−実は寿命のあるIC−

さて、ICって何でしょう?(マニアな方はどうか笑わないで下さいね。)(^^;

これは電気部品の一種です。基板を購入すれば、いやがおうでも載っているのが
目に付くゲジゲジみたいな格好をしたやつです。(上の画像を参照)

これって日本語で言えば「集積回路」と言いまして、中にはダイオード,
トランジスタ,抵抗,コンデンサ等のミニチュア部品がシリコン基板の上に所狭しと
何層にも形成されているものです。
沢山の部品を集めて一つの機能を持った回路になっているのですから、
省スペースには絶対に欠かせないものです。

例えばその昔、某国外の大学で真空管を使って簡単な計算機を作ったら、体育館
の中が全部埋まってしまったと言う話があります。
今でしたら腕時計に付いているものさえありますのにねえ…。(^^;

外見はしっかりと樹脂でパッケージされて大変丈夫そうでして、真空管と異なり
グリッドを暖めるヒーターが無く、ヒーターが切れる心配が無い事から、ICの寿命
は半永久的であると良く思われがちです。(この当たりはもう死語ですね…)(^^;

これって半分当たりなのですが、いやいや
実はそうでは無い場合もありまして…。



1.ICが故障するとどうなるの?
ええ、ICは入力された電気信号を必要な電気信号に変換する機能を持って
います。

故障すると言う事は、
「正常な信号出力をしなくなる、又はさせなくしてしまう」
ことを意味します。
ICが故障すれば、「画面がなんかおかしい」「音がおかしい」「コンパネの入力が
利かない」
等の現象が発生します。
長年基板を遊んでいるマニアな方なら1度位は経験されているかと思います。(^^;

2.何故ICは故障する事があるの?
勿論、基板屋さんに責任が無い場合が殆どです。
ごく一部の基板屋さんを除いて出荷時にはきちんと動作確認はされてまして、
後になって故障が発生する事もあるのです。
…初心な方は怖がらないで下さいね。基板に限らず家電製品全般でも起こり得る
事でして、「ビデオが壊れた」なんて経験はありませんか?
親切な基板屋さんなら修理も対応して下さるのでまずはご安心下さい。(^^)

これって実はICメーカーでのICの初期製造不良の場合もあるの
です。
勿論、「過電圧を掛けて壊してしまった」だなんて、故障の原因が後の取り扱い上
のミスである場合もありますが、…ちょい置いときます。(^^;

ICが故障する原因、(ICの製造不良)について、以下に故障の原因となるもの
を列記します。ちょい難しいかも知れませんが、勘弁して下さいね。(^^;;;;

・IC内部のボンディングワイヤーの半田不良による接続不良
ええと、シリコン基板と外部に出る端子の間を橋渡しするワイヤーです。
半田付け部の汚れがあったとかで半田不良が発生したりする場合が稀にあって、
故障が起こり得るのです。

・パターン形成時のバラツキによる特性不良。
ええと、初期は正常でも、ICが暖まってくると不具合が起きる事もあります。
これはもう、ICの製造上のバラツキか、又はバラツキを考慮していない初期設計
段階でのミスが原因です。(そう言う事例、本当にあるのです…)

・酸化膜の欠点。
酸化膜って、IC内部の各層の間がショートしないよう形成される「電気的絶縁膜」
を意味します。
IC製造工程で形成される酸化膜、実は完全無欠な酸化膜などあり得ません。
どこかにはピンホール(ごく小さな穴)ができてしまうもので、これってIC
メーカーでは「ピンホールが無いこと」では無くて、「一定数よりピンホールは
少ない事」と言う管理がされているのが現状なのです…。
ピンホールができた場所によっては電気的なショートが発生してしまいます。

・パーティクルの混入
パーティクルって、ようは「ごく小さなゴミ」の事です。ICの内部は集積度が
高く、肉眼で見えない金属クズ等が層と層の間にサンドイッチされてしまう事に
よって、ショートしたり素子の特性不良が発生したりするのです。
ICって、クリーンルーム(ゴミがシャットアウトされた部屋)で作られるのですが
やはり、完全にゴミは無くならなくて、ICメーカーの永遠の課題だったりします。

ああああ、なんか今回は話が飛び過ぎてますね。(^^;
まあ、「最初からおかしいICもあるんだ」位に知って頂ければ良いです。(^^;

3.ICの製造不良ってどの位の割合なの?
ICの製造工程で発生する不良品の割合は、実はICメーカーの実力がバレるので
企業秘密になっていたりします。

でも、情報の端切れを集めていくと、おおよそ数1000ppm程である事の察しが
つきます。(ええと、ppmって、単位は100万分の1ですから、だいたい
500個に1個程の割合で不良品なの?位にお考え下さいませ。)
勿論、不良品は出荷前に動作確認ではねられまして、あくまでこの話はICメーカー
内部でのお話です。

実際にゲームセンター以降で動作していてIC不良が起きるのは、品質が良いICで
おおよそ数ppm程の割合でしょう。
ですが、実際にはIC1個だけ載った基板と言うものはありませんから、故障の
可能性については載っているICの数だけ、掛け算しないといけません!!
うむむ、大変にざっくばらんな計算では、基板は少なくとも
数1000枚に1枚の割合
でICの初期部品不良のおかげで故障していることになりますか。
意外とバカになりませんねえ…。(^^;

3.何故最初は動いていたのに、後になって故障するの?
ICは熱を持ちます。(電気信号のオン,オフの繰り返しで、内部素子から熱が
出ます。例えばRAMなんて、1秒間にゆうに数万回はオン,オフしてますんで、
随分熱くなりますねえ。)
この熱と電気的ストレスによって、序々に内部の弱い部分(ICの不良箇所)が
痛んでいくのです。
本来絶縁されるべきところの絶縁が破壊し、ダムの決壊宜しく電流が流れ出して、
あっと言う間にショートして、ICの上から触ると「アッチッチ」になったり
します。
そう、今回「寿命のあるIC」と言ったのは、実は欠点の無いICなんて無いのが
実情であって、いつかは弱い部分から壊れて行く可能性を持っている
事を指して
言っていたものです。

 蛇足ですが、カプコンのCP2に代表される、電動ファンが付いて冷却される仕様
の基板であれば熱対策がされてて少しは安心できますね。(^^)
何度も言いますが、うるさいからと言ってファンを止める改造はしないで
下さいね! スペックオーバーの熱はICの寿命を縮めますから。
(それに、もともとはCPUのオーバーヒート対策なのかも知れませんし。)

4.静電気が原因のIC半殺し(上記説明補足)
補足ですが、ICメーカーの責任では無く、後の取り扱いでICが痛んでしまい、
後になって痛んだ部分から壊れる場合もあるのです。
静電気がその最たるもので、絶縁膜が破損したり、パターンが切れ掛かったり、
トランジスタの特性が変わったりで大変恐いものですが、直ぐに壊れてしまえば
「ああ、今の取り扱いで静電気が掛かった事かもなあ」
と思い当たるものですが、厄介なのはこの「半殺し」で、取り敢えずその場は正常
に動いていて後で壊れてしまう、何とも爆弾抱えな事態も良く発生します。

5.不良ICと静電気破損のICって見分け付くの?
…諦めて下さい。素人レベルでは判別できないのです。
原因を探る為には直接ICメーカーに解析を依頼しなければなりません。
更に悪い事に、ICメーカーの殆どは嘘つきさんなのです。(^^;
企業のお約束、自分の会社の非を安々とは認めたりはしません。

例えば酸化膜の欠点によるショートでも静電気による酸化膜の破損でも、壊れた
箇所を観察する限りに於いては判別が付かない場合がありますから、
もうこうなると100発100中ICメーカーは
「静電気で壊れてます、ほら、証拠写真」 と回答してきます。
メーカーと立ち会いで解析し、証拠を握った上でしつこく突き捲らないと
なかなか白状しませんです。(笑)

天下のICメーカー、○○○ー○では
「そのICは古いバージョンなんで解析できません。」
「それは別の部署に依頼して下さい」
(たらい回し)
なんて対応が実際にありましたし、
○ー○に至っては証拠写真のすり替えと言う器用な芸当までして下さい
ましたっけ。
ははははははは!(^O^)

…仕事柄得られた裏事情をばらして良いものなのかしらん…f(^^;

6.まとめ
皆様、今回はあまりに硬い内容でごめんなさい。(^^;
最後にまとめとして言いたい事は以下の2つの事です。

・ICが壊れたからと言って、それは事故であって、
 基板屋さんのせいと決めつけてはいけないのです。
 皆様、そのような場合にはくれぐれも紳士的に基板屋さんに修理,交換を依頼
 しましょう!(^O^)

・その実、静電気による半殺し基板も存在しており、静電気を掛けたのが
 誰なのかはまず薮の中です。
 これを基板屋さんの検品では見つけろと言うのはまず無理です。
 
 ゲームメーカー〜マニアの間でどのような経路を巡って来たか判りませんので、
 これは仕方がないものと諦めましょう。誰しも悪気は無いのです。(^^;
 基板屋さんで動作確認して、自分のところで通電したとたんに壊れた!なんて
 事故も館主経験しております。
 勿論、お店で検品をしてなかった、なんてのは論外ですよ。(^^;
 皆様、直接お店で基板を購入する際には念の為必ずご自身で動作確認に
 立ち会って下さいね!!
 お店の方々も、是非後々のトラブルの回避の為に、検品はお客さんに
 見えるようにしてあげて下さいね!(^O^)
 
 ただ、静電バンドもせずに乾燥した冬場にむき出しの基板を平気で取り扱う
 ような基板屋さんを見掛けてしまったら…
 またはそんな扱いをしているマニアがいたとしたら…
 
 自己防衛として、そのような方々から基板を購入することは避けておいた方が
 宜しいかとアドバイスさせて頂きまして、今回の締めくくりとさせて
 頂きます。

 皆様、くれぐれも静電気には注意して下さいね。(^^)
                                  by館主



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