがないところに、押しかけたりすることは、まず有りません。万一そういうことがあったり、心配な場合は、最寄の警察に相談してください。高額図書の強引販売は警察沙汰になることを恐れているので、毅然とした態度をとることが、最も効果的です。ただし、いくら相手が脅しをかけるからといって、逆に相手を罵倒するようなことは、やめたほうが良いです。何の効果もなく、かえって自分が不利になります。

 何度も電話を掛けてくる場合は、着信拒否が一番有効です。



買わないといったのに商品が送りつけられたら

 宅配便や郵便で送られてきますが、配送業者に『受け取り拒否』と伝えてください。もし、受け取ってしまった場合は、送りつけられた包みを開けずに、配送業者に連絡し、『受け取り拒否』である旨伝えてください。郵便小包の場合は、郵便局に小包を持参すればよいのですが、その場合印鑑が必要です。

注意)代金引換郵便で送りつけられることがあります。この場合、代金を払ってはいけません。自分がいない時に、郵便が届いて、別人が誤って支払ってしまうことがないように、日ごろから話しておきましょう。



買わないといったのに商品が送りつけられ、送りつけられた包みをあけてしまった場合(まだ送金していない場合)

 特定商取引に関する法律第59条(売買契約に基づかないで送付された商品)が適用されます。その結果、当該図書の引取りを相手方に請求してから7日間又は当該図書が送られてきた日から14日間が経過すれば、自動的に相手方は商品の返還請求ができなくなりますので、それを自由に処分しても差し支えないこととなります。たとえ「一定期間内に返事又は返送がなければ承諾したものとみなす」などの文言があったとしても、購入を承諾しない限り売買契約は成立しません。
 法律上は上記のとおりですが、現実問題として、後日トラブルが発生するおそれがあるので、きちんと対応したほうが良いでしょう。いくつかの対応が有ります。クーリングオフとの関係で、送られた当日を含め8日以内に対応しましょう。なるべく早く対応しましょう。送金しないように。

@本を返送する。
 「***御中、***(書籍名)を購入する意志はありませんのでお返しします。*年*月*日、住所・氏名」と書いたものを同封して返送します。返送したことが確認できるように、書留郵便や宅配便を利用し、必ず控えを保管しておきます。また、同封した書面のコピーも保管しておきます。

A商品を購入するが意志ないことを書面で伝える。
 内容証明郵便で通知するといいでしょう。内容証明郵便を使わない場合は、書留や配達記録など、記録が残るものにする必要があります。 「***御中、このたび送付されてきた***(書籍名)を購入する意志はありませんので通知します。商品は至急引き取ってください。 *年*月*日、住所・氏名 」
 法律では、通知後7日以内に取りにこない場合は、処分してもかまわないことになっていますが、商品が手元に残って気持ちが悪く、万一、相手が取りに来たらと心配が有ります。たいていは取りにこないようです。

B商品を購入するが意志ないことを書面で伝え、かつ本を返送する
 一番確実な方法です。相手が恐ろしそうな場合は、この方法が良いでしょう。
 内容証明郵便で、購入の意思がないことを通知します。さらに、「***御中、***(書籍名)を購入する意志はありませんのでお返しします。*年*月*日、住所・氏名」と書いたものを同封して、送りつけられた本を返送します。返送したことが確認できるように、書留郵便や宅配便を利用し、必ず控えを保管しておきます。この場合、同封した文書のコピーも必ず保管して下さい。本の返送は、料金着払いでも良いのですが、相手をあまり怒らせるのも怖いと思い場合は、そこまでしないほうが良いかも知れません。

Bの場合、購入の意思がないことを通知する内容証明郵便は、たとえば次のように書きます。

住所
○○ 御中

平成○年○月○日に送られてきました、
○○(図書名)を購入する意志はありません
ので通知します。
送付された図書は、返送しました。
なお、今後はこのような一方的な送付は
お断りします。

       平成○年○月○日
       住所
       氏名又は会社名

 内容証明郵便を出して返送した場合は、ほとんど何もいってこなくなりますが、万一、送り返された腹いせに、執拗に購入を強要する言動があった際は、早めに警察や各県の法務局に相談してください。



買うといってしまった場合、あるいは、あいまいな返事をしてしまった場合(まだ送金していない場合)

 クーリングオフ(訪問販売・電話による勧誘販売で、一方的に契約を解除できる制度)が適用されます。ただし、送られてきた当日を含め8日以内に手続きする必要があります。なるべく早く対応しましょう。送金しないように。
 クーリングオフは、必ず書面で商品を購入しないことを伝えます。
 クーリングオフを行使する方法は、基本的には、上記@ABと同じように、次の3つの方法があります。
@商品を送り返してその中にクーリングオフを行使して契約解除することを伝える書面を同封する(必ずコピーをとっておく)
A内容証明郵便などで、クーリングオフを行使して契約解除することを通知する
B内容証明郵便などで、クーリングオフを行使して契約解除することを通知するとともに、商品を返送する

 相手はヤクザ者なので、なるべくこちらの毅然たる態度を示すという意味でも、内容証明郵便にすることを強くお奨めします。@の方法はあまりお奨めできません。Aの方法の場合、商品が手元に残ってしまい気持ちが悪いことと、万一、本当に取りに来たらどうしようかと、恐怖があるので、Bが良いでしょう。本の返送は、料金着払いでも良いのですが、相手をあまり怒らせるのも怖いので、そこまでしないほうが良いでしょう。Bの方法だと、郵便料金が若干必要になりますが、相手は、少しも儲かっていないのだから、今後、売りつけに来る可能性はずっと少なくなります。

 Bの場合に送る内相証明郵便は、例えば、このように書きます。
 
契約解除通知書

住所
○○ 御中

貴社との間で締結した下記契約を解除します
 契約日 (契約書面の日付を記入)
 書面受領日 (契約書面を受領した日付を記入)
 商品名 (契約書面の本の名前を記入)
 価格 (契約書面の本の価格を記入)
 販売担当者 (契約書面に担当者名があるときそれを記入)

なお、送付された図書は、返送しました。

             平成○年○月○日
             住所
             氏名又は会社名

 念のため、消費者センター等の公的機関に相談することも効果的です。

  内容証明郵便を出して契約解除した場合は、ほとんど何もいってこなくなりますが、万一、送り返された腹いせに、執拗に購入を強要する言動があった際は、早めに警察や各県の法務局に相談してください。



送金してしまった場合
 
 クーリングオフが適用されます。当日を含め8日以内に手続きしましょう。この場合、相手方に返金義務が生じますが、返金に応じないなど、いろいろ面倒が起こる恐れがあるので、自分だけで解決しようとしないで、消費者センターなどに相談したほうが良いでしょう。
 お金が返ってくることが期待できない場合でも、内相証明郵便で契約解除通知書を送っておいたほうが、その後、売りつけに来る恐れが低くなります。

 
契約解除通知書

住所
○○ 御中

貴社との間で締結した下記契約を解除します
 契約日 (契約書面の日付を記入)
 書面受領日 (契約書面を受領した日付を記入)
 商品名 (契約書面の本の名前を記入)
 価格 (契約書面の本の価格を記入)
 販売担当者 (契約書面に担当者名があるときそれを記入)
つきましては、私が支払った、下記金額を
速やかに返金してください。
 金 ○○円
また、商品を速やかに引き取ってください。
以上の通り通知します。

             平成○年○月○日
             住所
             氏名又は会社名



泣き寝入り
 一番いけない対応です。
 売りつけるときは「これが最後だ」と言ってくる事が多いのですが、お金を支払った場合、ほぼ確実に何度も売りつけに来ます。
 彼等も、情報のやり取りがあるらしくて、北方領土の本を買わされた人に、靖国神社の本を売りつけに来たと言う話も珍しくありません。それも、別人・別団体が、売りつけに来たりします。




相談するとき:
 必ず、警察や、消費者センターのような公的機関か、弁護士など信用の置ける人に相談します。相談を装った詐欺師もいるので、注意してください。
 


内容証明郵便とは:
 内容証明とは、郵便物の内容文書について、いつ、いかなる内容のものを誰から誰へあてて差し出したかということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度です。書式等については、郵便局に聞いてください。なお、司法書士で、内容証明郵便差出代行をしているところがあります。

クーリングオフの注意:
 クーリングオフを使用して契約を解除するためには、契約書が送られた日から8日以内(当日を含む)に通知する必要があります。書籍が一方的に送りつけられる場合は、たいてい、郵便物に契約書が入っているので、その日以降8日間になります。もし、別便で、契約書が送られてきた場合は、その日を含めて8日以内に契約解除の通知をする必要があります。契約書が送られてこなかった場合は、法的には、いつでも契約解除可能になりますが、このような場合でも、トラブルを避けるために8日以内に手続きすることを強く勧めます。
 契約解除の通知は、8日以内に相手に届く必要はなくて、郵便局が引き受けた時が8日以内ならば問題ありません。ただし、あまりぎりぎりだと、交通渋滞で手続きできなかった等の思わぬトラブルが起こるかも知れないので、早めに手続きしましょう。