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シエス諸島:大西洋に面した島で自然に包まれて

Cabo de Gata (Part 2)

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ビーゴの町から望むシエス諸島

 

 

 

 

 

 

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ビーゴ港の朝

スペイン北西部、ガリシア地方の港町ビーゴから約10キロメートルの沖合に浮かぶ3つの島がシエス諸島、元祖「リアス式海岸(リアとはスペイン語で「湾」の意味)」を堪能できる観光スポットとして日本語のガイドブックにも載っていますが、それを読んで訪れてみてびっくりする人もいることでしょう。たくさんの人が裸でビーチライフを楽しんでいるのですから。

 シエス諸島は近接する3つの小さな島からなっています。一番大きな(といっても南北2キロ強ほどの細長い)北島と中島は細長い砂州でつながっており、数百メートル離れて南島があります。古く中世の時代には修道士達の瞑想の場所として修道院が建てられ、1588年にスペイン無敵艦隊を破った有名なイギリスの海賊キャプテン・ドレイクが拠点としたこともあるこの島々は、以後スペイン沿岸警備隊や漁民達が住んだこともありましたが、1970年以来定住者のいない無人島となり、国立自然公園に指定されました。現在、観光客のためには夏の間だけ渡船が運行され、中島にはキャンプ場が開かれています。ただし自然保護区として島への立ち入り人数が厳しく制限されているので、キャンプに訪れる場合は登録が必要な上、私のように日帰りで訪れる人も、ビーゴ港の乗船場で行きの切符を買う際に帰りの船の時間を指定して申請しなければなりません。

その日は天気予報では一日中好天とのこと、せっかくの機会に人数制限に引っ掛かって足留めをくらっては大変と、ビーゴ港近くに宿をとったオスタルを出て船着き場へと足早に向かったのは早朝の8時(なぜ8時が早朝かって?それは夏時間のせいもあって実際まだ市街は朝霧がたちこめていて薄暗いのです)。さすがに始発の9時の船までには時間があるのでまだ切符売り場の窓口は閉まっており、その前に並んで待っている人たちも数名だけでした。

 この人数ならまだ並ばなくても大丈夫だとひと安心して船着き場のこぢんまりとした建物内のカフェで朝食。この船着き場は貨物船等の大型船が発着するビーゴのメインポートからは少し離れてはいるのですが、シエス諸島のほかリアス海岸の各地へ向かう連絡船が出ていて、観光客や地元の人たち、船乗りたちが決してこぎれいとはいえないカフェで思い思いに飲食しています。

 

 

 

 

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サンエステバン(中)島
海沿いのハイキングコース

 

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サンエステバン島
ここにもカモメ・・・

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サンエステバン島
そこにもカモメ・・・

 

 そうこうするうちにシエス行きの切符売り場窓口が開いたときには行列は30名ほどになっていました。各人の荷物から見るかぎり、キャンプ組と日帰り組は半々といったところでしょうか。窓口で切符を買う際に、帰りの船は午後2時発に指定しました。もっと遅くまで島ですごしたいところなのですが、その次の4時の船では私のあわただしい旅行スケジュールに追い付かなくなってしまいます。窓口には「ISLAS CIES」というカラーガイドブックが置いてあったので、それも購入しました。スペイン語の本文をゆっくり読んでいる暇はありませんが、島内の詳細な地図があってこれは役立ちそうです。

costaいよいよ出航。ビーゴの町を背に湾内を沖へと進む船はちょうど瀬戸内海の島々を結ぶ連絡船ほどの大きさで、デッキに立っていると時々手すりなどにつかまっていなくてはならない程度に波に揺られます。後方のビーゴの町の霧はすでにすっかり晴れていましたが、前方のシエス3島は近付くにつれ、まだ朝靄に包まれて神秘的なたたずまいで海上に浮かんでいるのが視野に入ってきます。

 30分ほどの航行の後、島に到着。船着き場は北島のビーゴ湾に面した最南端で、中島とつながっている砂州の北端にあります。船から降り立つと左側は真っ白な砂が広がる砂州の1キロはあるかという広大なビーチ、正面すぐ先にはインフォメーションセンターや救急センター、案内版等があり、その先は森の中へと続くハイキングコースの入り口になっています。私がここへ来た最大の目的地である公認Naturistビーチ、フィゲイラス・ビーチはここから北方すぐ400メートルばかりのところにあるはずなのですが、まだ朝のうちは服を脱ぐには涼し過ぎるので先に自然の中でのハイキングを楽しもうと、中島最南端の岬をめざして南方へ向かって、ハイキングコースを辿っていくことにしました。

 北島から中島へと結ぶ砂州の西側、大西洋側はおだやかな東側とは対照的に岩場に荒波が打ちつけています。ここを抜けると中島に入り、池のほとりのキャンプ場が見えてきました。諸島内でただ1ヶ所だけのこのキャンプ場は木立越しにぎっしりと張られたテントが見えますが、まだほとんどのキャンパーが寝静まっているようです。いいかげん起きだしてさわやかな朝の空気を満喫してもいい時間なのに、よほど昨夜の星空がきれいだったのでしょうか。

 やがてハイキング道は海沿いの崖の上に出て、左手に濃紺の海を見下ろしながら南方へと進みます。右手はすぐ急峻な山、時たま藪の中に石造りの小屋があったり岸壁に漁師が小舟を停泊させているのが見える他は、人に出会うこともなくかわりにひたすらたくさんのカモメに出くわします。鳥の種類には詳しくないので同じカモメでも2、3種いることくらいしか観察できないのですが、道の左右やまん中でのんびりとたたずんでいた彼等は私が近付くのに気づくとあわてて逃げようとして、蹴つまずいたり助走不足で離陸に失敗したり、クヮークヮー言いながらの愛嬌ある大騒ぎ。先ほどから人工物にはほとんど出会わないのですが、静寂の世界とは程遠く、カモメの鳴き声と波の音でにぎやかです。

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サンエステバン島
サンマルティン(南)島を望む

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ロダス・ビーチ
砂州のビーチの最南端

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ロダス・ビーチ
中島と南島をつなぐ「一般」ビーチ

 

 

 中島の最南端には小さな無人の灯台があり、そこから眼下には渦巻く波、眼前には狭い海峡をへだてて薄靄のかかった南島が神秘的なその姿をうかべています。靄を透かして差す陽光に黒い岩肌と緑の木々が光り、白い波と岩肌の間に小さな砂浜が見えます。この南島は英語ガイドブックには「自然保護区のため立入り禁止」と書いてある一方、スペインのいくつかのウェブサイトでは「Naturistビーチあり」となっていて、行けることなら行ってみたいと思っていたのですが、現地情報では船をチャーターしない限り渡航不可能だということでした。

帰りの船の時間が決まっているのでここであまりゆっくりもしていられません。今来た道をまた引き返し、北島のフィゲイラス・ビーチを目指すことにしました。来るときには人には全く出会わなかったので帰りは裸になって歩いてみようか、などと考えていたら、ぽつぽつと数組のハイカーに出会い始めたのであきらめました。砂州のビーチに至るまでに小さな美しいビーチが一つありますが、まだ午前中のせいか無人です。北島と結ぶ砂州のビーチの南端まで到達するとちらほらと人陰が見えてきました。裸で寝そべっている男性も一人います。スペイン・ナチュリスム連盟ホームページの情報によると諸島内では公認のフィゲイラス・ビーチ以外でも時々裸でいる人々が見られるということだったのですが、実際キャンプ場のすぐ脇のビーチでさえ午前中にも裸の人がいるということは、この島ではNaturismがかなり当然のこととなっているように思われます。

 砂州のビーチの中心部、船着き場から見えるあたりにはかなり人が出てきていましたが、このあたりはやはり一般のビーチといった感じで年輩の人や子供が多く、裸の人は見当たりません。やがて出発地点のインフォメーションセンター前まで戻るとハイキングコースは海に突き出た小さな岩場の岬を迂回して林の中に入っていきます。そのまま進むと5分とたたないうちに右手に砂浜が見えてきました。裸で寝ている人や歩いている人たちが目にはいってきます。フィゲイラス・ビーチです。長さ400メートルほどの純白のビーチは背後は森に取り囲まれ人工物は一切無く、今日これまでに見てきた中でも一番心が休まるような、すばらしい風景です。さっそく砂浜へ降りて持参のゴザを敷いて(もちろん服を脱ぎ)寝そべりました。ここの砂は私の経験でもどこにもないような真白さです。目にしみ入るほどの少し青みがかった白さなのですがさほどまぶしくないのはなぜなのでしょうか。砂を間近によく見ると細かい白い粒に混じって真っ黒な粒々があり、それが全体として日光の反射を適度に緩和してくれているのかもしれません。
 

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フィゲイラス・ビーチ

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フィゲイラス・ビーチ

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フィゲイラス・ビーチ

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フィゲイラス・ビーチ

船着き場から歩いてすぐの所にあってこんなに静かで美しいビーチが公認Naturistビーチだなんて、信じられない思いです。もし私が全くNaturistでなかったとしてもこの島を訪れたらこのビーチを選んでいることでしょう。やはり多くの人も同じことを考えるようで、午後になると少しずつ人が増えてきたのですが、どうやらその約半数はここをNaturistビーチだとは知らずに近くて美しいビーチを求めてたどり着いた人たちのようなのです。ですからだんだんと砂浜は裸と水着の人たちの混成状態となってきました。そして水着の人たちを見ていると面白いことが発見できます。裸の人たちに混じって平然としている人たちもいれば、ちょっとびっくりして引いている人もいます。グループでやって来た人たちの中で、一人、二人と水着を脱ぎ始める人もいれば、最後まで脱がなかった人もいます。脱いだ人たちはきっと当初はそのつもりはなかったのに、周りの裸でいる人たちの気持ちよさそうな様子を見て、意を決してかつられてか「脱いでみよう」という気持ちになったのでしょう。もしかすると彼らの人生を変える(ちょっと大げさ?)Naturism初体験の瞬間だったのかもしれません。

 帰りの船の出発時間が刻々と迫って来ました。短い貴重な時間の間にもちろん泳いでみましたが、ここガリシア地方の水温は真夏にもかかわらず私にとっては少し低すぎるようで、快適に泳ぐというまでにはいたりませんでした。ここのビーチは大西洋側ではなくビーゴ湾に面しているせいか水は少し緑色に濁っていて透明度は高くありません。海から上がって波打ち際をビーチの北端まで歩いてみると、その先にはもう一つ小さな入り江があり、そこには10名ほどが見えましたが、全員裸でした。本当はさらにハイキング道をたどって島の北方のビーチも探索してみたかったのですが時間の制約があるので断念せざるをえません。

 ここに来ているのは圧倒的にスペイン国内各地の人々のようです。私が少し話す機会のあった壮年男性はマドリードから来ていました。私以外に明らかに外国人だと分かったのはイタリア語を話しているグループひと組ぐらいでした。

後ろ髪を引かれながら服を着て、船着き場に戻ってみると桟橋が人であふれかえっているのに驚きました。船の到着を待って2、300人ほどの列ができています。まだ早い時間なので帰る人は少ないだろうと思っていたら、キャンプをした人たちの多くがこの時間の船を利用するようです。約20分遅れでやって来た船は朝9時の船と違って乗客で満載です。行列の中で乗船を待つ間はひたすら隣接する砂州のビーチを眺めているしかなかったのですが、こちらの「水着ビーチ」はフィゲイラス・ビーチの2倍ほどの人口密度、女性の半数ほどは水着はボトムだけです。私には、つい先ほどまでNaturistビーチにいただけに、こちらのビーチの女性達は概して周りの視線を意識したように振る舞っているのがはっきりと感じ取れます。裸の人たちの自然さとは好対照です。

(01年夏 訪)

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帰りの船から見たモンテアグード(北)島

 

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ビーゴ
城山公園

 

シエス諸島へのアクセス

上記本文参照。

 

周辺の見どころ

ビーゴ

人口30万人弱の、ガリシア地方ではア・コルーニャと並ぶ港町で中心都市。南のポルトガルからも近く交通の拠点でもありますが、リアス海岸各地へと向かう船着き場とその近くの旧市街地区を除くと観光ポイントはそれほど多くはありません。ただ町の規模といい港町特有のちょっと猥雑な雰囲気といい、ガリシア地方特有の湿気と相まってスペインにいながら日本の地方都市にいるような、日本人にとってはホッと一息つけるような親和感があります。360度の眺望がすばらしい城山公園に登って苔むした石垣や地元の人たちの憩う姿を見ているとスペインにいるような気がしなくなってきます(いいのか悪いのか?)。スペインに行ったけれど「スペインらしさ」に辟易したという人にはイチオシの町。それと牡蛎やムール貝、イワシ、タコなどの新鮮な魚介類料理もおすすめです。

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Viaje por las Playas Naturistas

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